2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、interfm番組内やPodcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回のゲストは、公益財団法人日本ライフセービング協会理事 兼 救助救命本部長、中央大学研究開発機構 機構教授の石川仁憲(いしかわ としのり)さん。これから夏本番を迎えるにあたり「水辺のそなえ」についてお話を伺いました。

水難事故の発生は14時に多い
今年、日本ライフセービング協会では、約1万2000人を対象に水難事故に関する調査を行ったそうです。その結果、さまざま気づきがあったとのこと。そのひとつが水難事故の多い時間帯です。
「水難事故は14時にイチバン多いです。なぜ14時なのかというと、海水浴であれば、多くの人が午前中に海水浴場に来られて、その時は少しは緊張していて気をつけようと思っているでしょう。ただ、長い時間滞在されて、ゴハンも食べた頃の時間だと、少し気持ちに緩みも出てきてしまうのかもしれません。また、一方で、太平洋側は特にそうなのですが、午後になると海風が吹き始めるんですね。いわゆるオンショア(海から岸に向かって吹く風)ですけれども、オンショアが吹き始めると海面が少し乱れてきます。そういう自然的な要因も影響してるのではないかと考えています」
海での事故の自然的要因で多いのは「離岸流」。その見分け方とは?
さまざまな要因で起こる水難事故。海の安全のプロフェッショナルである石川さんに海ではどんな要因が多いのかを伺ってみると
「自然要因として多いのは“離岸流”です。漢字で書くと「離れる岸の流れ」の通り、波打ち際から沖に向かう流れのことを言います。最新のデータだと、救助要因の約47%が離岸流ですね」
恐ろしい離岸流ですが、どうやって見分ければいいのでしょう?その方法も色々あると教えてくださいました。
「沖に向かっての流れですので波が砕けにくいです。また、離岸流が発生している場所というのは、周りに比べて少し水深が深くなっています。つまり、沖から波が来ると、通常は波が砕けますが、砕けていない場所があれば、そこで離岸流が発生しているかなとわかるわけです。それ以外にも、ゴミが集まって浮いているとか、砂が巻き上げられて茶色く濁っているといった場所が離岸流エリアになります」
ただ、教えてくださった特徴だけで探すのは難しい場合もあるそう。というのも、「日本は砂場が多いので離岸流の発生位置が変わったり、いきなり発生したりという突発的な変化があります」と石川さんは注意喚起してらっしゃいます。
もし離岸流に流されたら「沖合いで波打ち際と平行に泳ぐ」
万が一、離岸流に流されてしまった場合の対処法についても伺うと
「離岸流の流れというのは非常に速いので、逆らって泳ぐのはやめた方がいいです。離岸流に身を任せる。そして、少し沖合いまで浮いて行くと離岸流はなくなりますので、なくなってから初めて波打ち際と平行に横方向に泳いで脱出をし、今度は波の力を受けながら岸に戻ってくる方法がイチバンいいと思います」
背浮きだけではなく、自分の得意な浮き方で
「沖まで浮いて流される」というのが、離岸流に流された場合のひとつの対処法。しかし、泳ぎや海に慣れていない人はどう浮いていたらいいかわかりません。そこで、石川さんが浮き方を教えてくださいました。
「よく言われるのが、背浮きの状態で救助が来るまで待ちましょうという方法です。ただ、海だと波があるので、波が頭・口・鼻にかぶってしまい、なかなか浮いていられません。ですので、背浮きもひとつの方法ですが、波があるような場所では、バランスを取りながら自分の得意な浮き方で浮いて救助を待つ方法がイチバンいいと思います。では、どんな方法があるかというと、例えば、同じ背浮きでも手足をゆっくり動かす。できるのであれば、手は“スカーリング”。平泳ぎのようにハの字にして中に外に中に外にと動かすことで、顔が浮きやすくなってバランスも取りやすくなります。もしくは、“伏し浮き”といって、うつ伏せの状態で時々顔を上げるという方法でもいいと思います。そうした形で疲れないようにしつつ、自分の得意な浮き方で救助を待つのがイチバンいいと思います」
溺れた人の半数が「プールで25m以上泳げた」
また、泳げるからと言っても溺れないわけではない、泳げると溺れないは別だと石川さんは注意喚起してらっしゃいます。
「今回の1万2000人の調査の結果、17%の方が溺れの経験があるという回答しています。数にすると2012人です。その2012人に『プールで25mは泳げましたか?』と聞いたところ、半数が『泳げた』と回答しています。そういう意味では泳げるということと溺れないことは別なので、泳げる力があったとしても、溺れないための“そなえ”をしっかりしておくということがやはり重要です」
ライフセービング協会で“そなえ”を学ぶのも選択肢のひとつ
溺れた時のそなえよりも、「溺れないためのそなえが重要」だという石川さん。その“そなえ”のために、ライフセービング協会では救助資格の提供や学習プログラムを行っているそうです。
「ライフセービング協会では、ライフセーバーになるための資格として、ベーシック・サーフライフセーバーやアドバンス・サーフライフセーバーといった救助資格を提供しています。それだけではなく、ウォーターセーフティという自らを守り、事故防止のためのそなえを学んでいくというプログラムもあります。ですので、ライフセーバーにならなくても、そのプログラムをもし受ける機会があれば受けてもらい、溺れないための知識や技能を習得してもらうというのは、事故防止のためのそなえのひとつになると思います」
貴重な体験ができる海。リスク管理をして思いっきり楽しんで欲しい!
ここまで水難事故や“そなえ”について伺ってきた石川さんに、最後は「海を安全に楽しむ」についてのメッセージを頂きました。
「海辺の事故を防止するのであれば行かなければいい。でもそうじゃない。リスク管理の考え方で言うリスク回避だと、ただ遠ざけておしまいになるので、私はそうじゃないと思っています。なぜかというと、例えば、砂浜って子どもたちにとってはとてつもなく巨大な砂場なんですよ。幼稚園や小学校の砂場より大きい砂場。しかも、砂は無限にあるし、水が欲しければすぐそこにあるし。時には、自分たちがつくった砂の山のトンネルに波の力で水が入ってくる。そして、崩れちゃう時もある。そんな中で掘っていたら、今度は貝が出てくることもある。ナミノコガイとか二枚貝だと、波が引く時には軟らかくなった砂のところに潜っていきます。子どもは『なんだこれは!?』とみんな見ていますよ。それに加えて、波の音が聞こえて、潮の香りもある。これが朝も昼も夜も違って本当に色々な変化があるわけです。そういう空間や体験は、子どもたちの教育にプラスしかないと思います。だからこそ、もっとみんな海に行って色んな経験をして欲しい。そこからアクティビティに興味を持ってサーフィンをやってもいいですし、SUPをやってもいいですし、時にはそのままライフセービングをやってもいいと思うんです。海はそういう素晴らしいフィールドで、そこから得られるものは、色んな力や発想力・考え方にもつながると思います。だから、皆さんには、しっかりとリスク管理を考えた上で、この夏は思い切り海で楽しんで、色んなことを感じて学んでいただきたいです」






