自然写真家

高砂淳二

2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

今回のゲストは、自然写真家の高砂淳二(たかさご じゅんじ)さん。海の声を聴いて撮った写真の数々についてお話を伺いました。

世界100カ国以上を巡って38年

高砂さんは、最近までパリ、ハワイ、オーストラリアへと飛び回っていたように、これまでの38年間で100カ国以上を訪れ、世界の自然を写真に収めてきたそうです。2024年4月には「この惑星(ほし)の声を聴く」という新刊を発表。少しずつ変化してきている地球の声に耳を傾けるのが大事ではないかということから始まり、「海の声を聴く」「大地の声を聴く」「空の声を聴く」の3部にわけてつくったとのことです。その中から、海に目を向けた時、心に残る1枚はどれでしょうと伺ってみると

「タヒチのルルツ島で撮影したザトウクジラの親子の写真です。子どもがお母さんと比べて小さくて、しかも真っ白ですよね。さらに、しっぽがクルっと丸まった感じ。これは、ついさっきまでお母さんのお腹の中にいた状況。実は、このお母さんには前日にも会っていて、その時はお母さんひとりだったんですよ。ただ、お腹がちょっと膨れていて、『妊娠だね』とガイドさんと話していたんです。そして、次の日に会ったら横に子どもがいて。それで撮影した生後1日のザトウクジラなんです」

海だからこそ知った「音は振動」

そんなクジラでは、「鳴き声」についても印象深いエピソードをお話してくださいました。

「ザトウクジラの鳴き声は物悲しくてね。それに、クジラのいる海域だったら、かなり離れていても、海の中にいれば声がするんです。話によると、地球の裏側まで響いて届くそうで、水面で音が反射してまた下に行ってという感じで。確かに遠くにいてもどこからともなく聞こえてきましたた。あと、近くで鳴かれた時もあって。その時は、肺という空間に響くんですよ。胸の中がわんわんと響いて、音だ!振動だ!と感じたこともありました。ほかには、船に乗っていた時に、すぐ真下で鳴いたことがあって、それは足の底から振動が伝わってきて、『音って振動なんだな』と改めて思いましたね」

見惚れるような奇跡の1枚はどうやって撮影?

生後間もない赤ちゃんを連れたザトウクジラなど、さまざまな奇跡の1枚を撮影されてらっしゃる高砂さん。一体どのように撮っているのでしょう?

「相手が生き物だとすると、色々と駆け引きがあります。天気や光の感じを読むのはもちろんですが、相手がどんな風に感じているか考えているかとか、こっちのことをどう思っているかという声を聴く。実際には声で言わないですが、なんとなく想像して気持ちをくみ取ろうとする訳ですよ。そういうことをいつもやっていると、だんだん波長が合うというか『こんな感じに違いない』とか『こっちにこれから向かうだろう』とかがなんととなく分かる時がある訳です。僕はその雰囲気を大事にして、一緒に動きつつ、ピークに向かって、今という時にバシバシと撮ります」

波長を合わせるのは生き物だけではなく、太陽といった自然と気持ちを合わせるのが大事だと思うとおっしゃっています。また、何回も通うことでプレゼントがやってくる時もあるそうです。

「ウユニ塩湖だと、6年ぐらい通って撮っていたので、そういう中で色んなことが完璧になる瞬間というのもある訳なんですね。そういうラックみたいなのも、一緒になってプレゼントとしてやってくることがあります」

気持ちが動く時に写真を撮りたくなる

クジラやウユニ塩湖など数多くの対象物を撮影し続けてきた高砂さんですが、どんな時にシャッターを切りたくなるのでしょう?

「観光に行った達もそうだと思いますが、カワイイとか神々しいとかちょっとクスっと笑っちゃうような時といったように、やっぱり気持ちが動く時ですね」

クスっと笑ってしまうような写真といえば、「この惑星(ほし)の声を聴く」の背表紙の熊の写真。

この写真について伺ってみると

「生き物はみんな好奇心があって、それと同時に警戒心もあるんですよね。だから、その入り交じった表情というのは何とも面白い。気になるけど怖いみたいな」

ハワイの先住民に教わった地球との接し方

生き物から景色まで様々な自然を撮影している高砂さんは、海ではフィールドワークのひとつに「ハワイ」があります。そんなハワイにとても影響を受けたことがあるとおっしゃっています。

「先住民の方に教わったのが、“アロハアイナ”と“マラマアイナ”という言葉です。まず、マラマというのは『テイクケア』なんですね。アイナというのは“大地”や“地球”という意味で、つまりマラマアイナは、大地をちゃんと思いやってケアしましょうよということ。そして、アロハは『愛する』なので、アロハアイナというのは『大地を愛しましょう』『地球を愛しましょう』ということです。これらの言葉から感じるのは、具体的に二酸化炭素をどうしようこうしようという以前に、大地に対する愛がすごいんですよ。だから、ハワイだけに限らず、先住民的な人達は、食べ物や飲み物、建物の木、布なども自然が与えてくれるということで、お母さんのような大地や海からもらった以上にケアして愛することが大事と言っているんです。それは本当に大事だなと僕も思っています」

お世話になった人からの贈り物「ダブルレインボー」

そんなハワイに大きな影響を受けている高砂さん写真で印象的なのが、ハワイ島で撮影したというダブルレインボーの写真。

この写真の裏には、高砂さんがハワイでお世話になった人とのエピソードがありました。

「写真集の最後の撮影でハワイ島に行きまして、その時に偶然撮れました。撮れたのが、何年か前に亡くなったんですけれども、随分お世話になった方の聖地にお参りに行った時で。その方の家系には、先祖代々守っている聖地がありまして、撮影も無事に終わったので、その聖地にお参りをしに行ったんです。そのお参りが終わった後、車に乗って出たら、急に雲が出てきて、雨が降ってきたんです。『ああ、お世話になった方が出るかもな』と思って、車を停めて見ていたら、夕日が雲の中から海の上にポンと出た。すると、ダブルレインボーも現れたんです。お世話になった方は『自然の中はサインに溢れているから、いつも注意深く見ていなさい。周りのものは鏡だからね』といつも言っていたので、正にこれはそのお世話になった方だなと。そう思って泣けてきましたね」

お世話になった人からの贈り物「ダブルレインボー」

最後に、今後高砂さんが自然を守っていくためにどんなメッセージを発信していきたいかを伺いました。

「日本人は昔から自然の色んなものに神が宿っていると言っています。多分そういう神聖さは、感じるものがあるのだと思うんですよね。そこに写真で訴えかけて、言葉をちょっと加えるぐらいができたらいいなと思っています」

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