シャークジャーナリスト

沼口麻子

私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

「よろシャークお願いします!」の挨拶と共に登場したのは、世界で唯一のシャークジャーナリスト、沼口麻子さん。サメへの尽きない情熱と、知られざるサメの魅力を語ります。

「シャークジャーナリスト」誕生秘話:野生のシロワニとの衝撃的な出会い

「昔からサメがすごく好きで、大学から大学院までサメの研究をしていました。サメの解説や説明が得意だったので、世の中にニーズがあるんじゃないかと思って、シャークジャーナリストという肩書きを勝手に名乗り、サメの魅力を発信する活動をしています」と沼口さん。

サメに魅せられた決定的な瞬間は、大学の実習で小笠原諸島の父島を訪れた時でした。

「ダイビングをしたら、なんと2メートルを超える野生のシロワニというサメが手の届くところまで来てくれたんです。水族館やテレビで見ることはあっても、自分の周りに大きなサメが遊弋するなんてことは今までなかったので、その無防備な姿、神々しさに衝撃を受けました。自分より大きくて強い生き物の研究者になりたい、というのがサメを研究しようとした決定的な瞬間でしたね」

映画「ジョーズ」のイメージから、サメを「怖い」「危険」と感じる人も多いかもしれません。もし海でサメに出会ったら、どうすれば良いのでしょうか?

「むしろ出会いたいです!サメってなかなか出会えないんですよ。クジラやイルカに比べて、サメの芸術的な写真ってほとんどないですよね。それって、まず出会うことができないからなんです」

出会えたとしても、すぐに逃げてしまい、近づくことすら難しい。YouTubeなどで見かける、口を開けているサメの映像も、餌付けされているケースがほとんどだと言います。

「私も世界中でサメの水中撮影や取材に行くのですが、例えばウバザメであれば、7月の中旬頃を狙って、スコットランドからさらに北のセントキルダ島という、水温10度を切るような冷たい海で何時間も泳ぎ、探して、ようやく撮影できるかどうか。コストも体力も膨大にかかりますし、何年も会えないことも普通なんです」

だからこそ、海でサメに出会えたら「超ラッキー」だと沼口さん。しかし、もし大型のサメが戦闘モードで、たまたま人間を餌と認識してきた場合は、「もう本当に早く船に上がるしかできない」とアドバイスします。

等身大のオグロメジロザメ パプアニューギニアで一緒に泳いだ思い出のサメ
Takuya Nakamura撮影

知られざるサメと日本人の深い関わり:食文化から日用品まで

現在、世界中で約560種類、日本国内でも約130種類のサメが生息していますが、実は日本人は昔からサメと非常にゆかりが深いと沼口さんは語ります。

「今でこそサメは遠い存在のように思われるかもしれませんが、例えば昭和30年代の築地市場では、マグロではなくサメがずらっと水揚げされていたんです」

フカヒレを切り出し、残った肉はかまぼこなどに加工されていたため、築地の周りにはかまぼこ屋さんが多くあったと言います。

「築地のフカヒレ屋さん、サメ屋さんにインタビューしたことがあるんですが、ホホジロザメやウバザメといった電車くらいの大きさのサメから、ミツクリザメやラブカといった深海のサメまで、あらゆる種類が水揚げされていたんだそうです」

昔は一般の人々もサメを食用としていたのでしょうか?

「はい、そうなんです。今でもお正月などに食べる『伊達巻』、あれはもともとサメの卵で作られていたそうですよ。築地でたくさんのサメが水揚げされ、お腹から出てくる卵で伊達巻を作るという文化があったんですね」

沼口さん自身もサメを食べることが好きで、解剖した際や、漁師さんからサメを買い取って食べたりしているそうです。特に印象的だったのは、青森の学生から聞いたアブラツノザメの頭を使った料理。

「サメの頭をすり鉢ですりつぶし、醤油などで味付けしてゼリー状にするんです。しょっぱい煮こごりのような食感で。サメの頭をそんな風に調理したことがなかったので、今度教えてもらって食べてみようと思っています」

地域によっては、今もサメを食べる文化が残っている場所があります。特に山間部に多いのは、昔は冷凍庫や冷蔵庫がなかったため、魚が腐りやすかったからだと言います。

「サメの肉はアンモニアを含んでいるため、多少臭みはありますが腐りにくいんです。だから、山の奥まで運ぶことができ、そこでサメを食べる食文化が発展しました。栃木や上越など、日本各地にそうした文化が残っています」

食用以外にも、サメは昔から様々な用途で使われていました。

「サメ皮、特にカスザメのサメの皮は、わさびおろしに使われていました。ゴツゴツしたサメ皮を板に貼り付けてわさびをおろすと、とてもいい塩梅にすりおろせるんです。また東京の練馬区には練馬大根という伝統野菜がありますが、これも収穫後にサメ皮で表面に傷をつけてから干すと、美味しい干し大根ができるそうです。ちょっとしたところで、様々なサメ皮が使われていたようですね」

サメに関する尽きない魅力と、知られざる日本との深い関わり。沼口麻子さんのシャークトークは、まだまだ続きそうです。次回も引き続き、シャークジャーナリストの奥深い世界を伺います。

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