海の家 オーナー

近藤大輔

2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

今回のゲストは、神奈川県葉山町・一色海岸にあるリサイクル資材の海の家「Blue Moon」のオーナーで、サーフライダーファウンデーションジャパンの日本理事・近藤大輔(こんどう だいすけ)さん。生物の多様性にあふれた豊かな海を取り戻すための活動についてお話を伺いました。

竹を活用し、竹から里山再生も行う

リサイクル資材の海の家「Blue Moon」は、自然に配慮した自然環境に優しいつくりになっているそうですが、どういったものなのでしょう?

「地元の里山に入って竹を自ら切り出して、その竹を活用して建築をしています。あとは、ソーラーパネルや風力発電で電力の一部を賄っています」

なぜ木ではなく、竹を活用しているのでしょう?

「理由のひとつは、竹を使うことが環境に良いからです。どういうことなのというと、人の手が入らなくなった山で、竹がどんどん生えてしまって『竹害』が起きているんですね。それを我々は、建築資材として間伐して使うだけではなく、枯れた竹をきれいに整理して里山の再生を行っています」

山のエナジーが海に注いで豊かな海をつくっているため、海を守ることにもつながっていると教えてくださいました。

竹を適切に管理すると「一石三鳥」にもなる!

建築資材として活用できる、里山の再生にもつながる以外にも、竹を管理することでさまざまなメリットがあるとおっしゃっています。

「荒れた竹は、夏場だとスズメバチやヘビの棲み処になるなど、いわゆる人間に害を与えるような生物の棲み処にもなってしまいます。あと、一番いいことが、きれいにすると良いタケノコが収穫できます。また、我々は非常に太い“孟宗竹(もうそうちく)”を使っていますので、ちゃんと竹林を整備していくと良い竹が出てくるんですね。その竹は建築資材としても優秀です。環境が良くなり、食材にもなり、我々は建築資材としても使わせてもらえる一石三鳥です」

さらに、2024年で27周年となる海の家「Blue Moon」では、竹と竹を結束する時にも針金や釘を使わずに「シュロ縄」を使用。シュロ縄だと、バラした後に生物による分解スピードが速いそうで、ごみを出さないような建築の方法にこだわっていると教えてくださいました。

また、一石三鳥とおっしゃっていた竹についても良い循環をつくれているそうです。

「必ず冬山に入って竹を切り出すんですね。湿度が低くて、雨が少ない冬だと、水分含有量の少ない竹となり、建築資材として優れているからです。その竹は、しなやかさと強さと軽さがあります。海の家は海の目の前じゃないですか。ですので、台風が直撃した時も、その竹のしなやかさで自然の力を逃がしてくれるという。そんな竹は、年間300本ぐらい新しいものを取りに山に入っていますが、我々は使い終わった竹も無駄にしないように、全て炭にして耕している畑に使っています。竹は本当に成長が早いので、常に人が手を入れていないと良い竹林にならないんですね。だから、手前みそですけれども、良い竹林にも、里山の再生にもなるし、我々は建築資材としても使えるというサイクルができ上がっています」

海藻を取り戻すための活動も実施

話題は変わって、海の話へ。近藤さんは、サーフィンもされるだけではなく、「潜るし釣るし何でもござれ」とおっしゃっているほど、海のアクティビティを楽しんでいらっしゃいます。そんな中、ライフワークとして取り組んでいることがあるそうです。

「別名『海の砂漠化』と言いますが、沿岸部の海藻群がなくなってしまうことを『磯焼け』と言います。その海藻を取り戻すために、いろんな人たちと力を合わせていますね」

具体的にはどんな活動をされているのでしょう?

「大きく2つあります。ひとつは、食害生物の駆除と堆肥化。ウニやアイゴ、ブダイといった海藻を食べてしまう生き物がいて、本来であれば冬場になると弱ったり活動が遅くなったりして海藻を食べなくなるんですね。ところが、温度が下がらないことによって食べ尽くしちゃう。そのため、ウニが大量繁殖しているんですね。我々は人為的にその増えすぎたウニを駆除して、堆肥化して、それを農業利用しています」

一度の駆除で3万個ほど、軽トラック3~4台分ほどのウニがとれるのだそう。では、もうひとつの取り組みは何なのでしょう?

「海藻の種付けをしています。行政とも連携して行っていて、『種糸』という長いロープに種をつけて海中に沈めています。また、我々は種を放出する海藻は見れば分かるので、それを種袋のようなスポーニングバッグに入れて、潜っていき、海の下に落ちている岩も袋の中に入れて浮かないようにし、色んなところに置くといった種付けをしています。当然そのスポーニングバックは生分解性です」

実はサーファーと漁師は仲が悪い?しかし・・・

そういった活動は、さまざまな方に協力してもらって行っていると教えてくださいました。

「漁師さん、サーファー、堆肥という意味では農家、あとは、ダイバー。また、エビデンスが必要なので、神奈川県立水産技術センターの研究者とも一緒に活動しています。そして、忘れてはいけない私達の町に住んでいる住民の皆さんも、大いに協力してくださっています。ただ、サーファーと漁師は、仲が良いように見えますが、仲が悪いんです。漁の邪魔だといった理由から。その一方で、漁師さんよりも海に入っているのがサーファーなんですよ。だから、サーファーも海中環境の変化にいち早く気づいていて。ですので、これだけ大きな広い海ですから、漁師もサーファーもなんやかんや言わずに地域の海を守ろうよということで、色々とコーディネートして海藻の復活に汗を流しています」

サウジアラビアの紅海で遊んでいた幼少期

そんな海での活動を精力的に行っている近藤さんですが、小さい頃から海に親しんでいたそうでうす。

「アラビア半島とアメリカ大陸の間に“紅海”という海があって、美しい海なんです。潜ると前人未到のサンゴ礁が広がっていて、カメも魚も貝もヘビも何もカニもいましたね。サウジアラビアはイスラム教の聖地なので、女性が肌を出さないといったこともあり、そもそも海水浴というカルチャーがなくて、海が本当に手つかずのところなんですね。その上、赤道直下で雨が1年に2回ぐらいしか降らないんですよ。今プラスチックごみ問題もありますが、陸上から流れ込むものが70%以上なんです。一方で、サウジアラビアは雨が降りませんからゴミが流れ込まない。だから、透明度100mどころじゃないですよ。太陽光線が届くところはずっと見えますね。先の先で大きなサメが泳いでいるのが見えたり、イルカが近づいてくるのがわかったり。僕の今の人間形成にサウジアラビアの紅海は大きな影響を与えていますね」

生物の多様性にあふれた豊かな海を取り戻したい

最後に、海への想いについて伺いました。

「サウジアラビアではサンゴ礁、そして、湘南では美しい海藻がいっぱい、そんな海が大好きです。だから、地球温暖化の影響によって、美しい海がなくなることが僕は許せないし、本能的に見過ごせません。そして、次世代の子どもたちのために豊かな自然を守る。そのためにまずは、生物の多様性にあふれた豊かな海を僕は取り戻したい。このままでは貝も食べられなくなるし、魚も食べられなくなります。ともかく生物多様性を取り戻す、豊かな海を次世代に僕がつなげていきたい。そのために活動を続けていきます」

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