2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回のゲストは、東京・渋谷にある「かつお食堂」の店主・永松真依(ながまつ まい)さん。鰹節への愛と鰹節を通して伝える海のメッセージについて伺いました。

メインが鰹節という異色の食堂
お店は連日大行列で、なんとミシュランガイド東京で3年連続ビブグルマンに掲載されている「かつお食堂」。どんなメニューを提供しているのでしょうか?
「メインは鰹節になります。その場で手で削った鰹節が乗ったご飯、一番出汁のお味噌汁、あとはちょっとしたおかずというシンプルな形です。鰹節はおひとり様ずつ削っております。鰹節のイチバンの楽しみ方は削りたて。これに勝るものはないなと思って、シンプルにしています」
ちなみに、もともと鰹節は魚の“かつお”からつくられるので、その文字を取って「かつお食堂」としたそうです。そんなお店は世界中からお客さんがいらっしゃっているとのこと。


昔はパリピだった!鰹節にハマったキッカケは?
「かつおちゃん」という愛称もあるほど鰹節ラバーな永松さんが、鰹節を好きになったキッカケについて伺ってみると
「キッカケは今から12年前、私が24~5歳の時。それまでは夜遊びが大好きで。その中で、福岡の祖母の家に帰った時、おばあちゃんがいきなり戸棚から鰹節を削る箱を取り出して、『これは亡くなったおじいちゃんが結婚した時におばあちゃんにくれたんだよ』と教えてくれて。そこから削ってもらったら、今までの鰹節とは全然違って。その時の鰹節の香り、おいしさがもう格別過ぎちゃって。その味もそうなんですけど、何よりもおばあちゃんの削る姿がステキで。今までやりたいことは何もなかったのに、同じ女性として私も年を重ねた先でこういうステキな人になりたいなと思ったんです。それで東京に帰ってきてからも、私生活の中で鰹節を削ってというのが始まりです」

自ら「回遊」と言うほど!のめり込んだら止まらない
鰹節にハマった後はどんなアクションをしたのでしょう?
「私は自分の動きを、動き続けるカツオの回遊と同じく、『回遊』と言ってるんですけど、現場に行ってみなきゃ駄目だと思って即行動しました。まずは東京から近くて行きやすい場所を検索したところ、静岡県の西伊豆の田子(たご)という地域があって、そこで昔ながらの製法でつくっているという方を見つけて。そこに電話してアポイントをとらせていただいて行きました。それが鰹節を好きになった2か月後とかの話なんです。もう思い立ったらすぐ行動に移したい。だから、見切り発車の部分がかなり多いんですけれども、自分で疑問に思ったことは自分の目で確かめたいし、自分で知りたいという性格もあって田子にすぐに行きましたね」
田子では鰹節の歴史・文化まで説明してくださったそうです。その結果、色んな地域へ行ってみたいと思ったとのこと。そこで、「回遊」する永松さんはまたすぐに行動したとおっしゃっています。
「カツオは太平洋側を泳いでいくお魚なので、太平洋側全域にカツオと鰹節にまつわる文化が残っているんですよ。ですので、太平洋側沿いを全部回ろうと勢いで旅を始めて。南は石垣島から北は宮城県気仙沼まで。カツオとか鰹節の情報をゲットしたら自分で回って、さらにリピートもして。同じ職人さんのところに行かせてもらうのでも、例えば3年前にその現場に行って自分が感じたことと今は違う。自分もアップデートされているので、今の自分が行って感じること、見る目線も変わってくるので、何回も繰り返し同じところへ行かせていただいています」
今は産地よりも「誰がつくるのか」で変わる鰹節
日本の鰹節の95%以上をつくっているのは、鹿児島県と静岡県だそう。そんな鰹節の違いについて伺ってみると
「今はつくる人によって全然違います。例えば鹿児島県でも枕崎市と指宿市が鰹節をつくっている名産地なんですよ。そこの2つの地域の中でも、つくっている人によって全然違います。鰹節と言ってもたくさん種類がありまして、例えば、手で削るような鰹節だったり、あるいは出汁パックとかになるような鰹節だったり、あとは袋詰めの鰹節だったりと、何の鰹節かというのでも違うんですよ。そうすると値段も変わってくるし、仕入れるかつおも変わってくるし、今は工場ごとに鰹節の考えがあって味わいが違いますね」
世界で最も硬い食べ物「本枯節」のお味は!?
そんな鰹節の伝道師・永松さんに、目の前で鰹節を削っていただきました。鰹節は、鹿児島県枕崎市の金七商店の「本枯節」だそう。
「本枯節は世界で一番硬い食べ物とも言われています。その特徴としてはカビを付けることで、カツオの身の中の水分を吸い上げる。さらに、脂肪を分解してアミノ酸に変える、つまり旨味とかに変えてくれるんですね。それを何回も繰り返したものがこの本枯節です」
その本枯節を削ってもらうと、削るたびにイイ香りがしてきて、木のように硬かったものが削り節だとフワフワに。そのお味は、ほかの鰹節に比べるとダイナミックで、甘みが口の中に広がるそうです。ちなみに、ヒレ酒みたいにして楽しむのも、旨味がじわじわと出てきてオススメだと教えてくださいました。



