2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回のゲストは、NPO団体「サスティナブル・コーストラインズ・ハワイ」のメンバー・来迎秀紀(きむかい ひでき)さん。ハワイで行うビーチクリーン活動についてお話を伺いました。
イメージと違った!ゴミだらけだったハワイのビーチ
ハワイのオアフ島からリモート出演してくださった来迎さんに、まずは「サスティナブル・コーストラインズ・ハワイ」で活動を始めたキッカケについて教えていただきました。
「2013年にフロリダからハワイへと引っ越しました。その時に、妻のマネージャーさんが『サスティナブル・コーストラインズ・ハワイ』のオリジナルメンバーで、一度クリーンアップに来ないかと妻が誘われました。フロリダに住んでいる時から海にすごくコネクションがあったのでお誘いに喜びまして、行こうと妻と話していました。その初めて参加したビーチクリーンアップで、とてもショッキングな光景を目の当たりにしました。ハワイというと、すごくキレイできらめいているというイメージがあったのですが、開いた口がふさがらないというか、何なんだろうこれはと思って。マイクロプラスチックやプラスチック、漁網などが見渡す限りにありました。つまり漂流物ですね。『マリンデブリ(Marine Debris)』とこちらでは言うのですが、海から流れ着いたものが、海岸一面に足を踏み入れる場所もないくらい散らばっていて。その光景を見た時に、すごいショックを受けました。そして、これは何でだろうと思って、いろいろと手探り状態で仲間たちと話しながらボランティアのミーティングに出たりしました。最初はミーティングも数人のコアなメンバーだけ。創立者のひとりであるカヒさんの自宅でミーティングをしていました。みんなで料理とかを持ち寄ってというOHANAスタイルな感じで話し合いながら。そこから始まりましたね」

DJが来たり、ライブを行ったりカジュアルなビーチクリーン
「サスティナブル・コーストラインズ・ハワイ」では、具体的などんな活動からスタートしたのでしょう?
「ビーチクリーンアップですね。ニュージーランドに『サステナブル・コーストラインズ』という団体があり、そのメンバーに創立者のひとりであるカヒさんが会った時に、自分のビーチを一度よく見た方がいいと言われたそう。そして、ハワイに帰った時にビーチを見たら、とんでもないことになっていると。今まで気づかなかったけれども、ちょっと気を下に向けてビーチを見たら、自分が生まれ育ったビーチがマイクロプラスチックでいっぱいだったと。これは何かしなきゃいけないということで、友達にビーチクリーンアップをやろうよと声を掛けて、マカプウというビーチで行いました。友達が友達を呼んで200人くらいで。その時に、カヒさんも『やっぱりみんな意識があるんだな』と、そういうハワイに対する熱い想いとかを感じたそうです。最初はお金もないし、本当にラフな感覚で、情熱からカジュアルにやり始めたのですが、そこから行う度に、どんどん人数が増えていきました。ただ、大きくなっていく中で、彼が感じたことが『一生これをやっていられない』と。ビーチクリーンアップは、例えるならお風呂から溢れ出るお水に雑巾を掛けているのと一緒。要するにリアクション。そこで、元栓を閉めなきゃいけないと思い、『Turn Off the Tap』というスローガンをつくって、元栓から少しずつ減らしていこうじゃないかという活動をするために、『教育』を入れたんですね。そこから今度は教育がどんどん広まっていきました。今では、ビーチだけではなく、川のクリーンアップや『Neighborhood Cleanup』という近所のクリーンアップもしています。これが全部海に繋がるんですよ。特にハワイは、一番近い大陸が2000マイル以上も離れているような場所で、海に囲まれいるので、海に対する愛情や水に対するリスペクトがすごい。そのため、クリーンアップするだけじゃなくて、クリーンアップしながら教育しようよと。楽しさもと入れてという形で拡大していきました」



