永井真美

私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

今回は、海を舞台に行われるマリンスポーツ「セーリング」に注目し、公益財団法人日本セーリング連盟環境委員会の永井真美さんにお話を伺いました。風の力で水上を進むセーリングは、自然と深く関わるスポーツだからこそ、海の環境問題に積極的に取り組んでいると言います。

「残したいのはきれいな海」:環境問題への危機感

日本セーリング連盟が環境問題に取り組むきっかけとなったのは、地球温暖化による深刻な影響でした。セーリング連盟は、ヨットやウィンドサーフィンといった、風の力だけで進むマリンスポーツを統括する団体です。だからこそ、自然の変化を肌で感じることが多いのだと永井さんは語ります。

「地球温暖化による異常気象や海面温度の上昇、そしてマイクロプラスチックや漂着ゴミの問題は、セーリングを行う私たちにとって、直接的な影響があります。自分たちが楽しませてもらっている海という自然環境を守るために、できるところからやっていこうと考えました」。

セーリングは風の力だけで進むため、風がないと全く動けなくなってしまいます。炎天下の海上で風をひたすら待つしかなく、熱中症のリスクも高まるなど、温暖化の影響をダイレクトに感じることが増えているそうです。

エコな取り組みで「見える化」

日本セーリング連盟は、「残したいのはきれいな海」というスローガンの下、様々な環境啓蒙活動を行っています。

使い捨てプラスチックの削減:使い捨てのペットボトルからマイボトルへの切り替えを奨励しています。さらに、ヨットが転覆した際にドリンクが海に流されないように、ボトルを手につなげておくホルダーを製作し配布するなど、セーリングならではのユニークな工夫も凝らしています。

ルールブックへの明記:海の環境保全を基本原則としてルールブックに明文化し、選手全員が当然守るべきものとして活動しています。レース中にゴミが出た場合、支援艇に渡すことができるルールを設けるなど、実践的な取り組みも行っています。

環境アプリの活用:マイボトルへの切り替えやエコバッグの利用でポイントが加算されるアプリを導入。CO2削減量がグラム単位で計算され、環境への貢献度を「見える化」することで、選手たちのモチベーションを高めています。

こうした取り組みは大会ごとにランキング形式で発表されることもあり、環境に配慮した行動が評価される仕組みになっています。

ヨットの帆がエコバッグに?サステナブルなワークショップ

セーリング連盟は、子どもたちにも海の大切さを伝えるための活動にも力を入れています。

その一つが、使えなくなったヨットの帆を再利用して、小さなバッグを作るワークショップです。

スタジオには、実際にそのエコバッグを持ってきていただきました。ブルーとレッドの鮮やかな帆の色がそのまま生かされ、とてもカラフルで可愛らしいバッグです。触ってみると、柔らかいものもあれば、パリッとした質感のものもあります。これは、クルーザーやディンギーなど、ヨットの種類によって帆の素材や大きさが様々だからだと言います。

ヨットの帆は、頻繁に破れたりするものではありませんが、破損してしまったり、経年劣化でパリッとした張りがなくなってしまったりすると、廃棄されます。その際、産業廃棄物になってしまうため、環境にも優しい方法で再利用する方法を考えました。

「なかなかヨットの帆に触れる機会はないと思います。実際に自分の手で世界に一つだけのバッグを作ることで、子どもたちにもセーリングや海に興味を持ってもらいたいんです」と永井さん。このエコバッグには、様々な海で風を受けてきた冒険の物語が詰まっており、それを持つことで、子供たち自身が新たな冒険の旅に出るような、そんなワクワク感が伝わってきます。

究極の「SDGsスポーツ」

セーリングは「究極のSDGsスポーツ」と言われています。

「基本的な動力源が風の力なので、石油やガソリンを使いません。また、競技場を設営する必要もなく、冷暖房もありません。まさに自然の中で、風の力だけで進む、サステナブルなスポーツです」。

永井さん自身も、セーリングを通して海の変化を感じることがあると言います。ゴミやペットボトルが浮かんでいるのを見かけることもありますが、一方で「10年前に比べると海は少しきれいになってきた」という声も聞かれるそうです。これは、人々の意識が変わりつつある兆候かもしれません。

日本セーリング連盟は今後も、サステナビリティを推進するリーダーとして、積極的に活動を続けていくと語ります。

「ドローンを使ってマークを設置するなど、運営面でもカーボンニュートラルに近づけるような工夫をしていきたい」。

海を守りながらセーリングを楽しむという精神は、私たちに海の美しさ、そしてその未来を守る大切さを教えてくれます。

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