水上陽誠

私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

前回に続き、JAXA地球観測研究センター主任研究開発員の水上陽誠さんにお話を伺いました。宇宙から海を見つめる地球観測衛星の専門家である水上さんの、研究者としての原点や、最新の衛星が拓く可能性について深掘りしていきます。

南の島への憧れが導いた「海の研究者」への道

水上さんは、幼い頃から南の島に強い憧れを抱いていたと言います。田んぼや川に囲まれた田舎で育ったこともあり、自然環境への関心は人一倍強かったそうです。

学生時代には、衛星画像を使って石垣島のサンゴがどのように見えるか、そしてその変化を解析する研究に没頭しました。その研究の一環として現地調査で石垣島の海に潜ったことが、水上さんの人生を決定づけました。

「もうそこから沖縄の海に魅了されています。やっぱり日本の沖縄の海が一番いいですね。人を惹きつける、魅力的な海です」。

潜って感じる沖縄の海の魅力について尋ねると、「なんといってもサンゴ礁ですね。カラフルなサンゴが太陽の光に当たってキラキラして、まさにそこはお花畑で。海の中にいると、自分も自然の一部なんだなと感じられるところが最高です」と語ります。

海に潜ると、空を飛んでいるかのような感覚になることもあり、日本の豊かな海の一員であることを実感できる瞬間は、何物にも代えがたい貴重な体験だと話してくれました。

観測エリア4倍へ:だいち4号が拓く新たな可能性

昨年7月に打ち上げられた「だいち4号」は、現在も現役で活躍している「だいち2号」の後継機です。

「だいち2号の観測エリアをさらに4倍に広げ、観測頻度も向上させました」と水上さんは説明します。

だいち2号、4号は、火山や地震などの地殻変動、洪水や土砂災害、森林の減少、氷の融解など、多岐にわたる観測に活用されることが期待されています。特に海においては、船舶の識別や海上風速の観測にも貢献できると言います。

「海上風速の観測ができるとなると、例えば台風の進路予測などにも使えるのではないかと期待されています」。台風が多い日本にとって、非常に重要なデータとなるでしょう。

水の循環を司る衛星「いぶきGW」

「だいち」の他にも、JAXAには様々な地球観測衛星があります。
今年6月に打ち上がったばかりの「GOSAT-GW」、愛称「いぶきGW」もその一つです。
この衛星は、水循環変動観測を行う「AMSR3」というセンサーを搭載しています。
「直径約2メートルのアンテナが1.5秒に1回転するスピードで、自然界から放射される微弱なマイクロ波を観測します」。

この観測によって、陸地の土壌水分量、積雪の深さ、海面水温、海上風速、海氷密接度など、水に関する様々な情報を取得できます。

さらに、雲を透過して観測できるため、日単位での海面水温や海氷の分布など、これまでの衛星では難しかった情報も提供できる点が強みです。

「しきさい」が見せる海のグラデーション

海面水温の観測データとして、水上さんが見せてくれたのは、JAXAの衛星「しきさい」が捉えた画像です。

「海面水温を分かりやすく色付けしています。赤い部分が温度が高く、青い部分が低いところです」。

4月に観測された画像には、東北地方の上の方が青く、静岡から和歌山にかけてが赤くなっている様子がはっきりと映し出されています。

「これを見ると、寒流や暖流の動きがよくわかります。潮目と呼ばれる寒流と暖流がぶつかる場所は良い漁場と言われていますので、漁業に役立てることもできます」。

衛星データが拓く「水産業」の未来

水上さんは、この衛星データが水産業に貢献できる可能性についても言及します。

「衛星画像からクロロフィルa濃度を確認することができます。これは植物プランクトンの指標になるものです」。

植物プランクトンが異常発生すると、赤潮が発生することがあります。赤潮は海苔の成長や養殖に必要な栄養に影響を与えるため、こうした海域の情報を定期的に提供することで、水産業に携わる人々の助けになると言います。

近年、旬の魚の季節がずれたり、漁獲エリアが変わったりといった話も聞かれますが、衛星データによって、海水温の上昇とそれがもたらす影響を把握できる可能性が高まっています。

ブルーカーボンと藻場:海への尽きない探求心

水上さんは、今後の研究について「やはりサンゴ礁です」と語ります。

「最近は『グリーンカーボン』と並んで『ブルーカーボン』という言葉が注目されています。特に、海草や海藻の藻場の分布を衛星画像で捉えたいと思っています」。

藻場が炭素循環にどう役立っているのかを明らかにすることで、海の保全に貢献したいと考えているようです。

最後に、水上さんは、未来を担う若い世代に熱いメッセージを送りました。

「宇宙から地球を観測することに興味を持ってくれる中学生、高校生、大学生。もし今聞いてくれていたら、一緒にこの分野に挑戦してみませんか?衛星画像を見るだけでなく、いろんな現地のデータと付き合わせることで、新たなことがわかるかもしれません。とても興味深い分野なので、ぜひ関心を持ってくれたら嬉しいです」。

海を愛する心と、飽くなき探求心が、宇宙という壮大な視点と結びつき、地球の未来を切り拓いていく。水上さんのお話からは、そんな大きな希望を感じることができました。

2回にわたり、ありがとうございました。

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