2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回のゲストは、浜名湖でアマモの再生に取り組む漁師の徳増隆二(とくます りゅうじ)さん。海とつながる浜名湖で起きている異変、そして取り組みについて伺いました。

浜名湖の名物・アサリが激減!
徳増さんは10年ほど前から浜名湖の生態系に異常事態が起きていると感じて調査を始めたそう。その異変とは一体どんなことだったのでしょう?
「まず、浜名湖の主要漁獲物であるアサリがどんどん減少。その状況の中で、比例してアマモがだんだん無くなっていったんです。我々漁業者は、アマモが繁茂している場所とイコールなのが、アサリ・ウナギ・エビの漁場というのをよく知っていました。つまり、アマモが無くなるとアサリがどんどん減ってくると。昔はその1年で獲れなくても、次の年には4~5倍も漁獲できていたんです。ただ、それが期待できないのではないかと危機感を持ちました。気候変動といったことも考慮しつつ、何かしらの手を打たなくてはいけないと思ったのが活動の始まりです」
生き物の住処で隠れ家でブルーカーボンにも貢献する“アマモ”
アマモの減少がアサリなどに大きな影響を与えているとおっしゃいます。そのアマモはさまざまな役割を担っていると教えてくださいました。
「コンブやワカメは海藻ですが、アマモは“海草”で植物です。植物が塩分も混ざるような海域に生息するというのは非常に珍しくて、日本では17種類が知られています。その中で、アマモが非常に重要な役割をしているというのが最近わかってきました。アサリに関しては産卵の場となっています。産卵の時に、“足糸(そくし)”という糸を、スパイダーマンのように出してアマモ場の茎にくっつける。それで自分の体を流されないように固定します。また、餌をとる食事の場でもあります。さらに、エビやアサリは食害に弱いので、アマモ場に逃げて身を隠したりもします。そして、ウナギに関しては、鳥に弱くて食べられますので、昼間はアマモ場に潜って身を隠します。こういったことが非常に重要でした。そのほかにも、浜松市はゼロカーボンシティを3年ほど前に宣言していますが、アマモはブルーカーボンの一端を担っていて世界レベルでも注目されています」
日本財団の支援を得て一大プロジェクトがスタート!
そのアマモが群生するアマモ場を取り戻すために、2023年から日本財団「海と日本プロジェクト」の一環で「浜名湖ワンダーレイク・プロジェクト」がスタート。このプロジェクトは、豊かな海づくりとともに、今の海の現状を広く知ってもらい、昔あったような豊かなアマモ場、草原のようなアマモ場を取り戻していくというものだそう。徳増さんによると「8年ほど前までは実費で行っていて大変だった」とのことですが、日本財団の支援により大きく動き出せたそうです。そんな「浜名湖ワンダーレイク・プロジェクト」では、アマモを増やすための研究も行っているそうです。
「静岡大学の理学部と農学部に協力を要請しまして、共同研究を行っています。まずは、これからひどくなるであろう温暖化に対抗できるようなアマモを育てなくてはいけません。そうしないと再生が難しいと思っていますので。そこで、3種類のアマモの種を受粉させる研究をしています。1つは、幾多の困難を経て残った浜名湖のアマモの種。これを基本としています。ほかの2つは、水温上昇の影響を受けやすい潮の速い場所や水深が浅い場所のアマモの種、そして、深いところは光合成が弱くなるので、それに対抗できるアマモの種。この3種を、同じ水槽に入れて花粉を飛ばし合って受粉させる。これで温暖化に対抗できる種をいま育成していて、実際に育っています」
場所によって生態系を変えるアマモ
研究で3種類のアマモの種を活用しているように、同じアマモでも違った特性を持つものがいるとのことです。一体どんな特性なのでしょう?
「アマモには“一年草”と“多年草”があります。奥浜の潮のゆるい、やや深いところでは一年草のアマモが生えています。南の方は多年草のアマモが生えていて、地下茎を四方八方に伸ばして増えていくタイプです。奥の方だと1本ずつ種だけで増えるタイプとなり、このように自分を変えるんです。DNAは一緒なのですが、場所で生態系を変えます」
アマモはその地域の海のユニフォーム!
もともと浜名湖には、800ヘクタール以上のアマモ場があったと言います。ただ、年々減少し、さらに7年前には、台風24号によってわずか0.1ヘクタールほどになってしまったそう。しかし、研究を行いながら、残ったアマモから取った種を育てて海に植えるなどの取り組みをみんなで行った結果、今では数十ヘクタールぐらいに増えたと教えてくださいました。そういった活動をされている徳増さんに、最後にどんな浜名湖を次の世代に残していきたいかを伺いました。
「アマモは浜名湖のユニフォームなんですよ。浜名湖に限らず、どこの海域でもそこの場所のユニフォームだと思ってください。ですので、まず、このユニフォームを着れるような状況にしたい。皆さんにはそのために手伝っていただいて、浜名湖に親しんでいただきたい。若い人に負の遺産を引き継がないように、『昔はとれたけど今はとれないな』という言葉はもう使わないように、後世には豊かな海を残していきたいです。そして、僕たちが学校に行くと『漁師になりたい』と言う子ども達がたくさんいますので、そういう人のためにも頑張っていきたいと思っています」






