村山司

私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

今回は、東海大学海洋学部海洋生物学科教授で、イルカ類における認知と言語理解を専門とする村山司さんにお話を伺いました。長年の研究を経て、ついにイルカが人の言葉を理解し、話し始める兆しを見せているという最前線とイルカという哺乳類が持つ驚くべき知性について語っていただきました。

映画「イルカの日」が灯した情熱

村山さんがイルカの認知と言語能力の研究を始めたきっかけは映画です。子どもの頃からもちろんイルカの存在は知っていたものの特別な存在ではありませんでした。しかし、研究者とイルカが会話をするという内容の映画「イルカの日」を観たことで強く興味を持ち、その好奇心が現在まで続いているのです。

イルカはクジラと同じ「鯨類」の仲間。鯨類全体では約90種類ほどいて、その中で口内に口歯が生えていて体が小さいものが習慣的にイルカと呼ばれ、数十種類ほどだそうです。

イルカが海にいる理由

イルカはいちど陸地に上がった哺乳類が、ふたたび海に暮らすようになった種。陸上にいる動物ではカバに近いとさられているそうです。海に戻った理由としては、恐竜が絶滅して地上には哺乳類が増加したので食料を求めて、あるいは生存競争に敗れて海へ帰ったところ、餌があって危険な敵もいないという環境が暮らしやすかったのではないかという説が有力だそうです。

そんなイルカは群れを作り、社会的な行動をとります。その際、音やボディーランゲージで仲間とコミュニケーションを図るだけでなく、好奇心や遊び心が非常に旺盛な点が、イワシやサンマなどの魚類には見られない、哺乳類ならではの特徴。

ベルーガとの40年:「ホケキョ」を真似る知性

村山さんは40年近く、イルカ類の認知と言語理解の解明に取り組んできました。

実験の舞台は水族館。イルカに物を識別させたり、選ばせたりする実験を重ねてきましたが、最近は「人の言葉を言わせる」挑戦に取り組んでいます。

特にベルーガ(シロイルカ)は「海のカナリア」と呼ばれるほど多種多様な音を出せるため、人の声のモノマネが非常に得意。トレーナーの言葉や、お客さんの歓声、さらにはくしゃみまで真似することがあるといいます。先生の名前も頑張って発音する様子が動画で公開されていますが、これはベルーガにとって一種の遊びだとか。

ただの真似から「会話」へ

モノマネから一歩進み、現在、村山さんは「言語を話せる」段階へと研究を進めています。 確信しているのは「言葉を真似させるだけならただの真似ですが、意味を教えれば、会話になっていく」ということ。ボールを見せると「ボール」と言うなど、意味を認識して言葉を話す段階に入っていて、今後は人が言葉を覚えるのと同じ教え方を使い、人と言葉で会話ができるようになることを目指しています。

イルカに「嫌われている」研究者の喜び

研究中の最も思い出深い出来事は「イルカが自分の名前を呼んでくれた時」。動物が人の名前を呼ぶことは通常ありえないため「今日はもうこれでいい!」と思うほど感動した瞬間だったそうです。

しかし、驚くべきことに、その感動を与えてくれたイルカは、実は村山さんを「嫌って」いると言います。

「トレーナーによると、水の中にいるイルカ同士が威嚇することはあっても、陸上の人間を威嚇するのは村山先生だけですってよく言われるんです」と苦笑します。原因は不明ですが「きっと餌もあげずトレーニングもせず、横で腕を組んでジーっと見ているだけだから、『面倒くさいことをする、いつもいる人間だなぁ』と思われているんじゃないかな」と分析。 それでも村山さんは「好き嫌いも人間の心の通じ方。嫌いなら嫌いでもいいよ、でも一緒にまた実験しようね、という心の通じ方もある」と、感情を持つイルカの人らしいところ、人につながる共通するところに改めて深い魅力を感じていると語ります。

イルカとの会話が実現する日

イルカとの会話が実現した時に村山さんがやりたいこと。「何したい?と聞いた時に『ボール』と言うか、『ご飯』と言うか、『ほっといて』と言うか、そういう会話ができればいい」と未来の夢を語ります。そして、その夢は必ず実現すると信じています。

最後に村山さんに今の海洋環境について尋ねてみると、返ってきた答えは懸念と不安と危機感。水族館で動物と触れ合うことで、こうした動物が海で暮らしていることを知ってもらい、海を大切にしようという意識に繋がってほしいと、特に子どもたちへのメッセージを伝えたいと話して下さいました。

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