私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
この夏、全国の海や山を舞台に、親子で滞在型の自然体験ができる「ポケマルおやこ地方留学」が開催されます。今回は、その運営を担当する株式会社雨風太陽の木瀬翔太さんに、プログラムの魅力や、その母体となる「ポケットマルシェ」について詳しく伺いました。
生産者の想いを届ける「ポケットマルシェ」
まず気になるのは、「ポケマルおやこ地方留学」の母体となる「ポケットマルシェ」について。
「ポケットマルシェは、今年3月時点で全国8,600人の生産者さんに利用いただいているプラットフォームです。生産者さんがご自身で育てた食べ物を、1点からでもウェブサイトやアプリ上で好きな値段で販売できる仕組みになっています」と木瀬さんは説明します。
ウェブサイトを見ると、みずみずしいフルーツや野菜、新鮮な魚介類や肉など、どれも美味しそうな食材がずらり。この広大な生産者ネットワークは、どのようにして築かれたのでしょうか?
「もともと私たちはNPO法人からスタートし、『食べる通信』という取り組みをしていました。これは、毎月または四半期に一度、生産者さんが育てた食べ物と、そのストーリーを載せた冊子を一緒にお届けするものです。そこで培った人とのつながりがあったからこそ、ポケットマルシェを始めた時に、ここまで広げることができました」
ポケットマルシェでは、地元でしか消費されないような珍しい食材に出会えることも特徴です。 「例えば、静岡県沼津の生産者さんで、バルタン星人のような深海エビを出品されている方もいます。本当に希少な、そこでしか獲れない食べ物が出品されることも多いので、そのユニークさは大きな魅力だと感じています」
環境の変化が消費者にダイレクトに伝わる
ポケットマルシェは、単なる販売の場ではありません。生産者の「ピンチ」を伝え、フードロス削減にも貢献しています。
「自然に左右される生産現場では、予期せぬ不作に見舞われることもあります。そうした状況を、生産者さんがリアルタイムでプラットフォームに投稿してくださるんです。私たち消費者はその現状を知ることができるので、ニュースにはならないような、生産現場で何が起きているのかを伝える手段としても活用いただいています」
近年問題となっている海水温の上昇は、海の生産物にも大きな影響を与えていると言います。
「去年の事例で言えば、九州の牡蠣の産地で、海水温上昇により過去に例を見ないほどの不作がありました。また、海苔も海水温上昇で黒い色が出にくくなる影響が出ています。そうなると商品として流通しなかったり、生産地のランキングが変わってしまったりと、海の明確な変化が生産者さんの出品内容にも如実に現れています」
消費者がこうした背景を知ることで、食べ物に対する向き合い方も変わると木瀬さんは語ります。
「それを知って買うことで、より美味しく感じられたり、別の感情が生まれたりするのかなと思っています。ポケットマルシェが、そうした繋がりを継続できる場でありたいですね」
「ポケマルおやこ地方留学」:リアルな体験が子どもたちを育む
そして、このポケットマルシェを活用する漁師さんや農家さんたちのもとで、親子で自然体験ができるのが「ポケマルおやこ地方留学」です。今年は北海道、青森、岩手、山形、和歌山、広島、福岡、長崎の8道県で開催されます。
「メインは小学生のお子さんと保護者の方々です。夏休みや冬休みの期間に6泊7日、地方に滞在していただき、お子さんはその現場でしかできない、生産者さんとともに生き物が食べ物になる瞬間を体験するのが最大の特徴です」
気になるプログラムの一例として、毎年好評だという和歌山のプログラムを教えてくれました。
「イルカと一緒にシーカヤックができるんです。保護されているイルカですが、好奇心旺盛なので、カヤックの隣にずっと寄り添ってくれるような体験ができます。漁師さんからカヤックの操り方を教わりながら、イルカとクジラの違いなど、現場ならではの学びも得られます」 まさに、プロの生産者から直接話を聞き、共に体験できるのがこのプログラムの醍醐味です。
変化する子どもたち:食への感謝と新たな発見
これまでに参加した子どもたちからは、感動的な声が届いていると言います。
「このプログラムは今年の夏で4年目を迎えるのですが、1回だけでなく、3回、4回と繰り返し参加してくださるご家庭も出てきています。それだけ地域に思い入れを持って、『あの人に会いに行きたい』と、第二第三のふるさとを作ってもらえるのは、私たちとしても本当に嬉しいことです」
プログラムを通して、海や漁業への興味を深める子どもたちも多いそうです。
「初めて海に入ったという子どももいるので、普段の海水浴とは違う、非常に貴重な体験ができます。スーパーに並ぶ魚が、海の中でどのように生活しているのかをリアルに見ることで、子どもたちの視野が広がり、日々の食べ物との向き合い方が変わったという保護者の方の声も多く聞きます」
食卓に並ぶ食べ物が、生産者の汗と努力の結晶であることを知る。それは、子どもたちだけでなく、大人にとっても「いただきます」の意味を深く考えるきっかけになるでしょう。
「子供たちは普段怖がるようなことにも果敢に挑戦したり、苦手だったものをパクパク食べたりと、驚くような成長を見せてくれるんです。親御さんが『うちの子はこんな風に変わるんだ』と目を丸くすることもよくあります」
子どもたちも大人も、6泊7日の「地方留学」を通して大きく成長できる、そんな体験が「ポケマルおやこ地方留学」には詰まっています。
「ポケマルおやこ地方留学」は3月末から応募が開始されており、現在も受付中です。
「すでに満員御礼の地域もありますが、まだ募集中の地域もありますので、ぜひご関心のある方は公式サイトで詳細を調べていただけると嬉しいです」

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