2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回は2024年11月9日(土)と10日(日)に東京ミッドタウンで開催されたイベント「海のごちそう?フェスティバル2024」と連携したスペシャル企画!10日に行われた「Lazy Sunday 海のごちそうスペシャル」に出演してくださったゲストに、「海」と「食」に関するお話を伺いました。
その前に、会場の様子を少しだけご紹介!
当日は、ラジオ番組「Lazy Sunday」のDJを担当しているGeorge Cockleさんと渡辺麻耶さんが、マルシェやキッチンカーで販売されていたシーフードメニューを試食したり、主催者である一般社団法人 海と食文化フォーラムの富田大智さんにお話を聞いたり、マルシェで「じゃこまめ」を販売していた株式会社SOL JAPANの田中彩子さんに商品のバックストーリーを伺ったりと盛りだくさんの内容でお届けしました。
そんな中、最初に「海」と「食」についてのお話を伺ったゲストは、一般社団法人 日本ソルトコーディネーター協会の代表理事・青山志穂(あおやま しほ)さんです。以前にもKnow The Seaに出演してくださった青山さんに、改めて「塩」の魅力について伺いました。
海からできた美しい結晶「塩」
まずは、塩の魅力や楽しみ方について教えてくださいました。
「やっぱりお塩の魅力といえば、海からできた美しい結晶なわけですよ。そして、食材の持っている色んな力を引き出してくれるというのがイチバンの楽しみ方かなと思います」
スイカに塩を振ると甘くなるのはなぜ?
食材に塩といえば、昔からスイカに塩を振ります。けれども、塩を振るとなぜ甘くなるのでしょう?塩のスペシャリストにその理由を伺ってみると
「あれは『対比効果』と言って、逆の味を少量加えてあげると、本体の味がぐっと引き立つという料理の理論がありまして。だから、意外とスイーツにもよく見ると塩が少しだけ入っていたりするんですよ」
同じ海水で同じ生産者がつくっているのに味が違う!?
そんな青山さんは、「18年ぐらい前にお塩をちゃんと紹介できる人がいないなと思って、無いならつくってしまおう」という理由からソルトコーディネーターに。ご自宅には、なんと2400種類もの塩を持っているそう。この日は、60種類の海の塩を持ってきてくださり、その中から3種類をDJのおふたりが試食しました。一体どんな塩なのでしょう?
「右側の2つのお塩は、沖縄県にある人口1000人にも満たない小さな離島「粟国島(あぐにじま)」のものです。そこの海水を汲んでつくっていて、2つの違いは『釜で炊いたもの』と『太陽と風の力だけで結晶させたもの』。太陽と風の力で干したお塩の方が、ちょっとキラキラして粒が大きくなっています。生産者さんは同じで、なおかつ途中まで同じやり方でつくっているのですが、最後に結晶させる工程が違うんですよ」
実際に食べたおふたりによると、天日干しの方がまろやかだそう。なぜ同じ海水で同じ生産者がつくっているのに、こんなにも味が違うのでしょう?
「熱の加わり方であったり、結晶の成長具合であったりで、ミネラルのバランスが大きく変わるんですよ」
海流や海洋深層水などさまざまな要素で変化する塩
そして、もうひとつのお塩についても紹介してくださいました。
「板状のものは沖縄県の与那国島でつくっているお塩。サクサクした食感となっています。これもつくり方によって板状の結晶ができたり、小さい粒になったり、ピラミッドになったりと、いろんな形があって面白いんです」
同じ沖縄県の塩でも、先ほどの2つとは全く違う与那国島のもの。なぜ違いが生まれるのでしょう?
「日本には海流が4つ流れているので、その海流によっても違います。また、もっとミクロに見ていくと、川の近くなのか沖合なのか表層水なのか海洋深層水なのかなどによっても違います」
○○に塩を振りかけると高級スイーツに早変わり!
続いて話題は食べ方へ。以前の出演時には、「納豆に塩が合う」と教えてくださいました。ほかにもオススメの食べ方を伺ってみると
「これからの時期にオススメなのが、寒くなってきてこってりしたものが食べたくなる時期なので、ラクトアイスに少量の塩とオリーブオイルをかけてあげるんですよ。そうすると、ぐっと味が濃くなって、お値段がいいアイスみたいに変身します。あとは、お豆腐にちょっとお塩とゴマ油をかけるのもおいしいのでぜひ試してみてください」
色が違う塩があるのはなぜ?
