私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回は、唯一無二のサウンドで人々を魅了し続けるDef TechのMicroさんが、海との深いつながり、そして海への深い思いを語ってくれました。
海が人生の全てだった幼少期
「幼稚園ぐらいからかな、ずっと波乗りしてますね」と語るMicroさん。お父様がサーファーで、東京・蒲田でサーフショップを経営されていたため、幼い頃からハワイで波乗りを経験してきました。
「結構無理やりですけどね。スパルタだったので。プロサーファーになってほしかったんでしょうが、僕は音楽家にドロップアウトしてこっちに来ちゃったんですけど」と笑いますが、その幼少期から常に海が身近にある環境だったと言います。
「旅行も山とかに連れてってもらったことはないですね。バリ、グアム、ハワイ、カリフォルニア。海がないところに連れてってもらったことはないんですよね」。まさに「海と共に生きる」人生の始まりを物語るエピソードです。
「体が喜ぶスポーツ」としてのサーフィン
Microさんにとってサーフィンは「こんな気持ちのいいスポーツはないんじゃないですかね。体が喜ぶスポーツだし、みんな帰りの車の中で本当に楽しく幸せそうになる。疲れて帰るって感覚はないんですよね」。
お気に入りの海は、日本であれば「やっぱり伊豆の下田がとっても海が綺麗で、水が透明で、下田がいいな」。その透明度は「波待ちしてると足元に寄ってくる魚たちが見えますね。めちゃくちゃ綺麗」とその美しさを熱弁します。多忙な日々の中でも、「2、3日空いたら戻るようにしています」
海は「母親」:都会の喧騒から逃れ、今に集中する場所
まさに海と共に生きていると言っても過言ではないMicroさんにとって、改めて海とはどのような存在なのでしょうか。
「母親ぐらいですかね」。この一言に、Microさんの海への深い愛情と信頼が凝縮されています。
「やっぱり海のおかげで、都会の東京にいるとどうしてもギスギスしてきちゃうんだけど、でもそういう人との人間関係のいろんなことがある中で、海に走って。逃げじゃないんだけど、海に行った時に恋愛の悩みとか家庭の問題とか自分が抱えている問題を、サーフィンしようと思ったら悩みながらできないから、目の前のことに集中しなきゃいけない。だからとにかく波に集中する、今に集中するっていうことをできるのはやっぱり海のおかげじゃないかな」。 頭を真っ白にし、目の前の波にどう乗るかということに集中する。それが、都会の喧騒や抱える悩みを忘れさせてくれる、海が持つ特別な力だとMicroさんは語ります。
目の当たりにした環境変化:龍宮城が消える悲しみと「ワンハンドビーチクリーン」
これほど海に深く関わってきたMicroさんは、その環境の変化も目の当たりにしてきたと言います。
「特に南の方に行くと、沖縄の海で10年前20年前に行ってた時と全然サンゴ礁が死滅してて、白くなっていく海を見てきたのはすごく悲しいですよね。ここにこんな綺麗なサンゴたちがいたのになっていうのがわかりますよね」自分が生きているわずか10年、20年という短い期間に、かつて「龍宮城だったのにな」と思うほどの変化が起きていることに、強い危機感を覚えている様子でした。
そんな中で、Microさん自身も様々なアクションを起こしています。
「本当にちっちゃなことから始めると、僕ワンハンドビーチクリーンと言って、海入ってサーフィンして上がったら片方の手はサーフボードを抱えているので、片方の手は空いているからその分だけゴミ拾いをして帰っていくというのを続けています」。
さらに、サンゴ礁の問題に対しては、具体的な活動も行っています。
「沖縄で毎年、Sea Seedというサンゴの養殖をしているチームがあって、そこと協力し合いながら自分でサンゴを植えて。小さい5センチくらいのサンゴなんですけど、それをドリルで埋めてあげると3ヶ月後ぐらいには20~30センチとかどんどん成長していくんですよね。そこに魚が住み始めたり、魚が生まれ始めたりするんですよ」。 この活動は、28歳の時、つまり約20年前から少しずつ続けているとのこと。Microさんが手がけたサンゴの森が、今や大きく育ち、海の生態系を育む一助となっていることに驚きと感動を覚えます。
