私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回のゲストは、日本ライフセービング協会の副理事長で成城学園で現役の教員としても活動されている松本貴行(まつもと たかゆき)さん。水難事故を防ぐための“そなえ”と“教育”の重要性についてお話を伺いました。
「5人に1人が溺れの経験あり」―水辺の事故ゼロを目指すプロジェクトとは?
長年のライフセービング活動を通じて水辺の安全を考え続けてきた松本さんは、2024年に発足した「海のそなえプロジェクト」に関わっています。一体どんなプロジェクトなのでしょう?
「溺水事故は年間で自然領域だと600~800件ぐらい起きています。これは長年横ばい、変わっていないんです。日本財団の海野光行常務理事とお話をさせていただいた時に『あなたたちのライフセービングの活動は素晴らしい。でも、事故は減っていないですね』という評価とご指摘があり、『常識を疑う』という観点をいただきました。実数として事故件数が減ってないということは、何か視点が違ってたのかもしれない。常識を疑う意味で、まずは溺水事故の実態をちゃんと調査しようと。そして、原因に対して対処・対策というものを教育プログラムとしてどう展開していったら数字が減らせるのかを考え、実行する。ライフセービング協会が目標としている水辺の事故ゼロへをより具現化していこうというものです。その中で、“そなえ”を文化にしていこうというのが大きな軸だと思ってます。
実際に調査を行ったところ、なんと「5人に1人が溺れの経験がある」という結果を得られたそうです。
着衣泳では不十分?事故を起こさない教育への転換
松本さんは教育現場でも水辺の安全について指導してきました。しかし、その中でひとつの疑問を感じていたそうです。
「学習指導要領に入っている“着衣泳”、そして、“浮いて救助を待つ”という教育を行いますが、僕は授業しながら『果たして子どもたちは本当にできるのかな』と思っていました。溺れたらパニックになっているし、呼吸も脈も乱れている。その中で、浮いて落ち着いて待ちなさいという教育は、解釈として難しいなと。溺れる人はそれができないから溺れるわけで。大事なのは、溺水事故を未然に防ぐことなんですね。2人に1人が命を落とすと言われていますので、起きたら重症化してしまう、命に直結してしまう。その事故を起こさないようにするための知識・知恵・技能をそなえることが大事。これもそなえの観点として変えなきゃいけません」 その考えから開発されたのが「e-Lifesaving」という教材です。例えば、海での事故の要因として多い「離岸流」といった危険なシチュエーションをドラマ仕立てで描いたショートムービーであったり、ほかにもクイズ形式にしたりと、主体的に“そなえ”を学べる工夫が詰まっています。こちらの「海のそなえプロジェクト」HP内でも公開されていますので、ぜひ海などの水辺に行く前に視聴してみてください。
ヒヤっと!ハッ!とした瞬間をビジュアル化した「おぼれ100」
また、海のそなえプロジェクトでは今年、「おぼれ100」というコンテンツも作成。「おぼれ」のきっかけを100通り集め、イラストで原因・経緯・対策を伝えています。
「重症化する前の段階での“ヒヤリハット”はたくさんあるわけです。それらを集めたら、『そんなことでも溺れが起きるの?』『気をつけなきゃ』『自分はこんなことで溺れたんだよ』と皆さんが発信してくださる。そうすることで溺れを防ぐ意識が高まっていくという仕掛けが“おぼれ100”にはあると思います」


東京五輪の競技場として使用された施設で溺れの疑似体験が可能!
また、東京オリンピックの会場としても用いられた江戸川区にある「カヌー・スラロームセンター」で、新たな教育プログラムも行っているとおっしゃいます。
「海も川も溺水事故の原因は“流れ”なんですね。施設では、流れが起因して溺水事故が起きているということを擬似的に体験できる。しかも、安全に。ライフジャケットつけていなかったらどうだろうかといった体験を通して自分の行動変容につなげてもらう。実際に、親子プログラムに参加してくださった方から『夏休みに海や川に行くから事前に学びに来ました』と聞いて、『そなえを文化に』をすごくイメージできました」
プログラムへの参加は、「海のそなえプロジェクト」のHP、日本ライフセービング協会のHPからできるとのこと。「事前にそなえることで、より海を楽しめる、そんな社会になって欲しい」と松本さんは願っていらっしゃいます。

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