バーチャルオーシャンプロジェクト

鈴木則寿

2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

今回のゲストは、「バーチャルオーシャンプロジェクト(Virtual Ocean Project)」の鈴木則寿(すずき のりひさ)さん。最新技術で誰でも体験できる海についてお話を伺いました。

何の制約もなく海を体験できる!

まずは、鈴木さんが携わっている「バーチャルオーシャンプロジェクト」とは、一体どんなプロジェクトなのかを教えていただきました。

「バーチャルオーシャンは『バーチャルリアリティー』と『オーシャン』を組み合わせた造語です。プロジェクトの内容は、VRゴーグルや最新の配信技術を使って、仮想空間につくり出した海をみんなに体験してもらおうというもので、時間とか場所とか年齢とかハンディキャップとかに関係なく、すべての方に海体験の機会をつくるプロジェクトになっています」

水族館、学校、院内学級などどこでも海体験!

プログラムは25分ほどで、「海を体験する、楽しむ」と「海の問題を知る」という2つのパートの体験がメインコンテンツとのことです。そして、仮想空間での海体験なので、さまざまな場所で実施されているそうで

「東京のスタジオをメインの拠点として、全国各地に配信をして体験してもらっています。例えば、沖縄美ら海水族館、東京のすみだ水族館、あとは大阪の学校など、場所を選ばず、色々なところで行っています。小学校で開催する時には、25分のプログラムのあとに、VRゴーグルを使って生徒さん一人ひとりに海への埋没感を味わってもらうこともあります。その中でも力を入れているのが、院内学級です。長期入院などで学校に行けない子ども達のために病院の中に学校があるのですが、そういった院内学級に協力してもらって、ベッドからなかなか出れないような子どもにも、25分間のプログラムとVRゴーグルをつけての海体験をしてもらっています」

体験後は生き生きとして海に関心を持つ!

VRゴーグルをつけての海体験は、サンゴ礁だったり、色とりどりの魚ががいたり、さらには目の前をウミガメが通ることも。そして、上を向くと水面がキラキラしていたりと、正に海の中そのものとなっています。「何も加工していない撮影映像なので、海の力を体で感じられると思います」とおっしゃる鈴木さんは、そんな海体験をした子ども達のリアクションを見ると、プロジェクトのやりがいを感じるそうです。

「水族館や学校で実施すると、海を体験できたというすごく良いリアクションがあります。院内学級の場合は、普段は人と接すること機会も少ないので、恥ずかしがる子も多いんですね。ただ、VRゴーグルで本当に自分が海に入ってるような体験をした時、体が自然に動くこともありますし、ゴーグルを外した後は本当に目が違っていて、生き生きとしているんです!そういうのを見ると自分が携わっていて幸せだなと思います。また、『海に関わる仕事をしてみたい』という子どもがいたり、海洋ごみ問題や温暖化といった問題に触れたことで、『自分でもちょっと調べてみたい』とか『学校で聞いてみたい』とか、そういったリアクションをするお子さんたちもいて、やって良かったなという風に感じますね」

海の問題への意識を高める構成やキャラクター

バーチャルオーシャンプロジェクトでは、プラスチックなどの海洋ごみ、酸性化、海水温の上昇といったさまざまな海洋問題にも取り組んでいるとおっしゃっています。その際、例えば、「ウミガメが卵の中で成長している時に、周りの砂の温度で生まれてくるウミガメのあるものが決まります。それは何でしょう?1番、体の大きさ。2番、体の模様。3番、性別」といったように、クイズ形式で分かりやすく噛み砕いて説明しているとのことです。ちなみに、この問題の正解は「3番の性別」。オーストラリアのある島で生まれたウミガメの99%以上が雌だったという報告があるそうですよ。また、クイズだけではなく、バーチャルだからこその工夫も行っていると教えてくださいました。

「バーチャルオーシャンプロジェクトのメインMCは、ジンベエザメのブッチくんという3Dキャラクターが担当しています。人間だと、いくら優しく説明しても飽きられてしまうのですが、キャラクターが進行・説明することで、最後までちゃんと聞いてくれて、少しでも問題意識が残っていると感じるので、これもこのプログラムの利点のひとつだと思います。また、ウミガメとの出会いといった海の素晴らしさと、クイズによる海の問題を交互にプログラムしてもいます」

プロジェクトを通して日常から海洋問題を考えるように

鈴木さん自身もプロジェクトを通して、海の問題への気づきがあったとおっしゃっています。

「プログラムを更新する時に、海洋ごみや温暖化など色んなことを調べますが、時々はっとすることがあります。例えば、海洋プラスチックが問題になっていますけれども、海にプラスチックを放り込んでいる人はいないと思うんですよ。ただ、公園でペットボトルを捨てようとした時、ごみ箱がいっぱいだという場合、そのごみ箱のすぐ横にペットボトルを置いて行ってしまうといったことはあると思うんですね。僕もしてしまっていたんですけど。でも、調べていると、そういったごみは、雨や風で少しずつ移動して、川に流れつき、最後は海に漂着して、それが海洋プラスチックになっていると。そういったごみが年間何万トンもあるという記事を読むと、本当に身近なところから始まってるんだな、その原因のひとりなんだなと。だから、やっぱりごみはきちんと捨てようとか、分別して捨てようとか、そういったことを日常から考えるようになりました」

少しでも多くの人に海の素晴らしさと問題を知って欲しい!

最後に、鈴木さんに今後の夢について伺いました。

「院内学級での実施もそうですが、普段海に接することのない人など、少しでも多くの人に海の素晴らしさ、海で起きている問題を知ってもらう。そのためにも、このプロジェクトは継続していきたいです。このプログラムは、いつでもどこでもできるものなので、ひとりでも多くの方に接してもらい、ほんのちょっとでも意識に変化が生まれてくれれば。例えば、エコバッグを持ち歩くとか、ごみはしっかり分別するとか、電気をこまめに消すとかをちょっとでもしてくれれば、温暖化も防げると思います」

プログラムの詳細やスケジュールなどは、バーチャルオーシャンプロジェクト(テキストリンク:https://www.virtualocean.jp/)のHPをチェックしてみてください。

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