私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回は、海を宇宙から見つめている地球観測衛星について、JAXA地球観測研究センター主任研究開発員の水上陽誠さんにお話を伺いました。
「だいち」の目が捉える地球の姿:海を観測する衛星の役割
水上さんが担当されているのは、地球を周回して宇宙から地球を観測する人工衛星、地球観測衛星です。その中でも、日本の陸域観測技術衛星「だいち」の2号と4号を扱うチームに所属しています。
「だいち2号と4号は、SAR(合成開口レーダー)という技術で電波を照射し、跳ね返りを捉えることで地球の表面の凹凸や起伏を画像として提供する衛星です」と水上さんは説明します。
しかし、海の中を観測するには、身近なもので例えるならばスマートフォンのカメラのような「光学センサー」が必要だと言います。この光学センサーを使えば、透明度にもよりますが、水深約25メートルまでの海底の状態を捉えることができるそうです。
水上さん自身は、この光学センサーを搭載していた「だいち」(2006年〜2011年)のデータを使って、日本や世界の沿岸域のサンゴ礁や藻場のモニタリング研究に取り組んでいます。

スタジオには、「だいち4号」の50分の1スケールの模型も登場しました。金色に輝くボディは「サーマルブランケット」と呼ばれる断熱材で覆われており、過酷な宇宙空間から衛星を守る役割を担っています。
この模型は、羽根を広げた状態ですが、実際の打ち上げ時には太陽電池パドルや合成開口レーダーをコンパクトに折りたたみ、ロケットに搭載されるとのこと。宇宙空間に到達後、ゆっくりと花開くように広がる姿は、さながら宇宙に咲く一輪の花のようです。
「一つ一つ『よし!よし!』って声が出てしまいます。うまくいったときは拍手が沸き起こりますね。」と、衛星への愛情を語る水上さん。

宇宙からの推し画像:色が語る海の豊かさと変化
地球観測衛星のデータは、私たちに多くのことを教えてくれます。水上さんが「推し画像」と語る、だいちが2009年に撮影した沖縄県の八重山諸島の画像は、その美しさと情報量の多さに目を奪われます。

石垣島と西表島の間に広がる石西礁湖の濃淡から、どこが深くてどこが浅いかが一目でわかります。
また、沖縄島北西部の備瀬崎の画像を異なる観測日で比較すると、サンゴ礁の陸側にある藻のようなものの分布が変化している様子が確認できます。
「地球観測衛星の強みは、広範囲を継続的に、定期的に同じ場所を繰り返し観測できることです。だからこそ、こうした微妙な違いが見えてくるんです」。
目に見える変化:衛星が捉えたサンゴ礁の白化と海洋汚染
衛星は、海の環境変化も克明に捉えています。
「海水温が高い状態が一定期間続くと、サンゴと共生している褐虫藻がサンゴから飛び出して、サンゴが白くなってしまう白化現象が起きます」。
水上さんが見せてくれたのは、2022年の夏に八重山諸島で発生した白化現象を捉えた画像です。7月と8月の画像を比較すると、わずか1ヶ月でサンゴ礁の縁が白っぽくなっているのがわかります。

さらに、JAXAの衛星「しきさい」のデータと組み合わせることで、この期間に海面水温が上昇していたことがわかり、白化現象の原因を科学的に説明することに役立ちます。

また、衛星は海洋汚染の監視にも活用されています。
2022年1月、南米ペルーで発生した原油流出事故では、だいち2号の観測により、原油が海面に浮遊している状態が確認されました。
「画像の中で黒っぽく映っているところが流出した原油だと思われる部分です。波の様子との違いから、どこまで原油が流れ出しているかがわかります」。 このようなデータは、汚染の範囲を特定し、対策を講じる上で不可欠な情報となります。

また、海洋汚染と少し異なるものの、海の変化を捉えた興味深い画像も見せていただきました。 2021年8月、南太平洋の福徳岡ノ場という海底火山の噴火で、大量の軽石が発生しました。しきさいが捉えた画像には、白い蛇のように連なる軽石が沖縄に向かって漂流していく様子がはっきりと映し出されています。

30年続くEORCの挑戦:陸・海・空から見守る地球の未来
水上さんが所属する地球観測研究センター(EORC)は、今年で設立30年を迎えます。この30年間でEORCは、陸・海・空にわたる膨大な地球観測データを収集し、私たちの生活に不可欠な情報を提供してきました。
気象予報や災害監視、気候変動の研究など、その活用分野は多岐にわたります。
「地球環境を宇宙から見ていると、状態の変化に気づき、その変わり様に心を痛める時もあります」と、地球を見守る仕事の責任を改めて感じているようでした。
30年間続けてきたデータがあるからこそ、過去との比較が可能となり、地球で今何が起きているのかを正確に把握することができます。
「地球観測衛星で見ているのは地球の表面の部分なので、水の中を泳いでいる魚まではわかりません。画像の解像度をどこまで細かくできるかという点も重要になってきます。もし、大きなクジラが海面で大きく背中を見せてくれた瞬間にタイミングよく観測できていれば映るかもしれませんね!」と、衛星観測のロマンについても語ってくれました。
水上さんのお話から、地球観測衛星が私たちの生活や地球の未来に深く関わっていることが改めてわかりました。 水上さんには、次回も引き続きご出演いただきます。今回のゲストはJAXA地球観測研究センター主任研究開発員の水上陽誠さんでした。ありがとうございました。

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