東北大学院生 / ODYSSEY NATURE JAPAN代表

成澤みく

2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

今回のゲストは、宮城県東松島市の海や里を舞台に子どもたちに環境教育を教える一般社団法人「ODYSSEY(オデッセイ)」の代表、そして、東北大学大学院で海洋環境人類学を研究されている成澤(なりさわ)みくさん。専門とされている海と人とがどう社会に関わるかについて、また、昨年出席されたCOP28についてお話を伺いました。

東日本大震災とフランス留学などが今につながっている

ODYSSEYでの活動、そして、東北大学大学院での研究は、どちらも人と海に関わるものです。まずは、こういった活動や研究に至るまでにどんなキッカケがあったのか教えていただきました。

「大きく2つのキッカケが関わっていて、ひとつは小学6年生の時に経験した東日本大震災です。地元の東松島、自宅、そして、友達の存在も含め、海というのは時に人の命を奪ってしまう。生きるって何だろうということ、その価値というものを海から教えてもらいました。もうひとつは、高校時代のフランス留学や、大学時代から東松山市に戻って気づいたことです。フランス留学では、難民の方々が、海を命がけで越えて国に渡っていくといったお話も実際に聞いて、文化だったり、その国によっては海の捉え方というのは変わったりしますが、海に対してどういった役割があるのか、海は常に平和的存在じゃないんだというのを考えさせられましたね。フランスから帰ってきたあとは、ハワイ大学で平和紛争解決学や自然教育を学びました。そして、新型コロナウイルスの影響があって6、7年ぶりに東松島市に帰ったら、震災前には気づかなかった自然の広大さ、地元に素晴らしい自然があることに気づきました。さらに、地元の漁師さんたちの存在が大きくて、今は鮭がとれなかったり、牡蠣があまり育たないという海になって、気候変動だったり、環境問題だったりが私たちの前にはありますが、そういったところで将来を見据えた時に、子どもたちが自ら考えて向き合ってほしいなと思ってODYSSEYをつくりました」

ODYSSEYで知った子どもたちに教える上で大事なこと

ODYSSEYにはどんな子どもたちがいるのか伺ってみると

「下は4歳から預かっています。一番上は小学6年生で、その子どもたちが混ざり合って活動していくプログラムもあったり、上の子が勝手に下の子の面倒を見てくれたり、子どもたち同士でのコミュニケーションはすごい大事だなと思っています。その上で、私も含めて大人側が、どれだけ子どもたちの考えや意見を最大限に認めて肯定してあげられるかが、子どもたちの自信ややる気につながっているなと思いますね」

東松島の海苔漁師が研究対象

大学では海洋環境人類学を勉強されているとのことですが、どんな内容なのでしょう?

「簡単に言うと、海と人がどのように関わり合って社会を構築しているか、自然との関係性を築き上げているのかです。人類学なので、漁師さんが海をどう捉えているかだったり、逆に自然を中心と見た時に、どういった関わり方しなくてはいけないのか、海に対してどんな正しい行動をしなきゃいけないのかなどを研究しています」

現在は、このKnow The Seaにも出演してくださったアイザワ水産代表で海苔漁師の相澤太(あいざわ ふとし)さんを研究しているそうです。

「相澤さんは、皇室献上の海苔を生産された経験もある漁師さんですが、漁師としての枠組みを超えて社会で活躍・活動されている。その漁師さん達が、なぜ海をそんなに大事にするのかだったり、海に対しての責任であったりを研究しようとしています。去年からは、パラオでの海藻養殖のプロジェクトで一緒に活動させていただいてまして、相澤さんの生き方や生き様から、私たち陸に住む人は学ばなくてはいけないことがたくさんあると思うので、そういったこともどんどん研究していきたいと思います」

パラオ側で出席したCOP28

そのパラオ共和国では、2023年に政府海洋環境アドバイザーとして、「国連気候変動枠組条約締約国会議」の28回目の会議である「COP28」に出席された成澤さん。パラオ側として提言されたことについて、教えてくださいました。

「ドバイで行われたCOP28では、パラオ共和国の代表の方々に同行し、パラオ側として出席しました。私は、島国として20年後30年後を見据えたときに、地理的条件、政治的、そして、外交にとらわれずに海を大事にするためにはどうすればいいのか、資源活用や水産資源などをどう見ていけばいいのかを代表の方々と一緒に話しました。また、パラオ共和国だけに限らず、マーシャル諸島やフィジー、オセアニア地域に存在している島国が、どれだけ普段から海と向き合って生活しているか。その島国の人たちから見れば、自分たちが持っている海は、祖先の方々が大事に受け継いでくれた宝物と思っていますが、そういった海を世界規模でどのように大事にしていけばいいのかについて、これからはもう少し存在感を見せなくてはいけません。ですので、今年のCOP29では、他のオセアニアの地域の方々とも、そういったところで動くと思います」

同じ島国・日本はパラオから何を学ぶべきか

COP28での活動もされている中、日本がパラオから学ぶことについて伺ってみると

「パラオの方々の海との関わり方からたくさん学べることはあると思っています。ひとつ例を挙げると、パラオの方々は“コミュニティ”をすごく大事にされていて、自分たちの地域の海をみんなで良くしよう、資源などをみんなで平等に活用していこうといった動きがあります。そういったコミュニティの力をパラオの方々から教えてもらいました」

海洋環境を守るために大事なのは「知ること」

最後に、海洋環境を守るために、資源を活用していくために大事なことについて伺いました。

「今はアカデミアと子どもたちへの教育といったところで活動していますが、その中で私が一番大事だなと思う点は、今の海の状況を知るということだと思います。私が海洋研究を始める前は、ハワイで気候変動や環境問題など色々と学んでいました。そして、実際に研究を始めていくと、数字などを見るようになって、『本当にこんなに海が悪くなっているんだ』と思いました。また、海洋環境の問題について、生業として携わっている漁師さんたちの声を聞いていくと、『これ以上海が悪くなったらどうなるんだろう』といった恐怖感も覚えてくるようになったんです。だから、もっと多くの方が、今の海の現状を知るための行動をとることが大事だと思っています」

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