2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回のゲストは、「自然環境研究オフィス」の代表で、理学博士、地学の専門家の柴山元彦(しばやま もとひこ)さん。石から見えてくる海と川についてお話を伺いました。
鉱物がたくさん集まって「きれいな石」になる
大阪在住の柴山さんは、高校で地学を教え、定年後に「自然環境研究オフィス」を開設。現在は国内外を巡っての石の研究、一般の方に向けた「野外地学講座」などを行っていらっしゃいます。石の面白さに気づいたのは、大学生の時に「地学」を受講してから。講義の中で山に行くなど実習がたくさんあり、そこから石の多様さなどに知ったそうです。そんな柴山さんの著書には「ひとりで探せる川原や海辺のきれいな石の図鑑」がありますが、そもそも川原や海辺にはどんな石があるのでしょう?教えていただきました。
「たくさんの種類が川原や海岸に転がっていますが、大きくは3つに分けられます。火成岩、堆積岩、変成岩です。単純に3つに分けられるということがまず面白いのですが、実際にはどれがこの3つに当てはまるのかなかなかわからないので、それを探るのもひとつの面白さですね。そして、たくさんの鉱物が集まって石をつくっています。ですので、きれいな石を探すというのは、鉱物の集まった石のきれいなものを中心に探すということなので、実際には鉱物を探しているということになります」
宝石類も意外と川原で見つかる
「ひとりで探せる川原や海辺のきれいな石の図鑑」の鉱物の欄には、ガーネット、サファイア、ルビー、翡翠水晶などがラインナップされていますが、こういった宝石でお馴染みのものも身近で見つかるとおっしゃっています。
「鉱物は種類が5500ぐらいあり、日本ではその半分近くが見つかっています。けれども、実際に川原で見つかるのは100種類以下です。大きさとしては、大きなものでこぶし程度のもの、小さくて数mmですね。例えば、水晶にしても、川原で見つかる場合は数cmあれば大きい方で、中には数mmぐらいのものもあります。それでも自分で見つけることが可能でして、宝石類にあたるものでも意外と見つかることがあるんです」
佐賀県の高島で見つけた石が忘れられない
「目指す鉱物が見つかった時の喜びが忘れられずについついまた行ってしまう」とおっしゃる柴山さんに、今までで最も印象に残っている石について伺ってみると
「数年前に行った佐賀県の高島という小さな島で見つけた石ですね。宝くじ当選祈願で有名な神社がある島なんですけど、この島で、“玄武岩”の中に4~5cmぐらいの塊の“かんらん石”が入っていることを見つけました。そのかんらん石は、地球のかなり深いところ“マントル”からやってきたもので、普通は1mmとか数mm単位のものなんですが、それぐらいの大きさのかんらん石を見たことがなかったのでかなりビックリしました」
なんだか御利益がありそうな石ですね。ちなみに、見つけた後に宝くじを1枚買ったそうです。
石はその地域のバックヤードを反映
そういった発見がある石ですが、同じ海岸でも色々な石に出会うことができるとおっしゃっています。
「場所によって見つかる石が違うことがあります。例えば、宮崎には翡翠で有名な海岸がありますが、翡翠が見つかると大抵その近くに出てきます。あるところにだけ集まる傾向があるので。同じ海岸でも場所によって違いますし、海岸が変わるとまた全然違う石が出てくるので、海岸を巡ると色んな石に出会うことができます」
そういった石の種類の違いから見えてくることがあるそうです。
「石の種類が違うということは、地域の地質とその違いを反映しているんですね。例えば、バックに花崗岩の山があると海岸の石は花崗岩が多くなるし、バックに流紋岩や安山岩の火山系の石が出る山があると、やっぱり海岸に違う石がある。そういった地域のバックヤードを反映しているということなので、海岸の石を探す時は、まずその周辺地域の地質を調べてから行きます」
子どもよりも親がハマる石探し
実際に石探しにも出かける柴山さんは、野外地学講座も開催されています。そこには親子連れもいらっしゃるそうですが、親の方が夢中になるとのことです。
「最初は親御さんもあまり興味がなくて、子どもの付き添いでという感じなんですけど、段々と親御さんの方が興味が湧いてしまうようです。お子さんは小学校を卒業すると来なくなりますが、親御さんだけが参加されるというパターンが最近非常に多いですね」
そんな参加者の皆さんはさまざまなことに驚くと教えてくださいました。
「まず、石をこういう風に探すことができるんだということの驚き。それから石を割って中を見ることができることの驚き。それから川原に意外と宝石類に関係する石が出てくるという驚き。こんな身近な川原や海できれいな石を見つけることができるということを、初めて知ったという方が多いですね」
ちなみに、夏休みの研究テーマに石を選んだ子どもを指導したこともあるそうで、「石を細かく砕いて、それを絵具のようにして色をつくる。どんな石だったらどんな色が出るかを色々試してみたら?」といったアドバイスをしたところ、研究の結果、大阪の代表に選ばれたと喜んで報告してきた子どももいるそうです。
石探しで通っているからこそ感じる海の変化
長年、石探しに海岸へと通っている柴山さんに、海の変化について感じることを伺ってみると
「以前に行った海へと最近また行ってみると、海が狭くなっていることが比較的多いです。浜辺が狭くなっていたり、砂利の浜がなくなっていたり。侵食が意外と起きている気がしますね。そして、以前あった浜辺がテトラポッドで埋まって入れなくなっていることも多くなって、砂や石の供給が少なくなっているんじゃないかと思います」
石探しから海に地学に興味を持って欲しい
最後に、柴山さんが思う海への想いについてお聞きしました。
「海を見ていると、波とか色々な現象が見られますが、なかなかそこに気がつきにくいと思います。石を見ていると、石にばかり目がいって、海の方になかなか目がいかない。だけど、一旦石を取るのを休憩して海を眺めてほしいといつも思っていて。そうすると、海の雄大さに気がつくはず。波があったり、さまざまな色があったりというのに気がついて、そこから『この海岸がなぜ狭くなっているのか』、『波はどうして起きるのか。それによって津波はどうやってやってくるのか』といった海の働きにまで目をやって欲しいです。そういったことから地学に興味を持ってほしいという願いがあって、実は石探しをやっています」






