ジープ島の開発者 海洋研究科

吉田宏司

2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、interfm番組内やPodcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

今回のゲストは、ジープ島の開発者で海洋研究家の吉田宏司(よしだ ひろし)さん。世界のアイランドラバーが一度は訪れたいと憧れるジープ島と海についてお話を伺いました。

360度サンゴをつなげたい!ジープ島へ移住した秘話

吉田さんは大学卒業後、ダイビングクラブを主宰しながら、約15年間に渡って世界中の海に潜られたそうです。その後、ミクロネシア連邦の無人島に移り住んで、豊かな自然を体験できる「ジープ島」をつくり上げました。40歳の時だったという無人島の移住は一体なにがキッカケで、なぜジープ島だったのでしょう?

「海外に15年ぐらい出ていて、日本に帰って来る度に、日本人の生活や働き方に違和感を感じていました。だから、そういう流れを変えたいという思いが強かったのがキッカケですね。ジープ島にしたのは、海外をまわっているときに、自分の拠点になるような場所があったらいいなとは思っていました。その途中でミクロネシアに訪れ、スキューバダイビングをやったんですね。そして、1本潜った後にお弁当を食べに上陸したところがジープ島でした」

上陸した時に直感でここだと思ったのかと思いきや、決め手は海の中にあったとお話してくださいました。

「もともと思い描いていた拠点的な場所は、長いビーチがあって走れるようなイメージでしたので、ジープ島はちょっと小さすぎるかなと思っていました。けれども、昼食後にシュノーケリングをしたところ、その時に見たサンゴが今まででイチバン美しかったんです!ヨーロッパや東南アジア、カリブ海など色んなところをまわっていましたが、その中でもイチバンでした。種類・形・色のどれもが素晴らしくて、水深30~40mぐらいで、すごく透明度の高い真っ青な海の中に、サンゴがイキイキとしていて、そこに感動したんです。でも、まわり始めたら、ダイナマイト漁で魚をとっていたらしくて、サンゴの四分の三ぐらいが粉々に破壊されていました。そして、何度か上陸している内に『360度もう一度サンゴをつなげてみたい』という思いに駆られて、ジープ島に移住を決意したんです」

10年以上をかけてつなげたサンゴ

知り合いのお店のオーナーの協力もあって移住できた吉田さんは、サンゴの再生に取り組まれます。どのようにして再生させたのか伺ってみると

「何百回も島のまわりをシュノーケリングしていたある時、テーブルサンゴの上の真ん中に、折れた1本の枝サンゴがくっついたんです。隣にあった枝サンゴの長い枝が何かの拍子に折れたようで。それがいくら引っ張っても取れなくて。その時に、サンゴの中に粘着性があるということがわかったんです。それがひとつのヒントになりました。例えば、嵐とかでサンゴが壊れて転がっているんですけど、そういう転がっているサンゴをサンゴのないところに置く。すると、くっついてそのまま育っていくんです。これを何百とやっていくうちに、本来あるサンゴにプラスして育っていく。ほかにも、ピンクのキレイなサンゴがなかったエリアに、そのピンクのものを持っていったりもして。そして、10年以上かけて取り組んだところ、ほぼ360度つながったんです」

サンゴが復活したことでさらなる効果が!

「楽しみながらやっていたので苦じゃなかったですね」とおっしゃる吉田さんが復活させたサンゴ。それによって、ジープ島の海にさらなる波及効果があったと教えてくださいました。

「サンゴがどんどん増えたことで、サンゴの中に隠れる魚などが繁殖しました。そうすると今度は、食物連鎖がはじまって、その魚を狙って大きな魚も来るようになり、最終的にはイルカが来るようになったんです。多い時は30~40頭ぐらいがやってきます。しかも島の周りの3~4mぐらいの近さにいますよ」

大変だった時期、救ってくれたのはイルカ

「イルカは人の心を察知するような感覚があると思う」とおっしゃる吉田さんによると、実際に耳の不自由な方が来られた際、その方の周りに10頭ほどのイルカが寄ってきたそうです。そんな体の不自由な方や精神的に参っている方に寄り添うというイルカに、吉田さんも助けられたことがあるとのこと。

「島に移住してからは大変で、1年目は15kgぐらい痩せました。そして、2年目の後半ぐらいのある時に、ひとりで潜った際、水深20mぐらいのところで『もうやっていけないんじゃないか』と思い悩みまして。目の前にはクマノミがいて、イソギンチャクがあって、そのイソギンチャクの中からカクレエビという小さくて透明で青い海老が何十匹もふわーっと浮いてはまた沈む。初めて見た光景だったんですけど、茫然としていました。そして、エアーを吸う音と吐き出す音だけの状態でシーンとしていて、『もうこのまま浮上したくないな』という心境だったんです。そんな時に、後ろから右肩をトントンと何かが叩くんですよ。最初は見なかったんですけど、2回目は強めにトントンとされたので振り向いたら、1頭のイルカが目の前にいたんです。ビックリしてお互いに離れたんですけど、イルカが右上にいて見つめ合う状態になって。そのイルカを見たら笑っているように見えたんですね。それで、手を伸ばしたら寄ってきたので、そのまま指先で触れたら、イルカが鳴きながら回り出して、そのまますっと消えていったんです。ただ、消えたと思ったら、仲間を1頭、2頭と何回も連れて戻ってくるんですよ。結果的には、12頭のイルカを連れてきて、そこから20~25分ぐらい思いっきり遊んだんです。もう完全にその間に癒されました!そして、このイルカは励ますために来た、というかGOサインだなと思って。その後、力強く浮上することができました」

吉田さんが思うKnow The Seaとは?

ジープ島でさまざまな体験・取り組みをしてきた吉田さんですが、2018年に体調を崩してからは島を離れました。そして、今は新潟県上越市で「吉田自然塾」などを行いつつ、島は日本人スタッフに任せて通っているそう。また、今は山にまつわる取り組みも行っているとのことです。そんな吉田さんに最後、「海を知るために大切なこととは?」と伺いました。

「やっぱり3ヶ月くらい住んだ方がいいです。何のために海を見ているのかというと、心が広くなるように見ているんです。ジープ島でも何でもいいですけど、3カ月ぐらいいると、あらゆることが体でわかります。それを自分の生活に生かしていくのがいいと思います」

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