KANSEI Design Limited代表取締役・下関ふくレボリューション代表

柳川舞

2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

今回のゲストは、KANSEI Design Limited代表取締役で下関ふくレボリューションの代表を務めていらっしゃる柳川舞(やながわ まい)さん。山口県下関市の名物“ふぐ”を活用して行っている「おいしいから海を知る」活動についてお話を伺いました。

ふぐではなく、なぜ「下関“ふく” レボリューション」?

柳川さんは「下関ふくレボリューション」の代表とのことですが、下関といえば“ふぐ”が有名です。ふぐではなく、“ふく”としているのはなぜなのでしょう?

「下関では“ふく”と言っていまして、幸福の“福”にひっかけて縁起を呼ぶ魚として昔から親しまれてきました。ですので、プロジェクトの名前は『下関ふくレボリューション』と呼んでいます。その下関は、明治維新も源平合戦もそうですが、今までは戦って勝った方が歴史を変えていくという形でした。けれども、私たちのプロジェクトは、海の環境などをみんながハッピーに変えていこうと行っています」

そんな下関ふくレボリューションがスタートしたキッカケについて伺いました。

「日本財団『海と日本プロジェクト』の一環としてスタートしたのは、今から3年前です。その前に、地元のチームで集まって『唐戸市場にもっとたくさんの人が来れるようにしよう』ということで、スペインの市場を参考にしました。スペインの市場では、休みの日はパーティー会場に変えてパエリア大会みたいなものをするそうです。そこで、その大会で入賞したシェフの方をお呼びして、下関の海と山の食材を使って、大きい鍋でパエリアをつくってみんなが楽しむというようなこと2015年から始めました。それが徐々に広がっていきながら、海と日本プロジェクトが『おいしいから海を知る』という活動を行っていて、私たちの活動の発展版みたいな形でお声がけいただいて今に至ります」

実家が唐戸市場の仲買

そもそも柳川さんは下関とどんなつながりがあるのでしょう?

「実家が唐戸市場の仲買で、小さい時から魚屋さんの環境で育ちました。お母さんが唐戸市場の“おかみさん会”という結構強烈な団体に入っていて、おかみさんが集まって市場の活性化をしようという環境でした。私自身は家業を継いでいませんが、妹夫婦が継ぎました。ただ、私は社会活動みたいなものを親から継ぎたいなと思って。東京に住んでいますが、水産や海の環境について地元で社会活動として取り組んでいます。月に3回も4回も下関に帰りますが、外部からでもお金といった支援だけじゃなくて、地元の人と一緒に活動を進めていくという喜びみたいなものも感じているので、すごいいい形で活動に参加させてもらっています」

トラフグ以外に22種類も食べられるフグがいる!

続いて、下関ふくレボリューションでの具体的な活動について教えていただきました。

「大きく分けると、『飲食の連携』と『教育の連携』です。飲食の連携では、天然フグに限ると、トラフグ以外に22種類も食べられるフグがいて、それがなかなか名前も知られていませんし、過小評価されているような現状があります。加工品では使われていますが、商品の名前になるといったような日の目を見ることがあまりなくて。そこで、名乗るという形で新しいメニューとして、“フリット”や“ナゲット”をつくり、レストランの方々と一緒にメニュー開発をしてキャンペーンを行っています」

フグのフリットはまん丸とした形でおいしそうですが、どんなお味なのでしょう?

「フグは淡白なんですけれども、天然のフグの中には身が柔らかいものがあって、お刺身で食べるよりも揚げた方がふわっとするんですよね。また、フグの場合は鯛みたいに骨がないので、小骨を心配しなくても食べられる白身のお魚なので、ものすごく柔らかい感じでふわっとしたおいしいフリットになっています」

さらに、地元の塩やアオサなどをメニューの中に入れるというルールにし、違う海の食材からも海のことを知ってもらう取り組みも行っているそうです。

子どもに大人気のキャラクター「ふくおいちゃん」

『教育との連携』についても教えてくださいました。

「フリットを給食などでも出しながら、学校と連携しています。そこで、教育の方ではもうちょっと子どもたちが楽しく学べるように、“ふくおいちゃん”というキャラクターをつくりました。モデルは、唐戸市場の元社長さんで下関ふく連盟の元会長の松村さんというフグが大好きなことで有名なおじさんなんです。そのふくおいちゃんの絵本をつくり、授業はリアルなふくおいちゃんが来るよということで、村松さんに絵本と同じ格好してもらい、授業に参加してもらっています。魚屋さんのしゃべり方で子どもたちに接するという楽しい授業を一緒に行っていて、幼稚園から大学生まで幅広い年齢層に向けて実施しています。また、海と日本プロジェクトが『“食”から学ぶ』という趣旨があったので、給食が難しいところでも『ふくちゃんクッキー』という米粉の中にフグの粉を入れたクッキーをつくりまして、食べる教材として授業の最後に配っています。子どもが家に帰ると、お母さんやお父さんに『これは特別につくったクッキーだよ』と自慢しながら食べてもらうと。さらに、その中にも海のメッセージがあって、フグの生息域が変化していること、クッキーにも地元のお塩とアオサを使ってもらっているので、『食べるという楽しいことを通して下関の海の現状を知る』といった教材をつくってまわっています」

その授業を受けた子どもたちはどんな反応だったのでしょう?