その活動は「楽しく気軽に参加できる」ということをモットーにしているとのことで、「DJが来たり、ライブミュージックを行ったりとカジュアル」とおっしゃっています。今年は小学校を借りて実施したそうで
「カイムキにオフィスがあるのですが、カイムキの小学校を借りてナイトマーケットと一緒に午後にクリーンアップしました。日が暮れ始める頃からスタートして、近所と川のクリーンアップに加えて、河川で外来植物を取り除いて在来種を植えていく活動も行いました。その川から海に流れていき、栄養になるので」
ちなみに、観光客でも活動に参加できるそうで、「ぜひそういった一面を見ていただけたら。もっとハワイが好きになると思う」と来迎さんもオススメされていました。
ごみゼロを目指すためのサポート活動も実施
おっしゃっている「教育」では、具体的にどんなことをされているのでしょう?
「学校でプレゼンテーションをしたり、学校の課外授業でビーチクリーンアップを組んで、そこで教えたりしています。あとは、ハワイでは、サーフィンや映画業界での大きなイベントがあるので、そういった時に『SustainEvent』といって、ごみゼロを目指すサポートをしています。ビーチクリーンアップとはまた違う活動なのですが、イベントでは使い捨てが多く、食べくずとかも出ます。そこで、それを堆肥にしていくであったり、なるべくゴミを少なくしてカーボンフットプリントを減らしたり、いろんな面からアタックしながらそのイベントをサポートする。サーフィンのプロツアーを運営する組織『World Surf League』によるサーフィンの大会でも、分別やリサイクルをしたり、食べかすはは堆肥を作るマシンがあるので、それを使って土に返す活動をしています」

ハワイが教えてくれた「心構え」
そういった活動をハワイでされている来迎さんに、日本とハワイでの海洋環境問題の違いについて伺ってみると
「ハワイはルーツが水や海なので、言語も文化もそうですが、すごく根強い尊敬の意があって、守っていこうじゃないかという心構えがあります。そこが日本とは違うなと。僕も日本から行って、今こちらで活動して、そういうことをどんどん学んでいくと、これが足りなかったものなんだと感じましたね。そういったスピリチュアルなものなのですが、でも実はそこは世界で共通のもの。どこに行っても海からの恵みをみんなでシェアしているわけであって、国別で分かれているわけではない。それをハワイが教えてくれたというか、活動しながら感じましたね。ハワイには『アロハアイナ』という言葉もあります。また、息吹を感じること、命のエッセンスというのは呼吸にある。水は生命のもとで、巡るものであって、そういうことはアロハを感じますね。言葉だけじゃなく、自分がする行動がアロハであり、ライフスタイルなんだと。空気もシェアしているわけで、『Ha』というブレスも僕達はシェアしている。そういうところはすごく大事な部分なので、みんなで協力し合っていければと思います」
3Rで「Reduce(リデュース)」がなぜ最初なのか?
そして、私達が日常でできる環境に優しい行動は何があるか伺ってみると
「僕たちが一番力を入れてるのが3R。『Reduce(リデュース)』、『Reuse(リユース)』、『Recycle(リサイクル)』。リデュースがなぜ最初かというと、それが始まる前に終わらせることができるソリューションだからなんですよ。リデュースというのは減らすこと。使わない、使い捨てを捨てない。捨てないことによって、ビーチクリーンアップをしているんだというニュアンスですね。それを強く推しています。やはり大事なのは、病気になる前の予防。母なる大地が病気になるのを阻止するために、公害を阻止するために何ができるか。始める前に終わらせるという解決策をなるべく推していて、それが意外と簡単にできたんですよ。水筒を持っていったり、同じものを飲むにしてもプラスチックに入ってるものじゃなくてアルミの缶を選んだり。僕らにはチョイスがあるので、そのチョイスをいかに上手くパワーとして使うかが大事」
もっと良くして次世代に渡すことが最大の目標
最後に、今後の目標について伺いました。
「先人たちからいただいたギフトを、どうやったらもっと良くして次の世代に渡せるかが最大の目標ですね。7世代先までとよく言うじゃないですか。先を見ながら、循環できるようなギフトを、未来の世代たちに残していければというのが目標です」