私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回は、2021年に静岡県で「Marine Sweeper」を設立した土井佑太さんにリモートでお話を伺いました。「海の掃除人」を意味する社名通り、釣りによって発生する海中のゴミを清掃し、そのゴミを新たな釣り具へと生まれ変わらせるユニークな活動に取り組んでいます。
海を覆い尽くす「クモの巣」:釣りゴミの恐るべき現状
Marine Sweeperのウェブサイトには、海中に放置された釣り具の驚くべき映像が公開されています。まるでクモの巣のように岩に絡みつく釣り糸の群れ。これは「根掛かり」などで釣り具が失われることが繰り返され、ゴミが蓄積した結果です。
「最初は岩に引っかかるんですが、そのうちその釣り糸がどんどん増えて、最終的には糸の塊にまた釣り具が引っかかる。そうして岩の形もわからないほど糸だらけの海になってしまうんです」と土井さんは語ります。 年間で回収する釣りのゴミは、重さにして約300kg。ルアーだけでも1万個にのぼるといいます。これらのゴミは、静岡県を中心に全国各地の海に潜って清掃しているそうです。釣り具だけでなく、タイヤや自転車など、様々なゴミを回収する活動も行っています。
捨てられたルアーが「新たなルアー」へ:サステナブルなビジネスモデル
Marine Sweeperは、回収したルアーをリサイクルして再販売し、その収益を活動資金にしています。
「拾ってきたルアーは、フジツボなどの付着物を洗浄し、塗装を一度剥がします。その後、もう一度きれいに塗装し直して、新品同様にしてから販売しています」。中には再塗装が難しいものもあり、その場合は溶かして型に入れ、新しいルアーとして再生させる取り組みも行っています。
このビジネスモデルを構築する上で、土井さんが最も大切にしているのは「持続可能性」です。
「ゴミ拾いはボランティアとして無償で行われることが多いですが、それでは続けるのが難しい。この活動が当たり前になるには、多くの人が協力できたり、自主的に活動を始められたりするような仕組み作りが必要です」。
この活動は、釣り人にも新たな気づきを与えています。
「知っているルアーなのに見たことのない色だと面白がってくれたり、実際に使って魚が釣れたとSNSに投稿してくれたりする人もいます。釣り人の新しい気づきにつながっているかなと思います」。
「もやもや」から始まった海の清掃活動
土井さんは静岡県富士市出身で幼い頃から海に親しみ、釣りをして育ちました。ダイビングを始めたのは、静岡大学に入学してから。
「ダイビングを始めたきっかけは、海の生物を見たいという純粋な気持ちでした。でも、同時に海の中にゴミがたくさん落ちているのを見て、もやもやしました」。
その“もやもや”を解決するために一度は就職した会社を辞めてMarine Sweeperを立ち上げました。 現在はダイビングガイドをする中でゴミの多いエリアに潜るマリンスイーパーの体験も実施しています。実際にゴミを見た参加者からは「想像していた以上にゴミがあった」という感想が多いそうです。この「ショック」が、その後の行動へとつながることを土井さんは期待しています。
広がる「仲間」の輪:地域連携と今後の展望
Marine Sweeperの活動は、全国のNPOとも連携しながら広がっています。
「その地域の文化や思いを教えてもらいながら、一緒に活動させてもらうので、非常に楽しいです。心清らかになりますね」とのこと。
土井さんは、今後の課題は「人の育成」だと語ります。
「自分一人で日本全国の海を守ることは不可能です。Marine Sweeperの活動ができる人を増やしていくため、これまで以上に支援をしていきたいと思っています」。
最後に、海を楽しむすべての人に向けてメッセージを送って下さいました。
「海の中のゴミを拾うには特殊なスキルが必要ですが、ビーチや市街地にもゴミは落ちています。見かけたゴミを余裕がある時に拾うだけでも、自分たちの遊び場を守る第一歩になります。そんな志を持ってほしいです」。
海の清掃のプロフェッショナルとして、新しい価値観とビジネスモデルを築き上げている土井さん。その活動は、海を愛する人々の心に深く響き、海の未来を変える大きな力となるでしょう。

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