そんな中、Georgeさんから「塩によって色が違うのはなぜ?」という素朴な疑問が
「色が違うのは、例えば、海水を釜で炊いてつくる時に、“鉄釜”で炊いているか“ステンレスの釜”で炊いているかで変わってきます。また、日本の伝統的なつくり方で、海藻を入れて一緒に炊く『藻塩』というのがありますが、そうするとヨードの色が出てきて茶色くなったりします」
海を守ることが塩づくりにもつながる!
そんな味や色が変化する塩は、マイクロプラスチック問題や海洋ごみの問題、温度といった海洋環境に大きく影響されるとおっしゃっています。そんな中、青山さんと塩の生産者とでさまざまな活動をされているそうです。
「まずひとつは、製造工程で異物が除去できるように細かいフィルターを使ってろ過しています。そのほかにも、ビーチクリーンを一生懸命やったり、なるべくプラスチック容器を使わないようにしたり。最近だとアイスカップを代わりに使ったメーカーさんも出てきています。また、基本的なことですが、ゴミをきちんと分別して再利用できるようにするといったことから皆さん海の環境を守ってらっしゃいますね」
沖縄の塩は○○が多いからまろやか
また、沖縄でも活動をされている青山さん。そこで、沖縄の塩や海の環境について教えていただきました。
「沖縄はサンゴ礁が多いので、カルシウムが多い海水が取れやすくて、お塩としてはまろやかなものができやすいといった傾向はありますね。海の環境については、サンゴがこの何年か元気がないので、もうちょっと何かできないかなというのはありますね」
塩を悪者ばかりにはせず「適塩」を心がけて欲しい
そんな塩について、アメリカでも日本でも生活したことがあるGeorgeさんによると「日本の塩は、アメリカのものより味が強いと思う。料理に入れる量は日本の方が少ない」とのこと。その塩の量について青山さんは
「食べ過ぎはもちろん良くないですが、一概に悪者にせず、自分に合った量を、自分に合った質のものを適量取っていく。私は「適塩」と呼んでいますが、それが一番大事かなと思います」
日本には4000種類もの塩が!スーパーで注目してみて欲しい
最後に、青山さんからメッセージをいただきました。
「いま専売制度が解禁になって、日本ではお塩が4000種類ぐらい流通しています。ですので、私が持っているものもまだ半分ちょっとぐらい。ぜひスーパーマーケットなどに寄っていただいて、お塩の棚をちょっとご覧になっていただきたいなと思います」
2人目のゲストは、ホフディランの小宮山雄飛(こみやま ゆうひ)さん。ミュージシャンとして活躍されている一方で、食通としても知られ、「音楽界のグルメ番長」の異名を持つ小宮山さんに、「海」と「食」について伺いました。
渋谷区の飲食を盛り上げる活動を実施中
小宮山さんは、東京・原宿生まれ。1996年にホフディランのボーカル&キーボードとしてデビュー。食通としても有名で、コラボの執筆やテレビ・ラジオ番組の出演なども多数。また、オリジナルのレシピをまとめたカレー本を3冊出版されているほか、2018年には日本初のレモンライス専門店「LemonRiceTokyo」を渋谷にオープン。2022年からは渋谷区のCEO(チーフ・イート・オフィサー)に就任しています。その渋谷区の活動は具体的にどんなことをされているのでしょう?
「いま行っているのは、『美味しい渋谷区プロジェクト』という渋谷区の飲食を盛り上げようというキャンペーンがあって、それを地道に広げています。渋谷区だと“ハチペイ”という地域通貨があって、それでちょっとお得に食べられるので、その啓蒙活動といった名のもとで食べ歩いていますね」
料理にハマったキッカケは父親。カレーは・・・
そんな小宮山さんが料理にのめり込んでいったキッカケは何だったのでしょう?
