石川竜子

私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

今回は、2024年能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県輪島市の海について、その変化を見つめていらっしゃるわじま海藻ラボの石川竜子さんにお話を伺いました。震災後、輪島に移住して海女さんたちと共に海の調査を続ける石川さんが語る、自然の驚異的な回復力と、未来に向けた希望とは。

海底隆起がもたらした衝撃的な光景

能登半島地震は、輪島の海に甚大な被害をもたらしました。石川さんによると、地震によって海岸線が最大で5メートル以上も隆起し、海底だった場所が陸地化するという、衝撃的な現象が起きたと言います。

「海底が隆起したことで、そこに住んでいた生き物がほぼ全滅してしまいました。サザエだけでも、数十万個が死んでしまったことが分かっています。」

隆起した海岸線に、岩にへばりついたまま干からびてしまったサザエやアワビが転がる光景は、自然の力の恐ろしさをまざまざと見せつけました。しかし、被害はそれだけではありませんでした。

泥の被害から奇跡の回復へ

地震直後、幸いにも陸地化を免れた海中では、比較的多くの生き物が健在であることが分かり、希望の光が見えました。

しかし、その後の梅雨や豪雨によって、地震で崩れた山の土砂が大量に海に流出し、海中が泥だらけになってしまう二次被害が発生しました。本来、岩に付着する海藻もそれができなくなり、サザエやアワビも泥に覆われて窒息する被害が多発したのです。

ところが、冬の日本海の荒波が、再び海に変化をもたらしました。

「日本海は冬場に激しく荒れることで知られていますが、その荒波が海底の泥をかき混ぜ、海へと流してくれたんです。」

春になると岩の表面がきれいになり、そこにワカメの新芽が次々と芽を出しました。漁師さんによると、今年のワカメの生育量は震災前よりも多かったといい、大漁となったそうです。この奇跡的な回復力は、海女さんたちを勇気づける嬉しいニュースとなりました。

再開された海女漁と「海の幸」

夏の訪れとともに、輪島の伝統である海女漁が例年通り再開されました。

収穫されたのは、コリコリとした歯ごたえが特徴の「イシモズク」。沖縄のもずくとは一味違う、独特の食感が楽しめます。石川さんのおすすめの食べ方は、酢の物はもちろん、つゆものやお味噌汁、お蕎麦やうどんと一緒に食べるのも美味しいそうです。 また、サザエ漁も7月から始まり、海女さんたちの活躍の場が少しずつ戻ってきています。

ハツラツとした海女さんたちに勇気づけられて

石川さんは震災前から13年にわたり、海藻研究のために能登に通い、海女さんたちと深い交流を続けてきました。

「朝に漁をして、その日のうちに家事や炊事をこなし、夜は居酒屋などで働く方もいらっしゃいます。いつ寝ているんだろうと思うほど、みなさん本当にエネルギッシュで、私の方がいつも勇気づけられています。」

輪島の海女文化には、幼い頃からの訓練で培われた驚異的な底力が息づいています。水深10メートル以上潜れる海女さんは「大海女(おおあま)」と呼ばれ、石川さんがスキューバダイビングで潜っていると、水深17メートルまでついてきた方もいたそうです。

海女さん自身が水中カメラを持ち、海の中の映像を撮影して記録する活動も行っています。石川さんによると、彼女たちが素潜りで撮影した映像は、まるでスキューバダイビングをした人間が撮ったかのような、驚くほど美しいものだと言います。この貴重な映像や日々の活動の様子は輪島の海女漁保存振興会公式Instagramで公開されており、誰でも輪島の海の今をリアルタイムで見ることができます。

未来へつなぐ、海と人々の暮らし

石川さんは今後、海女さんたちの生業を守るための新たな取り組みを考えています。

「しばらくは海の収益がこれまで通りにならないことが予測されます。そこで、陸上でもできる仕事を作っていきたい。具体的には、海藻の苗作りや、海女さんならではの加工品作りなどを、海女さんたちと協力して進めていきたいと考えています。」

また、輪島の海女文化を後世に残すための記録活動にも力を入れています。

「輪島の海女文化に関する資料はありますが、一般の方が見られる施設が少ないのが現状です。いつか観光客の方々が戻ってきたときに、海女さんと交流できるような施設もあるといいなと考えています。」

輪島へ行こう:海からのメッセージ

「震災から1年半が経ちましたが、まだまだ復興の道半ばです。ぜひ一度、輪島に足を運んで、今の町の状況を『見て、感じて』ほしい。」

現在、宿泊施設は限られていますが、都心からのと里山空港までは1時間。金沢からでも2時間ほどでアクセスできます。また、手前の七尾や志賀には宿泊施設も多く残っており、そこから日帰り訪れることも可能です。

「海女さんたちも、町の人々も、観光客の方々がいらっしゃるのを心待ちにしています。輪島の賑やかさをもう一度取り戻すために、ぜひおいでください。」

このコーナーはAuDeeでも配信中です。ぜひアクセスしてみてください!

アーカイブ

  • 「Know The Sea Special〜海と私のストーリー~」

    これまでの『know the sea』の歩みを振り返る特別番組

    「Know The Sea Special〜海と私のストーリー~」

    Special Program

  • 井植美奈子

    海の環境をおいしく守る「ブルーシーフードガイド」

    井植美奈子

    一般社団法人 セイラーズフォーザシー日本支局 理事長兼CEO

  • 畠山信

    「森づくりは、人づくり」かき漁師・畠山重篤さんの遺志を受け継ぎ未来へ

    畠山信

    牡蠣漁師、森は海の恋人 理事長

  • リサ・ステッグマイヤー

    ハワイの海が教えてくれること~オープン・ウォーターに魅せられて

    リサ・ステッグマイヤー

    タレント

  • 中村英孝

    日本初!「さかな」の専門学校で学ぶ若者たちの未来

    中村英孝

    日本さかな専門学校 学務課長

  • 村山司

    イルカの言語能力を探る旅

    村山司

    東海大学 海洋学部 海洋生物学科 教授