沖縄美ら海水族館 館長

佐藤圭一

私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

今回は、日本の水族館で最も多くの来館者を誇る沖縄美ら海水族館の館長、佐藤圭一さんにリモートでお話を伺いました。館長、そして世界的なサメの研究者でもある佐藤さんが、世界最大の魚類ジンベエザメの飼育秘話から、海洋研究の最前線、そして子どもたちへの海の教育に対する熱い想いを語ります。

ジンベエザメ「ジンタ」、沖縄美ら海水族館に30年!世界記録を更新中

沖縄美ら海水族館といえば、やはり雄大なジンベエザメが有名です。今年、ジンベエザメの「ジンタ」が水族館に来て30年という記念すべき年を迎えました。

「ジンタは1995年に沖縄近海でたまたま網にかかってしまったものを水族館に運びました。当時まだ4.6メートルと小さかったのですが、現在は8.8メートル、体重6トンにまで成長し、これはもちろん世界記録です」

ジンベエザメの飼育は、当初から困難を極めたと言います。

「誰もジンベエザメを飼育したことがなかったので、とても苦労しました。私たちは水族館で子孫を残してもらおうと、いわゆる繁殖を目標に、その過程を今もずっと研究しているところです」

生で見るジンベエザメは、まるで飛行船が頭上をふわふわと飛んでいくような壮大さと、その大きさに圧倒されます。魚類の中で最大となるジンベエザメを30年間飼育し続ける中で、多くの新たな発見があったと佐藤館長は語ります。

「ジンベエザメの生態は、ほとんど解明されていませんでした。何歳で大人になるのかも不明だったのですが、この水族館で飼育している過程で、それが明らかになったんです」

推定ではありますが、ジンタは25歳から30歳の間で成熟したことが確認されたそうです。

「大人の個体がどういう行動をするのかも全く分かっていなかったのですが、飼育下での観察を通してある程度分かってきて、実際に海外の海で飼育している個体と共通した行動が目撃されるなど、新しい発見が得られています」

これらの貴重なデータは、沖縄美ら海水族館だけでなく、世界中の研究者と共有されています。

世界的サメ研究者が語るジンベエザメの魅力と意外な行動

佐藤館長は世界的なサメの研究者でもあります。ジンタの飼育・研究過程で印象に残っているエピソードを尋ねると、意外な答えが返ってきました。

「大人のジンベエザメは誰も飼育したことがなく、じっくり見たこともありませんでした。水槽で大人になった後、私たちが予期していなかった変化がたくさん起こったんです」

例えば、ある季節になると急に餌を食べなくなったり、他のサメに噛みついたり、水槽内の構造物に噛みついて体をくねらせたり、ひっくり返ったりするなど、気性が荒くなるような行動が見られたと言います。

「人間も若い男の子が反抗期で暴れたりするような状態なのかな、と思っています。実はサメは人間の遥か遠い祖先に近い生き物なので、そういうところも共通しているのかもしれませんね」

五感で感じる海の神秘:子どもたちの好奇心から生まれる発見

沖縄美ら海水族館には魅力的な生き物展示が多くありますが、海の環境問題を自由研究にしたい子どもたちへのおすすめはありますか?

「沖縄美ら海水族館という場所を考えると、まずは皆さん、海の生き物に対して不思議に思ってもらうことが大事だと思います。例えば、なぜこんなに多様な模様や形、色の魚がたくさんいるのか。実はそこに不思議な規則性や共通性があり、それを考えていくと、生物がどうやって生き残っていくか、どう進化してきたかという、“誰も答えられない『謎』”が隠されている。そうしたロマンを感じる研究は面白いと思います」

沖縄の海に生息するトロピカルな色のお魚たち。水族館の中には、水槽を真上から見ることができるエリアもあり、横から見るのとは全く異なる印象を受けると言います。

「上から見ると、横から見た時の華やかさがなかったり、意外と色がないとか、見えにくい。それも魚なりの進化や、生きていく術が分かるんです」

館長をはじめ、沖縄美ら海水族館のスタッフは、子どもたちから魚に関する多くの質問を受けるそうです。印象に残っている質問について尋ねると、佐藤館長は「ジンベエザメはなんでこんなに大きいんですか?」や「ジンベエザメは何年生きるんですか?」といった素朴な疑問が一番答えられないと語ります。

「『何年生きるか』はまだ分かっていませんし、おそらく永久に明確な答えはないと思います。例えば人間も何歳まで生きるかと聞かれたら、なかなか難しいですよね。ジンベエザメの場合も、普通どのくらい生きるかさえ分からない。そのくらい分からない動物なんです」

しかし、そうした子どもたちの純粋な好奇心が、新たな研究のきっかけとなることもあると言います。

「『なんでサンゴは夜にしか産卵しないんですか?』という質問を受けた時、我々のスタッフが、じゃあ昼に産卵させてみようと、昼夜を逆転させてみたら、実際に昼に産卵するようになった例もあるんです」

こうした人々の触れ合いが、新しい発見につながる可能性を秘めていると佐藤館長は語ります。

沖縄美ら海水族館をさらに楽しむ:ナイトアクアリウムとクジラウォッチング

沖縄美ら海水族館は那覇から車で2時間ほどの沖縄県本部町に位置します。水族館以外にも、沖縄の海や自然を感じられる施設やイベントはあるのでしょうか。

「8月の夏休み期間中は、水族館の開館時間を延長してナイトアクアリウムを開催します。普段昼間とは違った生き物の姿を見てもらうために、照明を暗くしたり、暗い空間でしか演出できない光る生き物のプロジェクションマッピングなどもあります」

昼間とは違ったワクワク感を味わえるナイトアクアリウムは、夏の思い出にぴったりでしょう。 また、イルカのオキちゃんの飼育50周年パネル展や、沖縄国際海洋博覧会の50周年企画展も開催されています。水族館の歩みや歴史を知ることもできる貴重な機会です。

水族館周辺も魅力にあふれています。イルカショーが行われる「オキちゃん劇場」からは美しい湾や島々が一望でき、冬にはさらに特別な体験ができます。

「水族館の目の前の海には、12月から3月にかけて、ザトウクジラが子育てにやってくるんです。水族館の目の前で、クジラがブリーチングする姿を見ることもできますよ」

季節を問わず楽しめる沖縄美ら海水族館。ぜひ一度訪れて、海の神秘と生命のロマンに触れてみてはいかがでしょうか。

佐藤館長には、次回も引き続き登場いただき、専門であるサメと環境問題についてお話を伺う予定です。

このコーナーはAuDeeでも配信中です。ぜひアクセスしてみてください!

アーカイブ

  • 井植美奈子

    海の環境をおいしく守る「ブルーシーフードガイド」

    井植美奈子

    一般社団法人 セイラーズフォーザシー日本支局 理事長兼CEO

  • 畠山信

    「森づくりは、人づくり」かき漁師・畠山重篤さんの遺志を受け継ぎ未来へ

    畠山信

    牡蠣漁師、森は海の恋人 理事長

  • リサ・ステッグマイヤー

    ハワイの海が教えてくれること~オープン・ウォーターに魅せられて

    リサ・ステッグマイヤー

    タレント

  • 中村英孝

    日本初!「さかな」の専門学校で学ぶ若者たちの未来

    中村英孝

    日本さかな専門学校 学務課長

  • 村山司

    イルカの言語能力を探る旅

    村山司

    東海大学 海洋学部 海洋生物学科 教授

  • 矢澤良輔

    日本の漁業を変える可能性を秘めた“代理親魚技法”

    矢澤良輔

    東京海洋大学 教授