2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、Podcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回のゲストは、一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会の代表理事・青山志穂(あおやま しほ)さん。2400種類も持っているという塩、そして、塩と海との関係性についてお話を伺いました。
「ソルトコーディネーター」ってどんなお仕事?
青山さんは「ソルトコーディネーター」という聞き慣れない職業に就いてらっしゃいます。そこで、まずはどんなお仕事なのか伺ってみると
「ソルトコーディネーターは、世の中になかったので、必要だと思って私が勝手につくったお仕事です。どんなお仕事かというと、お塩は意外と身近なだけに誤解が多かったりとか、減らせば減らすほど健康にいいみたいに思われがちです。そこで、お塩をこういう風に使うともっと健康的に美味しく付き合えるといった日常的な向き合い方を、皆さんにお伝えするために、セミナーだったり、イベントだったり、商品開発だったり、講座をやったりといった活動を行っています」
持っている塩は2400種類!オススメのひとつが“藻塩”
お塩というと白くて小さい粒のものをイメージしますが、青山さんによると「形も見た目もめちゃめちゃたくさんあるんですよ。見た目が似たような感じでも味もひとつずつ違うんです。原料も海水や岩塩がとかさまざまです」と教えてくださいました。そんな青山さんが持っているお塩の種類は、なんと2400種類ほど!この日は、「日本の海」をテーマに60種類のお塩を持ってきてくださいました。

鳥居が描かれた広島県・宮島のお塩などがある中、オススメを伺ってみると
「“Sea chips”という山口県で作られてるお塩なんですけど、形が三角形のピラミッド状になっていたりとかして、フレーク状のサクサクしたタイプです。こういうお塩を、焼いたチキンの上にかけたり、トンカツなどの揚げ物の上に乗っけたりすると、食感が増してすごく美味しいですよ!こういう食感のあるタイプは、日本の色んなところでつくっているので、違うタイプのものを揃えてみると楽しいと思います」
形が変わっているもののほかにも、淡いピンク色のものや柔らかいオレンジカラーのものもありました。オレンジカラーのお塩は「海水を鉄釜で煮詰めていくので、鉄イオンが反応して色が変わる」とのこと。さらに、日本独自のお塩についても教えてくださいました。
「海藻のエキスが入っている“藻塩”というお塩があって、日本でしかつくられていません。ちょっと藻の香りがします。また、例えば、昆布を使った藻塩は、白身のお刺身にちょっとかけて召し上がると、即席の昆布締めみたいな感じで美味しいですよ」