「父が料理をしていたんですよ。自分で築地に行ったり、鰹節や昆布で出汁を取ってみたいなことをしたりしていて、それを子どもの頃から見て育ちました。男だけど自分で料理するのがわりと普通な生活でしたね」
本を出版するほど「カレー」にハマったキッカケについても伺ってみると
「カレーは全く逆で、母がカレーをつくらなかったんですよ。母は真面目な人で、いわゆる余り物のカレーなどを食べさせたくなかったようで、かといってイチからスパイスを調合してカレーはつくれないと。それがあって、一般的には『おうちのカレー』があるじゃないですか。お母さんのカレーみたいなそれぞれの家のカレーが。でも、それがうちにはなくて、それで外で食べ歩くようになってハマったんです」
カレー好きな人達が注目する今のトレンドは「シーフード」
「研究するのが好き」とおっしゃるほどカレー好きな小宮山さんが、熱弁されたのがシーフードカレーでした。
「シーフードカレーがいま一番のテーマなんですよ。ただ、シーフードカレーは難しいんです。牛のひき肉とかを使った方が、すぐ味が決まるので。だから、おいしいシーフードカレーをつくろうというのをいま各所から言われてまして。究極のシーフードカレーをつくろうと。今カレー好きの間では実際トレンドになっているんですよ」
カレーマニアの間ではシーフードカレーが来ると言われているそうで、今チャレンジしている課題とのこと。また、インド料理屋では、サバの缶詰を使ったサバカレーといった進化したシーフードカレーも提供されていると教えてくださいました。
シーフード全般だけではなく、海老にも大注目!
さらに、もうひとつ熱のこもったトークを繰り広げたのが「エビ」です。
「エビだけで30分は話せます。エビのカレーも究極のものを考えようとしていまして。ロサンゼルスに『Killer Shrimp』というエビ専門店があるんです。そこで提供しているのが、パンをつけたり、ご飯で食べたり、パスタを入れたりするようなものすごく旨いエビスープ。ちょっと辛いのですが、トマトベースの真っ赤なスープで、それがめちゃくちゃおいしいから僕はまずはそれを再現して、それをベースにしたカレーにしようと思っているんです。そのシュリンプカレーは絶対おいしいんじゃないかと開発中です」
海産物は見ているのも好き!
ほかにも好きな海産物があるか伺ってみると
「海産物は何でも好きというか、見ているのが好きなんですよね。食べるのも好きなのですが、市場とか絶対に行っちゃうんですよ。地方に行った時に、市場があると朝に行ったりします。市場が活気づいてる感じが好きで。この間も『うおんたな』と地元で呼ばれている兵庫県・明石の市場に行ってきましたけど、市場が賑わっていると元気がもらえるので何でも好きですよ」
つくる時にひと手間が楽しい!
料理もされる小宮山さん。海産物を使った調理でもこだわりがあるそうで
「大変なことはしないですけど、おいしくしたいじゃないですか。この間も、サンマを買ってきた時に、ただ焼くのではなくて、インターネットで調べてみて、15分前に塩をして、その後に紙で水分を拭いて、包丁で斜めにちょっと切れ目を入れるとおいしくなるよみたいなのを必ず見て、ちゃんとやりたくなるという。何かそういうのが楽しいんですよ。つくる時は食べる以上に調べています」
広島産の海産物と広島産の日本酒はなぜ合うのか?
ミュージシャンとしてツアーで全国各地を訪れる小宮山さん。そこで、ツアー先での海の幸の思い出について伺ってみると
「広島を訪れた時に、酒蔵に行ったんです。その酒蔵で広島の港でとれるカキやタコなどをつまみで出してくれて、日本酒と飲んだ時にすごくマッチして。何でこんなにおいしいんだろうと聞いてみたら、雨が降ると山の向こう側にその水が流れて、それでお米をつくっている。一方で、瀬戸内海には、雨の水が川になって海に流れ込むわけで、山の栄養からカキといった海産物が育つと。つまり、米からつくった日本酒も海産物も、同じ雨の水から来たもの。だからその地元のもので合わせると絶対においしいんですって。それがすごく印象的でした」
我々の生活が海にも影響する
さまざまな海産物のエピソードをお話してくださいましたが、海を取り巻く環境についてはどう感じていらっしゃるのでしょう?
