写真家・映像作家

MANA 野元学

2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

今回のゲストは、写真家で映像作家のMANA野元学(のもと まなぶ)さん。東京にある世界自然遺産「小笠原諸島」についてお話を伺いました。

小笠原諸島のイルカに魅せられて

東京から南へ1000kmの場所にある小笠原諸島。これまで陸と一度もつながったことがない「海洋島」のため、独自に進化した生態系を持つのが大きな特徴です。2011年にはユネスコの世界自然遺産に登録されています。MANAさんは、その小笠原で30年間に渡って美しい自然を撮影されていらっしゃいますが、何に魅せられて小笠原に拠点を移したのでしょう?

「最初のキッカケはイルカでした。小笠原に行く前はハワイをベースに活動していたのですが、小笠原に初めて来た時にイルカと泳いだんですよ。その時の衝撃がすごくて、イルカを撮りたいと思い、小笠原に行くようになったんですね。それを続けているうちに、小笠原には山や森の中にも実は素晴らしい自然がたくさんあると気がついたんです。そこで、これは海やイルカばかり撮影している場合じゃないから全部撮りたいなと思い、移住しました。そして、時間が足りなくてもう30年も経っちゃったんです」

「ボニンアイランド」の「ボニンブルー」とは?

そんなMANAさんがよく使っていらっしゃる言葉が「ボニンブルー」や「ボニンアイランド」。これは一体どういう意味なのか教えていただきました。

「『ボニン』というのは、小笠原の英語名が『ボニンアイランド』と言いまして、そこからきています。『ボニンブルー』というのは、深く濃い青色を指しています。勘違いされる方もいらっしゃるかもしれませんが、沖縄や海外ですと、きれいな透明度の高い海を『エメラルドブルー』と言ったりします。でも、『ボニンブルー』はそういったものではなくて、色で言うと『コバルトブルー』でしょうかね。そういった深く澄んだ濃い青のことを『ボニンブルー』と言います」

港を出て5分でクジラと出会える!

イルカに魅せられたとおっしゃっていましたが、ボニンブルーの海の中には他にどんな生き物がいるのでしょう?

「イルカは一年中いますが、冬になると“ザトウクジラ”が出産・子育て・繁殖のためにやってきます。夏場は北のベーリング海やオホーツク海の北といった高緯度の寒い海で餌をたくさん食べて、冬になると、暖かい南の海に繁殖のために大回遊してくるんですね。そのクジラは、港を出て5分も経たない内に見つけられますよ。そして、水しぶきがかかるんじゃないか、船にぶつかっちゃうんじゃないかと思うほど近くに来る時があります」

サンゴにウミガメも見られる!

MANAさんのSNSには、サンゴの絨毯の上にいるウミガメといった写真もアップされています。

「“スギノキミドリイシ”というサンゴで、木の枝のように見えるから『枝サンゴ』とも呼ばれていまして、これは世界中にあります。ただ、小笠原は湾の中に群生地がありまして、そこにウミガメたちもよく潜るんですね。SNSに掲載していたものは、白いサンゴの森のようなところに、カメがちょこんと乗っかっているような写真だと思いますが、ウミガメたちの休憩場所にもなっているんですよ」

どんな写真か気になる方は、MANAさんのInstagramXをご覧ください。

「ガラスの生態系」と言われる固有種が脅かされている

「海洋島」がゆえに、さまざまな固有種がいる小笠原諸島ですが、一方で「ガラスの生態系」とも言われています。そんな繊細な固有種が今、脅かされているとおっしゃっています。

「島が誕生してから一度も陸続きになったことがないので、最初は生き物が全くいませんでした。東京からでも1000km離れていますので。そのため、大海原を渡って何とか辿り着いた動植物が、その環境に適応するようにどんどん進化をしていきました。それが固有種という動植物なんです。ただ、固有種は非常に弱いものが多く、そこの環境にしか適用していません。外から入ってきた植物などは、繁殖力が強いことがあり、例えば、発芽率が非常に高くて成長も早いとほかの植物よりも先に大きくなってしまいます。木であれば、どんどん大きくなって空を覆ってしまうんですね。すると、下にある植物まで光が届くなり、そこにある固有の植物などは成長ができなくなってしまいます。また、落ち葉から化学物質を出して土壌を変えてしまう木などもあるんですね。そうすると、そこには他の植物は発芽できない。あとは、種子をどんどんつくってばらまいて増えていく植物もいます。そこで、そういうものを駆除することによって、本来の小笠原の生態系を取り戻そうという試みも行っています。そういった外来種駆除という活動を、NGOとかNPOに所属して行っていて、ある場所では最近は外来種も少し減ってきたかなと感じています」

少しでもゴミを減らすために海に行ったらゴミを持ち帰って欲しい。

陸で変化が起こっている一方で、海はどうなのでしょう?

「漂着ごみが気になります。外国からとか色々なところから流れてきます。また、ゴミ自体も色々なものがあって、例えばロープ。そのロープや網に、ウミガメが絡まって死んでしまったことも何度かありました。あとは、マイクロプラスチック。魚も食べてしまいますし、そうすると、その魚を大型の魚が食べて、最終的には人間が食べるという悪循環になってしまいますから、人間にもこれから影響があるんじゃないかと思います。何よりもキレイなビーチにゴミがいっぱいあるのは嫌じゃないですか。だから、海に行ったらゴミのひとつでも持って帰ろう、持って帰ってゴミ箱に入れようよというのを、皆さんがやってくれると減ると思います。海に遊びに行ってそのまま帰ってくるのではなくて、人間には2つの手がありますから、両手でひとつずつ持って帰って、近くのゴミ箱に捨てるなり、自分の家まで持って帰って捨てるということを、みんなができるようになると良いと思います」

人生が変わる!?小笠原諸島へぜひ来て体験して欲しい

小笠原諸島について、さまざまなお話をしてくださったMANAさん。そんな小笠原の魅力がたっぷりと詰まった2025年版オリジナルカレンダーが11月中に発売予定だそうです。詳しくは、MANAさんのホームページをチェックしてみてください。

そして、最後に、MANAさんからメッセージを頂きました。

「小笠原には世界に誇れる自然があります。この小笠原は東京都なんですね。東京には世界に誇れる美しい海と豊かな自然があるんです。ですので、皆さん、ぜひ小笠原に遊びにいらしてください。そして、ご自身の目で確かめて、全身で小笠原の豊かな自然を感じてみてください。イルカと一緒に泳ぐと人生が変わっちゃいますよ」

アーカイブ

  • 井植美奈子

    海の環境をおいしく守る「ブルーシーフードガイド」

    井植美奈子

    一般社団法人 セイラーズフォーザシー日本支局 理事長兼CEO

  • 畠山信

    「森づくりは、人づくり」かき漁師・畠山重篤さんの遺志を受け継ぎ未来へ

    畠山信

    牡蠣漁師、森は海の恋人 理事長

  • リサ・ステッグマイヤー

    ハワイの海が教えてくれること~オープン・ウォーターに魅せられて

    リサ・ステッグマイヤー

    タレント

  • 中村英孝

    日本初!「さかな」の専門学校で学ぶ若者たちの未来

    中村英孝

    日本さかな専門学校 学務課長

  • 村山司

    イルカの言語能力を探る旅

    村山司

    東海大学 海洋学部 海洋生物学科 教授

  • 矢澤良輔

    日本の漁業を変える可能性を秘めた“代理親魚技法”

    矢澤良輔

    東京海洋大学 教授