私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
前回に引き続き、AIを使って実際の海の環境を水槽の中で再現し、海の環境問題解決のヒントを作り出しているベンチャー企業、株式会社イノカの取締役、松浦京佑さんをスタジオにお迎えしました。22歳という若さでイノカの教育事業を牽引する松浦さんが、その活動と夢について語ります。
22歳の取締役:ライフスタイルも仕事も「海」が軸
「僕は2002年生まれ、22歳です」と語る松浦さん。その落ち着いた佇まいからは想像できない若さに驚かされます。イノカには20歳の頃に入社し、19歳からインターンとして関わっていたそうです。
「自分が他の人よりも特別、生き物、特に海の生き物が好きなんだなって気づいたのは中学生ぐらいですね」
幼い頃から、海だけでなく川や魚など、生き物全般に親しんできたと言います。
現在も、休日にダイビングを楽しんだり、イノカのメンバーと海に出かけたりと、プライベートでも海が生活の中心。
「ダイビングサークルを作ったりもしているので、海でまだまだ全然遊んでいます」
休日に見た海の様子が、水槽での再現に生かされることもあるそうです。
「インターン生時代に、運転の練習という名目でみんなで海に行った時に捕まえたフグの仲間が、今でもオフィスにいるんです。黒豆くらいのサイズだったので『黒豆』って名前をつけたら、今ではすごい大きくなっちゃって。『黒豆どこ行ったんだろうね』って(笑)」
まさに、その生き物たちが、仕事のパートナーにもなっているのです。
五感で触れる環境教育:「サンゴ礁ラボ」が拓く学び
松浦さんが牽引するイノカの教育事業では、本物の生きたサンゴを見せられるという強みを生かしています。
「オフィスに子どもたちを呼んで『サンゴ礁ラボ』というコンテンツで、サンゴの面白さを教えたり、水槽を商業施設などに持っていって全国で展開することもあります」

この教育プログラムの最大の強みは、子どもたちが本物の生きたサンゴに触れることができる点です。
「サンゴの匂いを嗅いでもらったり、触ってもらったり、死んだサンゴと生きたサンゴの違いを比べてもらったりと、五感で触れ合ってもらう環境教育を提供しています」
実際にサンゴに触れ合った子どもたちの反応は様々です。
「サンゴって実は生臭いというか、海の強烈な香りがするんです。子どもたちは正直なので、『臭い!』という声が飛んできたり、『意外といける』という子もいたり。触ってみるとヌルヌルしていたりと、サンゴは意外性の塊だと思っています。子どもたちによって反応が全然違うのが面白いですね」
五感を刺激された記憶は、子どもたちの心に深く刻まれます。
「匂いとかはなかなか忘れないと思います。そこでの刺激が、また友達に伝わったり、海に興味を持つきっかけに繋がってくれたら嬉しいですね」

松浦さん自身も、幼い頃から深海展などに連れて行ってもらい、様々な生き物の面白さに触れてきたと言います。
「私は生き物好きになるには2つの要素が必要だと思っていて、一つは強烈な生き物、面白いというきっかけ。もう一つが、それを教えてくれる師匠。イノカの教育では、このきっかけを環境移送技術で子どもたちに与え、そこに師匠となる生き物好きとして自分たちがなれたら、と思っています」
松浦さんの師匠は、生き物が大好きな「おじいちゃん」だそうです。
「実家にはメダカやグッピーが何百匹もいて、この生き物はこうなんだ、と教えてくれていたからこそ、僕はすごい生き物好きになったという実感がありますね」
おじいちゃんの家にあった水槽が、形を変えて仕事につながっている。そんな素敵なつながりを感じさせます。
世界が注目するイノカの技術:生物多様性への貢献
イノカの技術は、国内だけでなく世界からも注目されています。現在取り組んでいるプロジェクトの一つが、海の生物多様性への貢献です。
「株式会社イノカは、海の生物多様性を非常に重要視しており、この生物多様性を国際的に推進している**TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)**にも参画させていただいています」
イノカはTNFDの中で「データカタリスト」として、どのようなデータが生物多様性の保全に役立つかを提言する役割を担っています。
「我々の水槽のデータシミュレーションというところを、これからの国際社会でどのように価値にしていくか、日々ディスカッションしています」
こうした国際的な連携が、海の環境問題解決に向けた大きな変化を生み出す可能性を秘めています。
松浦さんの夢:笑顔と「生き物好き」の価値向上
松浦さんの夢は、まず「世界中の笑顔を10%増やしたい」という壮大なものです。イノカの事業を通しては、特に「生き物好き」の可能性に注目しています。
「水槽を作ったりするのもAIやテクノロジーは使いますが、結局は生き物好きの人の力。世の中の生き物好きの人たちの価値を底上げしていきたいと思っています」
笑顔と生き物好きを掛け合わせ、教育を通じて生き物好きを増やし、その価値を高めていくことが、松浦さんの夢に近いと語ります。

その夢を実現するため、イノカはオフィスの水槽を一般公開する取り組みも行っています。
「文京区との連携事業で、文京区在住・在学の中高生に放課後、水曜日、金曜日、土曜日に、私たちの水槽だらけのオフィスを『アクアベース』として開放しています。ここでは子どもたちが宿題をしてもいいですし、水槽を観察してもいいですし、スタッフと生き物について話したり、ホワイトボードに生き物の絵を描いてもいいんです」
都会の子どもたちが自然に触れる機会が減っている中で、都心の真ん中で水槽を再現できることは、大きな意味を持つと松浦さんは考えています。
「都心でも自然に触れ合えるんだぞ、という体験につながれば嬉しいです。この思いが文京区さんと合致したので、ぜひいろんな子どもたちに来てもらって、生き物や海について好きになってもらいたいですね」
松浦さんのような若い世代が、AIと情熱を武器に海の未来を切り拓く。その挑戦が、私たちに大きな希望を与えてくれます。

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