海の地図プロジェクト メンバー

高柳茂暢

2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

今回のゲストは、「海の地図プロジェクト」で海底地形を測量するチームの中心人物「アジア航測株式会社」の高柳茂信(たかやなぎ しげのぶ)さん。空から地球をスキャンしてつくる壮大な海の地図についてお話を伺いました。

今までにない浅い海の地形図を最新の機材でつくるプロジェクト

まずは、取り組んでいらっしゃる「海の地図プロジェクト」について教えてくださいました。

「その名のとおり、海の地図を作るプロジェクトです。日本の国土の面積はすごく小さいですよね。世界で61位なのですが、日本の権利が及ぶ海の広さになると、世界でなんと6位なんですね。これが海洋国家と言われるゆえんなんです。その日本にはいろんな海の地図があり、海に囲まれているので、船舶の航行などさまざまなことに使われる地図があります。ただ、この海の地図プロジェクトでつくっているものは、今までとは一線を画す精細な地図になります。どれだけ詳細かというと、今までのものは、同じ深さを線で結んだ『等深線』という手法で深さを示していました。等高線というと馴染みがあると思いますが、それの海版ですね。我々がつくっている地図は、それを写真のように細かい地形で表現している。ゴツゴツしてるところが岩場、ツルっとしてるところが砂と表現されています。こういった水深20mまでの浅い海の地図を、全国の約9割の範囲で整備しようという壮大なプロジェクトになっています」

空から海底の地形をスキャン

今までの海の地図では、沿岸域の詳細な地形がわからなかったとおっしゃっています。では、海の地図プロジェクトではどのように計測しているのでしょう?

「今までは船で測っていたので、座礁の危険があり、全く地形がわかっていませんでした。でも、今回のプロジェクトでは飛行機で測量しているんです。高さ500mから機材を積んだセスナやヘリコプターを使ってレーザーを発射し、海底の地形をスキャンしています。光でスキャンするという最新の機材を使っていまして、日本の民間企業に入ってきたのは2016年ぐらい。ですので、まだ使われるようになってから10年も経っていません。そんな最新の手法を用いてつくっています」

生き物の研究や防災・減災に活用できる

プロジェクトが始まって2年経ったそうですが、現在は日本の沿岸の25%ほどの測量が完了しているそう。その画期的な海の地図はどんなことに役立つのでしょう?

「例えば、生態系の研究。生き物は、細かい地形が生息場所として非常に重要になってきますので、こういう詳細な地図があると定量的な研究に弾みがつきます。あとは、防災・減災。津波がどこまでの高さまで立ち上がるのか、どのぐらいのスピードで土砂が海に流れていって海岸が侵食されているのかというのも非常に細かくわかるようになります」

高柳さんも初めてこの海の地図を見た時は、衝撃を受けたそうです。

「言葉を失うぐらいの衝撃を受けまして。学生の時に魚類生態学を学んでいて、毎日海に潜って魚を見ていたんですね。この地図を見た時に、ここにこういうふうな魚がいるぞというのがすごく見えて、非常に感動したことを今でも覚えています」

海底地形図を活用したWEBサイトもオープン!

この海底地形図を使って「釣りドコ」というWEBサイトも立ち上げたとおっしゃっています。

「これはアジア航測が社内ベンチャーで行っているサイトです。つくったキッカケは、先程私はこの地図を見て感動した、魚の居場所が分かったと申し上げましたけれども、釣りが好きな社員と一緒に3人で『この地図で釣りのアプリをつくったら面白いんじゃないか』ということでつくったのが釣りドコです」

このWEBサイトでは、どんな魚が釣れたのかがユーザーも投稿できるようになっているそうです。

「地形と釣れた魚の関係を、皆さんと一緒につくり上げていって、それがどんどん溜まっていくと、こういう地形だとこういう魚が釣れるんじゃないかと予測できる。釣りドコを見ることによって釣果もアップするということを夢見ています」

釣り人にとっては宝の地図!

実際に使っているユーザーの声や反応について教えていただきました。

「ある人は、釣りの大会に出る時に、これがあれば全然違うから、他の参加者には教えたくないと。まさに宝の地図ですね。釣り人は、通い慣れた場所の地形は大体頭に入っていますが、新規開拓をする時はまたイチから始めなきゃいけないんですね。また、前にここで釣れたのはなぜだろうと考えた時に、この地形図を見ると『だから釣れたんだ』と答え合わせができます。例えば、根魚というのは岩場が好きだったり、スリットという細く水路上に伸びた地形が好きな魚がいたり、砂地にしかいない魚がいたり。この知見が溜まると地形を見るだけで、魚がどこにいるかというのが予測できるようになると思います」

海の地図を通して海への親しみやつながりをつくれれば

最後に、今後の展望について伺いました。

「地図は、物事を判断する時など何かを決める時に必ず使うものなんですね。そういった基盤となる情報に、いろんなものを重ねていくと見えてくるものがある。それがまさに利活用だと思うんですね。そのひとつが防災・減災であったり、藻場を復活させる取り組みであったり。それをどんどん繰り返していくと、今度は海に対して親しみが湧いてきたり、つながりができたりということにも将来なるのではと期待しています」

制作中の海の地図は、どう公開しようかと検討中とのこと。将来、私達が利活用できるようになるまで楽しみに待っていましょう。

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