私たちの宝である「海」を未来へ繋ぐプロジェクト。2024年6月から始まった音声コンテンツ『Know The Sea』の総集編として放送された特別番組の内容をダイジェストでお届けします。
水産業の現場から、アスリート、研究者まで、2025年に登場した延べ61回のゲストトークの中から、特に反響の大きかったエピソードを厳選しました。
東京湾は「世界一面白い海」:木村尚さんが語る再生への道
まず最初は、海洋環境専門家の木村尚さんです。テレビ番組でもおなじみの木村さんは、自身の拠点である東京湾を「日本で一番面白い海」と断言します。流域に3,000万人が暮らしながら、水深800メートルの深海と浅い干潟を併せ持つ東京湾は、世界的に見ても稀有な生物多様性の宝庫です。かつての豊かさを取り戻すため、木村さんは単に水を綺麗にするだけでなく、生き物が利用しやすい環境を作る「干潟や藻場の再生」の重要性を説きました。

・都会の里海 東京湾再生ものがたり(前半)
・都会の里海 東京湾再生ものがたり(後編)
知的好奇心がリスクを越える:生物ライター・平坂寛さんの「正しく恐れる」技術
一方で、海への興味を「知的好奇心」という独自の切り口で広めているのが、生き物ライターの平坂寛さんです。危険生物に自ら刺されるという衝撃的な活動の裏には、図鑑の言葉だけでは分からない「真実」を知りたいという情熱があります。平坂さんは、猛毒を持つオニダルマオコゼなどの危険性を身を挺して伝えることで、私たちが海を正しく恐れ、安全に楽しむためのリスク管理を啓発しています。

・食べて噛まれて刺されてみた! 海の激レアさん 平坂 寛(前編)
・深海魚を釣って食べることでわかる深海の世界 平坂 寛(後編)
伝説のダイバー、ジャック・マイヨールが残した呼吸
ライターの今井栄一さんは、映画『グラン・ブルー』のモデルとなったジャック・マイヨールとの旅を回想しました。ジャックが語った「イルカは人間にとって危険な存在でもある」という言葉には、安易な親しみを超えた野生への深い敬意が込められていました。

・忘れられない ジャック・マイヨールと過ごしたオーストラリアの旅
・ハワイの海と神話と音楽と
魚の性は「戦略」である:大久保範聡教授に聞く驚異の生態
また、魚の「性転換」を研究する大久保範聡教授は、カクレクマノミやクエなどが子孫を残すために驚くべきスピードで性と脳を変化させる生態を紹介しました。しかし、近年の温暖化ストレスによって魚の性別バランスが崩れているという報告は、海の変化が私たちの想像以上に深刻であることを物語っています。

・地球温暖化が進むと魚はオス化する? 魚の性転換研究の最前線
池ノ上真一教授が提唱する「灯台ナラティブ」の可能性
そして、長年にわたり建築学・土木学の視点から灯台を研究されている北海商科大学教授で 日本海洋文化総合研究所 代表理事の池ノ上真一さんにお話を伺いました。

池ノ上さんが提唱する「灯台ナラティブ」という概念、これを池ノ上さんは、灯台を単なる「航路標識」という建築物としてではなく、地域の記憶や海との関係の中で紡がれてきた「物語」として捉え直すことの重要性を強調しました。
その象徴的な事例として挙げられたのが、和歌山県の樫野埼灯台にまつわるエピソードです。1890年、トルコの軍艦エルトゥールル号が遭難した際、灯台の光を目指して辿り着いた乗組員を地元の人々が献身的に救護しました。この物語は100年の時を超え、イラン・イラク戦争の際にトルコ側が日本人を救援機で救い出すという形で結実しました。池ノ上さんは、灯台には「ジオ(地形)」「ローカル(地域)」「グローバル(世界)」という3つの視点がはまっており、それらが融合したナラティブこそが、国を越えた人と人の繋がりを支えているのだと語ります。
さらに池ノ上さんは、灯台を新たなツーリズムの拠点として再定義しようとしています。鳥取県の青谷長尾鼻灯台では、地元の高校生が灯台の歴史を漫画にし、さらには音楽フェスを開催するなど、真面目な教育の枠を超えた広がりを見せています。池ノ上さんは、「海と人との距離を縮め直すシンボルとして灯台がある」と述べ、ナラティブを通じて次世代へ海を手渡していく重要性を説きました。灯台を軸とした物語は、私たちが海という存在を自分自身のストーリーとして捉え直すための、確かな道標となっているのです。
未来へ引き継ぐアクション
改めて皆さんのお話を伺ってみると、自分の知っている海ってほんの一部だったんだな、ということを感じます。ゲストの皆さんそれぞれが、全く違うアプローチで海と向き合っていて、「こういう海との繋がり方もあるんだ」という発見や、新しい課題にショックを受けたり、研究の可能性にワクワクしたり。知れば知るほど、海への興味がどんどん広がっていくのがとても楽しい時間でした!
「自分なりに関わり続けることが大切」という木村尚さんの言葉は、今まさに私たちが向き合うべき課題です。人間関係でもそうですが、関わっていないと相手を思うことはできませんし、知らないと自分ごとに捉えるのは難しいものです。だからこそ、こうして「知ること」はとても大事だと思いますし、実際、今海で起こっていることは私たちの未来と繋がっています。
繋がりを知れば、きっと行動も少し変わるはず。海を知ることは、未来を変えることです。『Know The Sea』を通じて、日本の海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていけたらいいなと思います。
今回の特別番組でご紹介したエピソードはもちろん、2024年の開始から積み重ねてきた個性豊かなゲストたちの全インタビューは、現在ポッドキャストでアーカイブ配信されています。一度の放送では収まりきらなかった専門家たちの深い情熱や、海を愛する人々の生の声。記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひ改めてポッドキャストにアクセスし、これまでのアーカイブを聴いてみてください。そして、皆さんも自分だけの「海とのストーリー」を紡いでいってくださいね!






