私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回は、神奈川県三浦市に位置する日本さかな専門学校の学務科事務長、中村英孝さんにお話を伺いました。目の前に広がる相模湾のオーシャンビューという最高の環境で、2023年4月に開校したばかりのこの学校は、日本の水産業が抱える人材不足と、魚の多様な魅力を伝え、未来の「魚のエキスパート」を育成しています。
「漁業専門学校」ではない理由:魚と人の関わりを軸に
日本さかな専門学校は、東京すし和食調理専門学校などを運営する水野学園から生まれました。和食や寿司職人を育てる中で、魚を供給する業者から「人手不足でこのままでは魚の供給が成り立たなくなる」という切実な声を聞いたことが、学校設立のきっかけとなりました。
「島国である日本にとって、水産業の若手人材不足と後継者不足は深刻な問題です。この状況を何とかしたいという思いから、専門学校の設立を決意しました」と中村さんは語ります。
しかし、学校名にはあえて「漁業」ではなく「さかな(魚)」というキーワードが選ばれました。魚は「食べる」だけでなく、「鑑賞する」「育てる」「釣る」といった多様な関わり方があります。中村さんは、「こんなに多角的な生き物は他にいない。魚を主軸に置いた『日本さかな専門学校』として、人と魚の関わりを大切にしよう」という理念でスタートしました。
現在、同校には約230名の学生が在籍し、学びの場は「海が目の前」という三浦の最高のロケーションにあります。

教室は海、教材は五感:体験で広がる未来の選択肢
日本さかな専門学校のカリキュラムの特徴は、座学よりも体験に重きを置いている点です。
総合学習(1・2年):学生は、調理、採集、飼育、漁業体験、魚に関わる様々な産業の人々との交流を通じて、魚の魅力を総合的に学びます。この期間に、生徒たちの興味関心は大きく広がり、当初釣りしか興味がなかった学生が、飼育や養殖の面白さに目覚めるなど、将来の目標が変わっていくケースも多いと言います。


専門分野(3・4年):その後、学生は「漁業」「養殖」「環境リサーチ」「水族館・デザイン」などいくつかの分野から専門的に学ぶ分野を選択し、将来の職業に直結する知識と技術を深めます。
授業の約半数は実習やフィールドワークです。調理実習はもちろん、魚の解剖、標本や剥製の作成など、家ではできない体験を徹底的に行い、とにかく「手を動かして覚える」ことを重視しています。


三浦の環境が育む「魚愛」
学校が位置する神奈川県三浦市は、漁業を学ぶ上で最高の環境だと中村さんは強調します。
目の前に広がる相模湾は日本でもトップクラスの魚種を誇り、半島を一つ超えれば環境が大きく異なる東京湾があります。学生たちは、この環境の変化を肌で感じながら学ぶことができます。
さらに、三浦は古くから三崎マグロの中継地点として栄え、近隣には海上釣り堀や研究施設である神奈川県水産技術センターがあるなど、魚に関わる全ての要素が揃っています。「ここで学べば、魚にまつわるあらゆることを経験できる」というのが、三浦を校舎の地に選んだ最大の理由です。 学生たちの「魚愛」は止まりません。中村さん曰く、「朝、学校に来ると、夜通し釣りをしてそのまま登校してきた学生が眠っていることが日常茶飯事」とのこと。気の合う仲間と24時間体制で魚と向き合える環境が、彼らの目から光を失わせない秘訣です。

若い力が切り開く「持続可能な海」
間もなく第1期生の卒業を迎える同校ですが、就職状況は非常に良好です。求人が学生数以上に集まる中で、卒業生は漁師、魚屋、卸売業者、漁協職員など、水産関連の仕事に就く学生が最も多くを占めています。設立当初の目標である「水産に若い人材を送る」という点で、十分な成果を上げつつあります。
世界で海洋問題が深刻化する中、同校の授業でも水温上昇や漁獲の変化といった環境問題を取り扱っています。
中村さんは学生たちに「問題は自分一人では解決できない。しかし、その問題にどう向き合うか。漁獲が減るなら新しい市場を作るなど、一方向的な考え方ではなく、柔軟な対応力を身につけてほしい」と伝えています。
また、学生たちは地域の子どもたちを受け入れ、海洋教育を行うなど、すでに「語り手」として活動を始めています。
中村さんは最後に、若い世代に向けて「島国である以上、海と魚は日本人にとって切れない関係です。変化を恐れず、常に新しいものに対してきちんと向き合い、対応できる力を身につけていってほしい」とメッセージを送りました。
日本さかな専門学校は、これからも次世代へとバトンタッチする形で、海洋教育と社会貢献を続ける「魚の専門家を育てる揺るぎない拠点」であり続けます。

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