「みんな楽しそうです。中でもふくおいちゃんが強烈なので。魚屋さん丸出しでいくので、子どもたちはそちらを楽しみたいという。授業を受ける子どもの中には、不登校の子も来るんですよ。その子がお魚を好きだったりするから、例えば、おいちゃんの質問に対して『フグの毒ってこうなんだよ』とか結構知っているんですよね。そういう発言を日ごろは来ない教室でやると、みんなの見る目も変わって、物知り博士みたいな感じになって。それで先生や校長先生もすごい喜んでくれて。そういう意味では、学校の授業の中ではできないものを、外部の地元の人たちが一緒に行うのは、いろんな変化が起こっていいなと思いました。また、その授業で楽しくなると、将来水産業や漁師さんにも興味を持つ子が出てくるんじゃないかと」

陸で下関の海の中を体験する取り組みも実施!

ふくおいちゃんの授業だけではなく、陸で海に親しんでもらうプログラムも行っているとおっしゃっています。

「下関の海の中のVRをつくっています。世界的に有名な水族表現家の二木あいさんに、下関の海に潜ってもらって、海の中を案内するような映像を撮影し、海に潜ったことがない子どもたちでも地元の海の中が見られるという教材をつくりまして、そのVRコンテツを持って、いま学校を回っています。そのVRを体験してもらう時に『海に潜ったことがある人?』と子どもたちに聞いてみると、やっぱりほとんど潜ったことがない。水の中に入るどころか、海自体に行ってない子も多いんですよ。そうなるとすごく自然が遠いものになっていて、近づけようと思ってもやっぱり恐怖心があると思うんです。だから、VRみたいに海に潜らなくても楽しめるものをつくれば、もっと海に興味を持ってくれる子が増えるんじゃないかなと思っていまして。VRをつくった時はテスト的な要素もあったのですが、子どもたちの没入感がすごいんですよ。私も五感といった感性の研究を行っているので、VRを見てもらう時には、タライに下関の海の水を入れて、その中に砂も入れて、そこに足をつけてもらっています。すると、小さい子どもは泳ぎ出したり、足をバチャバチャし出したりして。だから、やっぱり疑似体験でもいいから海を近くに感じる工夫を入れていくと、子どもたちも楽しく学んでいけると思います。そういった発見が日々あります」

五感から設計していく商品やサービスの開発が本業

感性の研究とおっしゃっていましたが、本業のKANSEI Design Limitedはどういった会社なのでしょう?

「私はもともと新規のビジネスや商品開発を行う分野にいます。初めに取り組んだのが『香り・嗅覚』なんですよ。ホテルに行ったりすると、イイ香りがするじゃないですか。ああいう香りのブランディングの会社の社長をずっとしていました。また、香りだけじゃなくて、例えば音や光といった五感で設計していくと、臨場感が増しますし、記憶にとても残るので、そういうものをデザインしていく研究開発をしています。ですので、私自身も感性工学という学術的な分野の研究者でもあって、色んな企業と空間をつくったり、商品やサービスの開発だったりを行っています」

さまざまなジャンルの人が関わる下関ふくレボリューション

柳川さん自身が感性工学の研究者であるように、下関ふくレボリューションには多くのジャンルの方が関わっているのでしょうか?

「私が願っていることが、知識だけじゃなく、地元の人たちが地元の人を教えること。子どもたちも分からないことがあったら、例えば市場に行くといった継続するようなコミュニケーションができないのかなと思っていまして。そういう意味では、水産業の人もそうですし、飲食の方々には料理をつくる意味で関わっていただいていますし、また、自治体や教育委員会の方々と一緒になって教材もつくりながら事業をつくり上げています、自然に色んな人が巻き込まれています。でも、地元では多分『巻き込まれ事故』と言われていて。そういうユーモアも入れながらでも、喜んで参加してくれるプログラムに育っていっているなと思っています」

海離れを防ぐために大人も子どもも考えるべき

最後に、今後の課題や取り組みについて伺いました。

「みんな海から遠ざかっているなと感じています。山も海も守らなきゃいけませんが、少なくとも山は目に見えるじゃないですか。削られたり、ごみがあったりすれば。でも、海の中は潜らないと見えない。私たちが思っている以上に、人間にとって悲惨な状態になっていると思っているんですよ。ごみがあるとかではなく、住んでいる生物が違う。そうなると、私たちが共生していこうと思うと、海に対してもっと意識を向けるべきなんです。でも、海が大変だから人間の義務としてやらなきゃいけないというよりは、海の中にたくさんキレイな生物がいる、海が気持ちいいから行く、それを大事にしましょうよと。そういう気持ちにどうやったらなっていけるのかということを、大人も子どもも考えた方がいいんじゃないかなと思っています

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