カツオと海を守るために「伝える」
鰹節のもととなるカツオの漁獲量は減っているそうで、「海がものすごい変化している」と感じている永松さん。そこで、カツオや海を守るための活動について伺ってみると
「もちろん海の清掃活動とかはすごく大事なことだと思うんですけど、私は『意識』が大事だと思っています。お客様にカツオの話とかもさせていただくんですよ、この問題はみんなに関係することなんですよね。例えば、スーパーの魚が高くなった。なぜ高くなったのかというと魚がいないから。だから全て自分たちに返ってくることだし、どこかでつながっている。私たち一人ひとりがどうするかで、海の環境もそうだし、この先の未来も変わってくるし、そういう意識をみんなが持っていかないといけないと思います。そこで、私は日々のお店で削りながらお伝えさせていただくのと、あとはSNSとかを通して、みんなこの地球で一緒に生きているといったメッセージをアップしています。そのほかにも、海が好きな人達とつながって、いろんな活動をしていけたらなと思っています。私は鰹節ですけど、畑をやっている友達とか、林業の方とかいろんな友達が全国にいるので、そういう人達とも日頃からやり取りして、いずれはそういうのをひとつの映像に残していきたいです。そこから鰹節を削って食べることにつなげていけたらいいなとは思っています」
「海を守る」はどこか限定した地域でなく、つながっている世界中の問題
ロタの海の素晴らしさを語って頂きましたが、そういった海を守るには世界全体で取り組む必要があるとおっしゃっています。
「やっぱり海は全て繋がっているので。今日ハワイの話をしていますが、ハワイは環境に対して州も色んな条例をつくって守っています。でも、ハワイの海は日本の海とつながっていますので、結局日本が今までと同じようなやり方をしていると、ハワイの海もキレイにならない。だから、ひとつの地域の問題ではなくて、世界中の問題だとすごく感じますよね」
鰹節を削ることは「宝箱」
最後に、永松さんに夢について伺いました。
「鰹節は海の魚からつくられていますし、道具は木でできているので山の恵み、刃の部分は鉄でつくられ、鍛えられているので、本当に自然ででき上がっている。この道具を使って削るということは、毎日削りも変わるんですよ。こういったことが私は自然だなと思っています。そして、この鰹節を削るというシンプルな行為は、日本の文化・歴史だったり、自然を感じたり、食育に繋がる大事な愛情になったりとか、すごく大事なメッセージがいっぱい詰まっている宝箱だなと思っていて。だから私は、『鰹節道』という名前を付けてるんですけど、そのたくさんの宝物が詰まっている鰹節を削る道というのを、ひとつの文化としてつくっていきたいなと思って、今その道中です」









