私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回のゲストは、長崎の海で磯焼け問題に取り組む人気YouTuberで、子どもたちと一緒に海藻を育てる「海藻school」にも関わっていらっしゃる水中自然観察家の中村拓朗(なかむら たくろう)さん。深刻化する磯焼けといった海洋問題について、YouTubeを通して発信しているその活動に迫ります。
30万人超えのYouTuber!ウニをぶっ叩く動画が大人気!
中村さんはYouTubeチャンネル「スイチャンネル」を運営。その登録者数はなんと30万人以上!再生数が100万回越えの動画も数多くありますが、一体どんな動画が人気なのでしょうか?
「特に人気なのは、ルアーに魚やイカがどう反応するかといった動画や、磯焼け対策としてウニを駆除する活動を記録した『ウニ駆除』動画ですね」
ウニ駆除動画は、海底にびっしりと生息するウニをひたすら駆除していく様子を捉えたもので、まるでクエストゲームのような面白さです。
「2017年頃からウニ駆除を始めたのですが、当時は棘の長いウニの“ガンガゼ”が、海底に足をつけられないほどいました。海藻はほとんど生えておらず、岩肌が露出した状態で。そのウニ駆除は、海がどう改善していくかを検証する意味もありました」
駆除されたウニは、魚たちの貴重な食料になっているそうで、「クマノミもウニの実を自分の住んでいるイソギンチャクに与えています」と循環がつくられている様子について教えてくださいました。
海の森が砂漠化・・・磯焼け問題にとってウニよりもヤバイ魚が!?
そういったウニ駆除など磯焼け問題に取り組んでいる中村さん。磯焼けとは、魚の住処やエサとなる海藻が激減する“海の砂漠化”現象。中村さんが潜っている海でも、20年ほど前からこの問題に悩まされており、近年ではウニだけが原因ではないことに気づいたそうです。
「ウニ駆除がひと段落した頃、海藻が生えていた場所で、ウニは減っているのに海藻がなくなるという現象が起きました。原因を探るために海藻の人工栽培を始めたところ、“イスズミ”という魚が、海藻が少しでも伸びると食べに来ていることがわかったんです。20~30キロの海藻を2、3日で食べ尽くしてしまうんですよ」
魚から逃れて“砂地”で育てる海藻──人工栽培の新展開
そこで、中村さんは磯焼けからの回復を目指し、さまざまな挑戦をしています。そのひとつが海藻の人工栽培です。
「どうやって海藻を戻すかを考えた時に、親が必要になると思いました。しかし、親自体もどこからとってくるかという問題があったので、大学の先生と共同でアカモクという海藻の苗から栽培を始めました」
ただ、当初は魚に食べられてしまうという問題に直面。しかし、それも見事に克服したそうです。
「海藻を食べる魚は岩場を中心に泳いでいることがわかったので、砂地に移植してみたところ成功したんです」
アカモクの芽が出た瞬間や成長した姿を海の中で見た中村さんは「わー!やったー!」と大歓喜したとのこと!その一方で、課題はまだ残っているとおっしゃっています。
「育てたものをただ岩場に戻すだけだと、すぐに魚に食べられてしまうので、どうやって次の世代の種を残していくかというのが今の新たな取り組みです。その様子もYouTubeで発信しています」
海藻のプロもビックリ!子どもから教えてもらったこととは!?
中村さんが取り組むもうひとつの重要な活動が「海藻school」です。
「小学校6年生の児童たちが、自らの手で卵から海藻を育ててみようという取り組みです。子どもたちが初めて海藻に触れる時の反応が面白いですね。また、去年実施した学校では、子どもたちが海藻に名前まで付けて、大切に育ててくれていました。本当に嬉しかったです」
そんな子どもたちとの交流を通して、中村さん自身も多くの刺激を受けています。
「私たちが大学の先生たちと一緒に海藻を育てるときは、丁寧に育てようと少し過保護になっていたのですが、子どもたちには簡略化した方法で育ててもらいました。すると、結果として子どもたちの海藻の方がよく育ったんです。この発見には、私も大学の先生も驚きました。そこから、今回の学校でのやり方を参考にすれば、もっとうまくいくのではないかという新たなアイデアも生まれました」
海に惹かれた原点は子どもの頃の離島体験
「父親が長崎の離島出身で、夏休みになるとその島へ行くのが恒例でした。島には特に何もないので、いつも海に潜って遊んでいました。3人兄弟なのですが、さまざまな生き物を見たりする経験を通して、兄弟全員が海好きになり、結果としてみんな水産学部に進学したんです」
その後、中村さんは長崎ペンギン水族館に就職。そして、「水族館ではできない方法でもっと海を伝えられる方法があるのではないか」と思い、ダイビングのお店を立ち上げ、水中ガイドを行うようになったとおっしゃっています。
豊かな海が未来までずっと続いてきますように
最後に、中村さんが思い描くこれからの海について尋ねると
「海に潜って生き物を見るのが大好きなので、いつまでもたくさんの生き物が暮らしている海が続いてほしいと思っています。そして、食べるのも好きなので、みんながいつまでも海の幸を楽しめる、そんな海がずっと続いてくれたらと願っています」

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