2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回のゲストは、「日本カブトガニを守る会」福岡支部 支部長で、自称「曽根干潟の案内人」の高橋俊吾(たかはし しゅんご)さん。干潟とカブトガニについてお話を伺いました。

「干潟」はどんなところ?
リモートでお話を伺った高橋さんの背景に広がっているのは、福岡県北九州市にある大きな干潟「曾根干潟(そねひがた)」。その広さは517万平方メートルで、サッカーのコートだとなんと724面ほどあるそうです。そもそも干潟とはどんなところなのでしょう?
「海は1日に2回、潮が満ちたり引いたりします。干潟というのは、潮が引いた時に現れる泥と砂の世界です。つまり、潮が満ちている時は海の底、潮が引いたら陸地になる場所です」
「曾根干潟」は多様性が特徴
そんな干潟に高橋さんが興味を持ったキッカケは何だったのでしょう?
「当時、小学校の教員でして、干潟に一番近い学校に着任をしました。その学校が理科の研究校でして、教材開発をするのに曽根干潟が身近にあったので、研究主任として曽根干潟の教材化とか環境教育の基盤づくりというようなことをやりました。例えば、干潟の野鳥観察、子どもたち発で曽根干潟クリーン作戦、どろんこ集会といった取り組みを始めたのがキッカケですね」
子ども達に教えるためにカブトガニに出会い直した
カブトガニとの出会いも曾根干潟かと思いきや、瀬戸内海の島で生まれ育った高橋さんは、子どもの時に出会っていたとおっしゃっています。ただ、教員時代、国語の教科書に「カブトガニを守る」という説明文があり、それを子ども達に教えるために曾根干潟でカブトガニと出会い直したとのことです。そんなカブトガニはどんな生物なのか教えていただきました。
「カブトガニはフライパンをひっくり返したような形状をしていて、名前に“カニ”が付いていますけれども、どちらかと言うとクモとかサソリに近い種類です。ただ、海の生き物ですから、エラで呼吸をします。また、生態としては、波打ち際の砂の中に卵を産んで、50日ほどで孵化、子どもが十数回ほど脱皮をします。そして、10年あまりで大人になると。ちなみに、生まれてすぐは“三葉虫”に非常によく似ていますが、一回脱皮をすると、大人とほぼ同じ形になります」
「生きた化石」と呼ばれるカブトガニは年々減少
地球上に現れたのは、はるか昔の4億5,000万年ほど前と言われ、恐竜が生きていた2億年ぐらい前には今とほとんど同じ形だったというカブトガニは、「生きた化石」と呼ばれています。しかし、そんな貴重な生き物にも関わらず、絶滅危惧種となっているそうです。
「60年ほど前までは、瀬戸内海でも大阪湾ぐらいまで生息していたらしいです。ただ、カブトガニが生息する干潟を埋め立てたり、沿岸開発であったり、水質悪化の影響などで激減してしまったと。ですから、絶滅危惧種となっています」
曾根干潟でも海洋ごみ問題の深刻化を感じる
カブトガニの減少については、曾根干潟でも過去に2度ほど原因不明の大量死を経験しているそうです。ただ、そういった減少もありつつ増えてもいるため、国内でもトップクラスの産卵・生息場所となっているとのこと。その曾根干潟に関わり続けて30年以上の高橋さんに、干潟で起こっている環境の変化について伺いました。
「近年、特に海洋ごみ問題は注目されていますが、毎日のように海に行っていると、その問題が非常に深刻だとよくわかります。何も対策をしないと2050年には、とれる魚よりもプラスチックごみの方が多くなってしまうと言われていますが、本当にそうなるのではと実感しています。気候変動の影響だと思うんですけども、豪雨などが頻発するようになってくると、河川からの流入ごみが大量に押し寄せてきますし、30年前と比べても、海洋ごみが生き物に影響を与えているという深刻さを感じています」
「プチ無人島体験」も!自称「曾根干潟の案内人」としての活動
そんな干潟を守るために、高橋さんは自称「曾根干潟の案内人」として活動をされています。具体的にはどんなことをされているのでしょう?
「干潟は色んな生き物がたくさんいる場所ですが、安全上の問題などがあって、経験のない人や個人での観察は難しいです。そこで、自然観察のガイド、自然と人の関わりといった部分でのガイドなどを行っています。例えば、沖合に島がありますが、地質的な景観があったり、古墳や海岸に江戸時代の石切場の跡があったりと、非常に面白いフィールドなのでガイドをしています。また、その島は潮が引くと歩いていけるのですが、潮が満ちてくると無人島になります。そこで、敢えてその時間帯を選んで案内をして『潮が満ちて帰れなくなりました。無人島です』といったプチ無人島体験をするプログラムも行っています」
参加した人から「貴重な体験ができた」との声をいただくそうで、高橋さんのガイドに大満足している様子です。
「日本カブトガニを守る会」はカブトガニだけを守るわけではない
一方で、「日本カブトガニを守る会」の支部長としては、どんな活動をしているのかも伺ってみると
「カブトガニを守る会と言うと、カブトガニだけを守るかのようなイメージを持たれるかもしれませんが、カブトガニが生息するためには、産卵する砂浜も、小さいカブトガニが生息する泥干潟も、少し成長したカブトガニにはアマモ場もないといけません。キレイで穏やかな海も必要です。ですので、『カブトガニの棲む海を未来に残す』を合言葉に、『できる人ができる時にできることを』というのをモットーにしながら、産卵の調査、カブトガニの子どもの調査などを行っています。そして、わかったことをもとにして、産卵観察会や小学校での出張授業、カブトガニ講座のほか、イベントに出展をしての啓発活動も行っています。また、保全保護の活動では、地域住民の方々と連携しながら海洋ごみの回収や産卵場の整備をしています」
会員には、行政や公共施設の職員、大学の研究者のほか、観察会に参加をした際「非常に感動したのでぜひ入りたい」という方がいらっしゃるそうですよ。ちなみに、年会費は1,000円でどなたでも入会できるとのことです。
曾根干潟を「世界の宝」としたい!
そんなカブトガニの魅力について「フォルムがカッコイイ」、「産卵調査をしていると、同じ“つがい”が何度か来るし、脱皮して大きくなっていく姿を見ると、ここまで大きくなったのかと愛おしくなるんです」と教えてくださった高橋さんに、今後の目標や夢について伺いました。
「これ以上は生息環境が悪くならないようにしたい。なんとか絶滅をさせないで、次の世代の子ども達が、生きたカブトガニを見ることができるように残していくというのが、自分達の使命だと考えています。それから、その生息場所である干潟は、生物多様性の恵みを色々もたらしてくれていますし、ブルーカーボンや水質浄化の役割も果たしています。ですので、『干潟は人間にとっても非常に大事な場所だよ』という重要性を、より多くの市民に伝えながら理解してもらう。そして、『曾根干潟はふるさとの宝だよね。いや、日本の、世界の宝だよね』という形で未来に残していけたらなと思っています」






