2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回のゲストは、宮城県東松島市大曲浜の海苔漁師、アイザワ水産の相澤太(あいざわ ふとし)さん。海苔に現れる海の環境、そして、世界で行っている海苔養殖についてお話を伺いました。

海苔の養殖ってどうやるの?
私達が普段から食べている海苔はどうやってつくられるのでしょう? まずは、海苔養殖を行っている相澤さんに、海苔の養殖方法を教えていただきました。
「まず海苔の胞子からつくり、それを顕微鏡を使いながら、海苔の網に種をつける『種付け』を行います。次の工程が『育苗』。人間で言ったら赤ちゃんの時期なんですが、顕微鏡を使って、どういう風に細胞分裂しているなど細部まで把握しつつ、しっかり育てていきます」
環境の変化が如実に現れる海苔
細胞レベルからつくられる海苔。相澤さんがつくり、育て上げた海苔はどんなお味なのでしょう?
「僕が目指している、特徴にしているのは、海っぽさとか自然っぽさ。やはり毎年、自然という環境は違うので、その年の最もいい形になればと。だから、別に不味くてもいいという感覚で。ナチュラルであってほしいというのをイチバンに思ってやっています」
毎年、味が変わるそうで、また、生産者によっても変わるとのことで「育てる人の癖がものすごい出る」とおっしゃっています。ちなみに、相澤さんの海苔は「ヤンチャ」と言われるそうですよ。
東日本大震災で起こった海の変化とは?
宮城県東松島市大曲浜で海苔漁師をしている相澤さんは、2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けました。海苔の養殖場はもちろん、船も家も流されてしまったそうです。その震災の後の海はどうなったのでしょう?
「大津波があった後、海がものすごく活性化しました。考えてみれば、津波とか地震は、地球にとって当たり前な活動なんです。僕は『地球の瞬き』という風に捉えていて。海底に蓄積された泥だったりが、一気に流されたり、かき混ぜられたりする。大津波の1週間後ぐらいに海に出ましたが、ものすごいキラキラしていて、小魚もたくさんいたんですよね。自然が循環されて活性化されていると実感しました」
環境の末端である海が急速に悪くなっている
現在の海の状態はどうなのでしょう? 伺ってみると
「海は『環境の末端』といつも言っていますが、海は絶対に人がどうこうできるものではなく、栄養をそこにとどめることもできないし、流れを変えることもできない。だから、ありのままの自然の形が最終的に海に出てきます。そのため、日本中、世界中の海を見れば、今の環境がすごくわかる。それを捉えてみると、ものすごい勢いで悪くなっています」
海苔の生産量は今や半分以下!海が痩せている
海の環境の悪化は、海苔にも影響を与えているとおっしゃっています。相澤さんが海苔漁師を始めた26年前は、全国で120億枚ほどの海苔が生産されていたそうです。しかし、去年と今年は50億枚ほど。相澤さんは「海が痩せている」とおっしゃっています。
「『海が痩せている』というのは、全て大地から来ています。山が豊かじゃないと豊かな海にはならない。だから、山と大地と海のバランスがものすごくおかしくなっています」
影響は生産量だけではなく、海苔自体の味にも及んでいるそうで
「海に栄養がないと『色落ち』という現象が起こります。海苔の見た目は黒くなきゃいけないのですが、茶色くなってしまうんですよね。窒素とかリンとかカリウムが足りないと色が出なくて。それがもう見た目通り、味もおいしくないんですよね。旨味成分がどんどんなくなっているんです」
ただ、色落ちした海苔を、相澤さんはおいしく加工しないとおっしゃっています。
「僕はおいしい、おいしくないの順番を絶対つけたくなくて。味を付ければ、おいしいと言う人はいるかもしれません。けれども、そのおいしさは本物じゃない。僕はそういうことは絶対せずに、色が落ちようが、去年より不味かろうが、それをダイレクトに伝えます。食べる人達も、今の環境をありのままにいただくのが大事だと思っています。そこは多分、生産者も食べる側も歩み寄らなきゃいけない部分だと思うんですよね。だから、そういうのを人と人との交流によって構築していくことを僕はやっています」
海苔養殖は海の環境に対してプラスに働く
そんな相澤さんの活動のひとつに「海苔サミット」があります。全国の海苔漁師さん達が集まって、海洋環境に向き合い、意見交換をする場を毎年開催しています。
「毎年150名ほどの海苔漁師が集まります。今回は3分の1ぐらいの規模にして東京で開催し、環境に特化した話をしました」
その海苔サミットで取り上げられたテーマのひとつが「海苔養殖が海に対してどのような貢献があるのか」。一体どんな内容だったのでしょう?
「藻類とかシアノバクテリアといった海の生き物たちが、大気圏をつくったり、地球の環境をつくったりするキッカケになっています。ただ、今、その海藻がどんどん減っているんですよ。海で海藻養殖することによって、炭素を固定して酸素を生み出す役割を果たしているという結果も出ているので、僕らは海苔養殖をしっかりやっていかなきゃいけないという内容です」
そのほかにも、海苔などの海藻は、魚の餌だったり、魚の卵を産む場所だったりと食物連鎖にとって大事な生き物となっているそうです。
「海藻で世界を平和にしたい」を叶えるためパラオへ
相澤さんはパラオでも活動されています。フィリピンの東、日本の真南に位置するパラオという国で何をされているのでしょう?
「僕はもともと、海藻が地球環境・海洋環境に与える役割がすごく大きいと考えていて、『海藻で世界を平和にしたい』と思っています。そこで、海外で海藻養殖を行うチャンスがパラオでありまして。ただ、海藻養殖を行うにしても、押し付けるわけじゃなくて、ちゃんとそのコミュニティであったり、環境だったりをしっかり考える。そうして世界中で海藻養殖をやっていけば、いま言われているカーボンニュートラルだったり、ブルーカーボンだったりに相当貢献できるなと考えています」
パラオというと、海がキレイで豊かなイメージがありますが、海の環境破壊が進んでいるのでしょうか?
「パラオは海をしっかり守っています。ただ、守っているだけでは、資本に負けちゃうんですよ。だから、国としても資本を生み出さなきゃいけない。そういう時にこそ、今の環境を守ることによって資本を創出する。それが海藻やカーボンクレジットにつながるので、そこをどんどんやっていきたい。自分の技術とか知見でそういうことができればと思って、今やっています」
相澤さんは「現地のものと現地の種と現地の環境を活用する」というモットーがあり、パラオでも現場に行って、種を見つけて、現場のものを使って施設をつくって、養殖を行っているそうです。そして、現地の人たちには、さまざまなレクチャーをしたとおっしゃっています。
「海藻を見つけて、その海藻を見せて、『こうやって胞子を取るんだよ』といったことをしっかり伝えました。あとは、現地の人がやりたいかどうかがすごく大事なので、海藻養殖をすることによって、環境や経済がどうなるかというのもしっかりと話しました」
その結果、現地の人たちのリアクションは「親指を立ててました」とのことです。
後世に豊かな自然を残していきたい
最後に、今後はどんな想いを持って活動していくのか伺いました。
「これからも今の環境を伝えるために、食べることから自然を感じられるものを伝えていきたいです。それと、未来で豊かな食生活が平等にできるようにしていきたい。だから、自然を豊かにして、いつでも誰でもどこでもつくれる・食べられるを残していくための活動を、今後もしていきたいと思います」






