2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回のゲストは、海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門 部門長の高井研(たかい けん)さん。深海と生命の神秘についてお話を伺いました。

「超先鋭研究開発部門」ってどんな部門?
「JAMSTEC」とも呼ばれ、有人潜水調査船「しんかい6500」などで有名な「海洋研究開発機構」。この組織の中で「超先鋭研究開発部門」に所属している高井さんですが、そもそもどんな部門なのかをまずは教えて頂きました。
「JAMSTECの中には、皆さんがやってほしい・解決して欲しい問題などに取り組む部門もありますが、超先鋭研究開発部門は、ぶっ飛んだような研究もやろうじゃないかということで、ちょっと変わった・面白い研究をする研究者たちが集まった部門になります」
そんな部門で高井さんは何の研究をしているのでしょう? 「もともと微生物の研究をずっとやってきました。特に深海で温泉が割れているような“深海熱水”というのがあるのですが、そういうところに住んでいる微生物であったり、あるいはそれらを支えている物質循環であったりを研究しています。その研究の結果が色々なことに結びついていて、例えば、40億年前に地球の深海で生命が誕生したという説。それから、深海は深く潜れば潜るほど宇宙の惑星の環境に非常に似てくるので、地球外生命体がいるのではないかという研究にもつながっています。そういった深海を研究していて、広がりとしては皆さんの想像の斜め上をいくと思います」
深海熱水は熱帯雨林と同じくらいの生物密度
そんな深海熱水について研究している高井さんが、一般的な深海とはそのエリアがどう違うのか教えてくださいました。
「普通の深海は砂漠みたいな退屈な風景なんですけど、深海熱水は近づいていくと熱水がボーボー吹いているようなところでたくさんの生物もいるんですよ。熱帯雨林と同じぐらいの生物密度があると言われています。そして、イチバンの楽しみは目で見えてわかる大発見がある時ですね!」
実際に高井さんが大発見したものがあるそうです。
「“スケーリーフット”というウロコと鎧を持った巻貝がいるんですけど、それがインド洋のある1カ所の熱水にしかいないと言われていたんです。だけど、そんな訳あるかと思って、見つけに行ったら、想像を超える発見がありました!黒いスケーリーフットがいると言われたのに、白いスケーリーフットがいて!その時というのはもう見た瞬間に超興奮しますね!」
そのほかにも、絶対に熱水が吹いていないと言われていたマリアナ海溝の沖で潜ったところ、熱水が湧いているのを発見したそう。「自分が思い描いていたイマジネーションを超えてくる発見があるんです、冒険をすると。もうそれがたまらないですね」とおっしゃっていて、深海熱水の研究に没頭する理由が伝わってきました。
生命誕生の秘密を深海研究から解き明かしたい
高井さんが大発見をしているように、深い海の底にも多くの生物がいます。生命というのは摩訶不思議ですが、そんな生命が存在する条件にはどんなものがあるのでしょう?
「地球の表面に住んでいると、当たり前に太陽の光がありますが、これってすごいエネルギーなんです。これのおかげで、無機物から有機物に変えて生きていけるわけです。一方で、深海にもやはりエネルギーがないとダメです。けれども、太陽は届きません。そこで、地球内部の熱が岩石を溶かして、岩石の中に含まれる還元的な化学物質を出すことで、深海の生態系は支えられているんですよ。ですから、生命が生きる上でイチバン大事なのは、何かしらのエネルギーのインプットがあるということ。それが途切れたら死にますから、永遠に続いているということが最も大事です。あとは、我々の体は20種類以上の元素でできていますので、そういう元素が水とか岩石によって供給されます。エネルギー、元素、そして、僕たちが生きるための有機物というのが揃っている環境で、生命は生きられる。ただし、これは生命が生き長らえる条件です。実は生命を誕生させるためには、プラスアルファのなにかが多分必要で、そういうところを深海の研究から明らかにしたいというのが、僕の研究のひとつの本質ですね」
深海熱水はほかの惑星でも普遍的に存在
深海熱水から広がる生命の神秘。それは地球だけに限ったことではないと高井さんはおっしゃっています。
「40億年前の深海熱水の場で最初の生命が誕生。そして生命は、世界中の深海に広がっていって、世界中の海に広がっていって、世界中の陸上に広がっていった、ということを考えています。その考えにおいて、大元はやはり深海熱水なんです。実はその深海熱水は、太陽系だとか宇宙で普遍的に存在していることがわかってきました。ということは、深海熱水での誕生は宇宙でありふれて起きていることで、だから深海熱水で生命が誕生すれば、他の惑星でも誕生できるという考え方です」
ただ、高井さんによると、宇宙人までいると考えるのは難しいそうで、そこから地球が「奇跡の星」と言われている理由がわかります。
「生命が誕生することは、ありふれた現象なんですが、それが進化して知能を持つというのは、地球においては奇跡的な現象が連続して起きた結果なんです。しかも、その地球の関係上のストーリーと進化のストーリーが合わさってできたことなので、生命が生まれたから知的生命体までいくというのは、ルールじゃないんですよ。ただ、生命が誕生するまでは、物理学で説明できる必然的な現象だと思っています。そう考えると、地球が生まれてからここまで40億年も続いたことは奇跡です」
「生命の起源を解き明かした男」となりたい!
最後に、高井さんに今後の夢についてお聞きしました。
「結局、研究って個人的な欲求でやっているので、個人的なことで言うと『世界で最初に生命の起源を解き明かした男』として語り継がれたいです。この地球で生命が誕生したシナリオはできているし、そのシナリオもちょっとずつ実証されつつあるんですけど、僕が死ぬまでに完全解読して。だけど、そんなに甘くはなくて、次の人がそれをやってくれればいいなとも思います。だから、夢としては、とにかく最後の最後まで好奇心の泉、自分がもう面白くて面白くてたまらない状態を維持したまま死んでいきたいと思っています」






