一般社団法人 セイラーズフォーザシー日本支局 理事長兼CEO

井植美奈子

私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

今回は、日本の豊かな水産資源を持続可能な形で享受するために活動する、一般社団法人 セイラーズフォーザシー日本支局 理事長兼CEOの井植美奈子さんをスタジオにお迎えしました。海の環境と食の未来をつなぐ、同法人の主要な取り組み「ブルーシーフードガイド」を通じて、私たち一人ひとりの食卓が海を守る力となる可能性について深掘りします。

NGO「セイラーズフォーザシー」とは?

セイラーズフォーザシーは、2004年にアメリカでヨットマンであるデイビット・ロックフェラー・ジュニア氏が、「海にお返しをしたい」という思いから設立した国際的なNGOです。日本では、この活動の重要性から2011年に日本支局が設立され、海という広大な資源を持続可能な形で守り、次世代に引き継ぐための啓発活動を展開しています。

科学的根拠に基づく食の羅針盤「ブルーシーフードガイド」

セイラーズフォーザシー日本支局の最も中心となる取り組みが、「ブルーシーフードガイド」の発行です。

(↑ブルーシーフードガイド全国版2026の写真に置き換えました)

これは、様々なシーフードの中から持続可能な形で獲られた、または養殖された水産物を科学的に検証し、消費者や企業に推奨するリストです。このリストに載っている魚介類を「ブルーシーフード」と呼び、消費者に「どちらか困った時にはぜひこちらを選んでみてください」というポジティブな提案を続けています。

全国版のガイドには、たらこやアワビ、ズワイガニといった馴染み深いものから、海藻類まで幅広く掲載されています。

地域性を活かした「ブルーエコノミー」の推進

さらにガイドには、全国版に加えて地域版が存在します。現在、三重県、広島県、東京都、そして京都府の地域版が発行されていますが、これはエリアごとの漁獲方法や資源のあり方が異なるためです。

(↑ブルーシーフードガイド京都府版2025の写真に置き換えました)

地域版の良い点は、全国版では合格しなかった魚介類も、その地域では水産課などと協働して細かくデータを検証し、「しっかり管理しながら漁業しているよ」という現状を伝えられることです。これは、漁業はもちろん、地域の経済活性(ブルーエコノミー)にも役立てる狙いがあります。井植さんは、「観光や食を目的とした旅行の際にも、このガイドを使っていただければ」と語ります。

実際、東京都版では水産課と連携し、定期的にガイドの見直しを繰り返しています。これは、地球温暖化による海水温の変化や資源の増減など、海の環境が常に複雑に変化している現状に対応するための重要な作業です。

「赤信号」を出さないポジティブな選択

ブルーシーフードガイドが海外のシーフードガイドと一線を画しているのは、そのポジティブな姿勢です。

海外の多くのガイドが信号機のように「これは食べないで」という赤信号を表示するのに対し、ブルーシーフードガイドは「赤信号に該当する魚介類は知っているが、あえて載せない」というポリシーを持っています。

その理由として井植さんは、「それによって特定の産業にダメージを与えるようなことは私たちの本意ではない。美味しく楽しく地球に優しくというモットーで、ブルーシーフードを楽しく選ぶことで、ポジティブに地球を守っていきたい」と、その哲学を説明します。

私たちがブルーシーフードを選ぶという、日々の小さな食の選択が、海を守る大きな力となるのです。

英国大使館と開発した「英国版ブルーシーフードガイド」

井植さんが個人的に薦めるブルーシーフードの食べ方は、最近イギリス大使館と共同開発した英国版ブルーシーフードガイドに掲載されているサーモンを使った料理です。

特にイギリスでは、スモークサーモンとスクランブルドエッグを組み合わせた一皿が朝食の定番です。鮮やかなサーモンピンクと黄色が目に美しく、朝から元気に一日をスタートできるメニューとして推奨しています。

IUU漁業との闘いと日本の水産業の未来

セイラーズフォーザシーは、海を守るための提言として、IUU漁業(違法・無報告・無規制の漁業)の撲滅にも力を入れています。IUU漁業は、ルールを守る漁師さんに多大な損害を与えるだけでなく、資源をどんどん減らしてしまうため、世界中で撲滅の取り組みが進められています。

日本でも2022年に水産流通適正化法が施行され、取り締まりが強化されましたが、世界の資源量が横ばいであるのに対し、日本の資源量は残念ながら減り続けているのが現状です。

しかし、希望もあります。例えばクロマグロは、皆で管理に取り組んだ結果、絶滅危惧種から脱却できたというプラスの事例があるのです。井植さんは「生産者も消費者も一丸となって取り組むことが大事」と、意識改革の重要性を強調します。

政府は今、水産業を成長産業へと向上させるため、「海業(うみぎょう)」という名前をつけ、水産資源を守りながら獲る漁業と、地域活性化を結びつけて国力を上げていく取り組みを始めています。

井植さんは、「今後、国連の経済社会理事会の協議資格を得たことを活かし、日本のメッセージを国連に届け、国際社会で議論されていることを国内で共有する作業にも力を入れていきたい」と語ります。

私たち消費者ができることは、まず一歩を踏み出すこと。週末の食卓にブルーシーフードを取り入れ、「おいしく、たのしく」海を守る意識を育むことが、豊かな海の未来につながる確かな一歩となります。

このコーナーはAuDeeでも配信中です。ぜひアクセスしてみてください!

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