「海というと、その海の関係者だけが関係あるような気になっちゃいますが、広島のお話のように、雨が山から川へと行き、海に流れるという時に山の自然も大事だったり、当然ゴミ問題だったりもあると思います。ですので、『海=海辺や海』だけじゃなくて、我々の生活が変われば、それが海の環境や魚の環境にも関わると思うので、関係するのは海だけじゃないのではないかと思っています」
「フットサル×ビーチクリーン」にも参加!
そして、最後に、印象的だったビーチクリーンのエピソードをお話してくださいました。
「島根で行われていた浜辺のフットサル。フットサルを裸足でやる時に、危なくないようにということで、まずビーチクリーンをしてキレイになったところでフットサルをやろうと。だから、ただキレイにしに来てくださいじゃなくて、そのあとに自分達がそこで遊ぶというのがセットになっているというイベントがあって、何年か通っていました。瓶の破片やペットボトルを全部片づけた後に、そのお楽しみとしてスポーツを行うというのは良い試みだったと思います」
最後のゲストは、シンガーソングライターのCaravanさん。神奈川県茅ヶ崎在住と海のそばで暮らすCaravanさんに「海」と「食」について伺いました。
自分でつくったお米でパエリアを調理!
「Lazy Sunday」には度々出演されているCaravanさんですが、いつも田んぼについてのトークばかりで、海の幸については話したことがないそう。そこで、まずは「海の幸は食べてますか?」というストレートな質問から始まりました。
「海の幸は食べていますよ。お魚好きだし。不思議なものでだんだんお魚好きになっていきますね」
さらに、Georgeさんから「お寿司屋さんに行ったら最初は何を食べる?」と聞かれ、「マグロですかね」と答えるなど、旧知の間柄がわかるトークが展開されていました。そんな中、お寿司以外の海の幸の食べ方について伺ってみると
「あまり料理はできないですが、たまに友達や家族とキャンプに行くと、鍋に自分でつくったお米と魚介をいっぱい入れたパエリアをたまにつくります。あとはあさりのパスタが大好きで、ボンゴレビアンコとかはたまにつくりますね」
奄美大島でビックリ!ウミガメは・・・
続いて、海での好きな過ごし方についてお聞きしました。
「湘南エリアの茅ヶ崎にスタジオを構えていて、暮らしているんですけど、海辺が近いので、たまに散歩に行ったりします。何気なく過ごしているだけでも気持ちがいいですよね」
また、ライブでさまざまな場所に行くため、余裕があれば家族を連れていったり、ちょっと長く滞在してその土地を旅したりするとおっしゃっています。そんな中、最近Instagramに投稿したのが奄美大島へ行った時の写真だそうです。
「今までも何回か行くタイミングがあったのですが、いつも台風とか色んなことに阻まれていて。それが今年ようやく行けたんですよ。海がめちゃくちゃキレイでしたね。ウミガメと泳いだりもしました」
そんなに簡単にウミガメは寄ってきてくれるのでしょうか?
「ビーチによってウミガメのなつき具合が違います。隣の浜だとすごい勢いで逃げたりとか全然違うんですよね」
いわば上流でのビーチクリーン「里山クリーン」を実施
そんなCaravanさんに、海が抱える問題について感じることを伺ってみると
「昨今よく言われているゴミやプラスチックの問題は、やっぱりあるなと散歩すると思います。あとは、河口に行くと、海のゴミだけじゃなくて、上流からどんどん海に流れている。僕らは田んぼをやっているので、山の方で作業することが増えたんです。そこで、上流のビーチクリーンということで『里山クリーン』を行っていて、月に一回ゴミ拾いをしています。海も山も町も全てつながっていると拾って歩いてみるとわかり、すごく意識がつながる感じがしますね」
山にはどんなゴミがあるのでしょう?
「半端ないなと思うのが、不法投棄というか大量に車で運んできて捨てていくみたいな人が多くて。そういうのは僕らがいくら拾って歩いても追いつかないから、警察や行政に頼むしかなくて」
海の幸から山と海とのつながり、そして、里山クリーンについてお話してくださったCaravanさんは、このあと生演奏も披露。会場を大いに盛り上げてくださいました。
今回の青山志穂さん、小宮山雄飛さん(ホフディラン)、Caravanさんが出演してくださった「海のごちそうスペシャル」はPodcast等で配信中です。この記事には収まりきらなかったDJおふたりとのトークが満載ですので、ぜひお聴きください。