一度試してみて欲しい「納豆×塩」
食材の美味しさを引き出してくれる「引き出し名人」なお塩。中でも、試してみて欲しい食材とお塩の組み合わせがあるとおっしゃっています。
「組み合わせは厳密に言うと色んな法則がありますが、その中でも、意外と塩で食べると美味しいので試してもらいたいのが“納豆”です。無意識で添付のタレを使う方が多いと思いますが、それをグっと我慢して塩をかけて練って食べてもらうと、もう納豆好きにはたまらない芳醇な発酵の香りと、大豆の部分の甘味とかうま味がダイレクトに強調されて響いてきます。ですので、納豆好きの人にはたまらないはずです」
細かい要素で味が変わる!奥深いお塩の世界
青山さんは実際に足を運んで、一つひとつの味を試していらっしゃるそう。なんと今までに400回以上も製塩所に行っているとのことです。そんな青山さんに、お塩の味の違いはどこから生まれてくるのか伺いました。
「お塩のつくり方には色んな方法がありますが、日本は岩塩がとれないので、海水を10倍ぐらいに濃縮し結晶化することで、塩として収穫できるんですね。その方法でも、釜でグツグツと炊く人もいれば、太陽と風の力だけで干す“天日塩”と呼ばれるようにしてつくる方もいらっしゃいます。その時に、かき混ぜるのか、かき混ぜないのか。あとは、火加減をどうするのか、どのぐらいの時に収穫をするのか、道具がプラスチック製なのか木製なのかとか、色んな要素によって味が変わってくるんです」
さらに、海水の味自体も違うとおっしゃっています。
「日本には4つの海流があります。例えば、その海流がぶつかるところの海水は、すごくバランスが良くて、出汁っぽい味がします。すでにうま味が入っているような感じで、ちょっと薄めたらお吸い物みたいな味がします。一方で、沖縄の海水だと結構あっさりしています。海水の性質としては『貧栄養』と呼ばれるプランクトンの少ない海水なので。そして、北海道の方だとコッテリ目でずーんと重みのある味です」
月の満ち欠けでも味が変わるお塩
さまざまな要素で味が変わるというお塩ですが、なんと満月の時と新月の時でも味が変化するそうです。実際に青山さんがつくってらっしゃるそうで、そのお塩を紹介してくださいました。
「千葉県・勝浦のお塩です。つくり方は一緒なのですが、海水をくむタイミングを満月の日と新月の日とで変えています。満月の方はふくよかで、新月の方はしょっぱさが強い。同じ生産者さんが同じ場所で海水をくんで、同じようにつくっているのに、海水をくむタイミングでこんなに変わるってすごく面白くないですか」
一人ひとりが環境を守ることが大事
ほかにも、「沖縄美ら海水族館」の近くで海水をくんで、伝統的な方法でつくっているお塩なども紹介してくださった青山さん。ちなみに、食卓には常時20種類ぐらいのお塩を準備されているそうです。そんな青山さんに、お塩にとって重要な海を持続的に利用するためには、どんなことが必要なのか伺ってみると
「海洋汚染やマイクロプラスチック対策をどうするかといった話は、業界で課題になっています。でも、色んなことを考えても、まずは一人ひとりが気をつけることに帰着するんだなと思っていて。製塩所の方もビーチクリーンをされたり、プラスチック容器をやめてアイスカップに変えたりといった取り組みを少しずつ始めています。それだけではなく、やっぱりゴミをちゃんと分別するとか、日常生活で気をつける。山がキレイであってこそ、川でつながっている海が豊かに保たれるので、そこの環境を守ってあげることなどが凄い大事だなと思っています」
現在、沖縄に住み、沖縄と東京の2拠点で生活されている青山さんも、日頃から環境を気に掛けているそうです。
「沖縄に帰ると、趣味でたまにダイビングをしますが、潜っているとゴミが落ちていたりするんですよ。たった1個のペットボトルとかなんですけど、拾って船の上でちゃんとゴミ箱に入れるというようなことをしています」

日本の海が汚れると日本人は塩不足に陥ってしまうかも
海に囲まれている海洋大国・日本。お塩の原料に恵まれていそうですが、実はそんなことないと教えてくださいました。
「実は海水からお塩をつくるのは、10倍に濃縮しないといけないので、めちゃめちゃ大変なんです。岩塩だと爆破すればたくさんとれるから、そっちの方が世界的には主流なので、日本みたいに海水しか塩の原料がない国って実は珍しい。だから、日本の周りの海が汚れてしまうと、日本人は塩不足に陥ってしまうので、海をキレイに保つことは日本の塩づくりにとってもすごく大事なことなんです」
きちんとした知識と使い方を知れば、お塩は強い味方!
日本ソルトコーディネーター協会を立ち上げて10年以上の青山さんは今、「お塩の仲間を増やして、その仲間たちにも魅力を語ってもらいたいので塩仲間を超募集中」だそうで、東京スカイツリータウン内にある東京ソラマチに「ぐるぐるしゃかしゃか」というお店も7月にオープンしました。ここは、オリジナルブレンドのお塩をつくれるお店で、それを通して新しいお塩の価値を知って欲しいとのことです。そんな青山さんに、最後にメッセージを頂きました。
「塩は敵視されがちなんですが、きちんとした知識や使い方を身につければ、すごく心強い味方です。健康的に美味しく使えるものなので、ぜひ塩に1度向き合ってみていただけたらなと思います」