海が育む音楽のインスピレーション:「4ELEMENTS」に息づく波の音
Def Techの楽曲には、海の風景が頻繁に登場します。ニューアルバム「4ELEMENTS」に収録されている「On the Shore」はもちろん、「Child in me」や「KANPAI」の歌詞からも、その影響は明らかです。
「そうだね。特に海じゃないところで海を感じたいしね。都内にいるから海を余計感じたいし、特にライブハウスとかクラブはインドアだから、でもそういうところにこそみんなの心の中に波の音だったり自然の音が流れるようなことは意識的に心がけてるかな」
Def Techの楽曲を聴く人が、たとえ都会にいても海を感じられるような、そんな「リトルマーメイドみたいな気持ち」になれることを願っていると言います。
都会と海のバランス、“シティ&ビーチ”*の考え方は、昨年Shenさんも語っていたこと。偶然の一致に、二人の間に通じる深い感覚が垣間見えます。「口裏合わせてないよ(笑)」というMicroさんの言葉からも、その自然なつながりが感じられます。
サーフィンや海を見ることで、音楽のインスピレーションも大きく刺激されるそうです。
「やっぱりテンポが変わる。本当に東京にいるとどんどんどんどんテンポが早くなっちゃう。心拍数も多分早いんだと思うんだけど、じゃあ沖縄に行く、海側に行くとやっぱり心臓の鼓動もゆっくりになるし、そこに合う音楽っていうのはもう少しレイドバックしたゆっくりな音楽だから」。
楽曲制作においても、例えば「On the Shore」は都会で作っても、海に戻ってそのテンポ感を確認するそうです。「『このぐらいがいいのかな、でもやっぱり海に着くとやっぱりちょっとテンポ早いよな』って行ったり来たりしながら曲のテンポとか決めてますね」。
ハワイの海ではさらにBPMが遅くなるといい、ロケーションを変えることで曲のテンポを決めるという独自の制作スタイルは、まさに海と共に生きるMicroさんならでは。Def Techの音楽は、単なるヘッドホンで聴く音楽ではなく、海の潮風や波の音と共に呼吸する音楽だと言えるでしょう。 今回のアルバム「4ELEMENTS」では、特にハワイの海を意識したと言います。「Shenもずっとハワイに帰ってて、そういうフィードバックをしながら。『そっちで聞いてどう?』とか確認しながら、もうちょっとテンポ早い方がいいかもとか、もう少しこれここ違うかもっていう確認はお互いしながら出来上がったかな」。Def Techの楽曲制作において、海での聴こえ方がいかに重要であるかが伝わってきます。
未来の海への願い:「すべてを海に返していきたい」
最後に、Microさんが未来の海に願うことを尋ねました。
「もうとにかく魚たちや生きとし生ける海の中の生物たちが溢れかえるような世界かな」。
現状のままでは、私たちの食卓から美味しい魚が消えてしまうのではないかと、強い危機感を抱いています。
「江戸前の寿司なんて本当に食べられなくなっちゃったし、フィレオフィッシュが食べられなくなっちゃう気がするし、白身魚がいなくなっちゃうっていうのは本当に目の前のことだしね」。
だからこそ、Microさんは「海に恩返ししていきたいな」と続けます。
「曲がヒットすることもそうだけど、じゃあそういうものは何に返していくべきかって言ったら、地球って言うと大きすぎるから、海に返していきたいな、やってることのすべてを」
自らの活動の全てを、かけがえのない海に捧げたいというMicroさんの強い決意と愛情が伝わってきました。
今回のゲストはDef TechのMicroさんでした。ありがとうございました!

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