藤原昌高

私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

今日は、3000種以上の魚貝類の貴重なデータをウェブサイト「ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑」で公開されている、ぼうずコンニャクこと藤原昌高さんをスタジオにお迎えしました。長年にわたる魚への情熱と、独自の視点から見えてくる「魚と人」の深い関係についてお話を伺います。

「ぼうずコンニャク」という名の由来

まず、一度聞いたら忘れられない「ぼうずコンニャク」という名前の由来について尋ねました。

「僕が最初に魚類学的に調べた魚の名前です」と藤原さん。

この魚は、地味で目立たない深海魚。しかし、研究されていないという点にロマンを感じたと言います。このサイト名には、誰も知らない魚に光を当てるという、藤原さんの情熱が込められています。

ウェブサイトに掲載されている魚貝類は、なんと3000種類以上。その多くを実際に味わい、その美味しさや調理法、地域ごとの呼び名などを記録してきたと言います。

美味しい魚は「自己肯定」して食べる

藤原さんのウェブサイトには、魚の美味しさを5段階で評価した「味の評価」が掲載されています。

「美味しい魚の食べ方は、努力をしてはいけないんです。お母さんが作ってくれたり、自分で作ったものを『すごい美味しい』と自己肯定的に食べるのが一番です」。

さらに、魚料理を苦手とする人へのアドバイスとして、たった一つのコツを教えてくれました。

「スーパーで切り身を買ってきて、まず冷蔵庫で30分以上置くこと。そして、完全に水分を拭き取ってから焼く。これさえやれば、君は天才になれる」。

この魔法のようなアドバイスは、子供から大人まで、多くの人の魚料理へのハードルをぐっと下げてくれるでしょう。

魚が語る歴史:山間部に残る記憶

藤原さんが魚を調べる最大の目的は、「地域性」を知ることだと言います。

「歴史は海辺よりも山間部に残っていることが多いんです。なぜかというと

海辺は常に変化しますが、山間部では昔ながらの食文化や魚の呼び名が受け継がれているからです」。

この言葉の通り、藤原さんは40年近くにわたり全国の山間部を訪ね歩き、人々から魚にまつわる話を聞き、その記憶を記録してきました。

温暖化が変えた「高級魚」の定義

藤原さんの著書『ぼうずコンニャクの日本の高級魚事典』には、時代とともに高級魚の種類が変化してきたことが書かれています。

例えば、北海道や東北で昔は「肥料」として扱われていたキチジ(キンキ)は、流通の発達により今では高級魚として知られています。

「昔は食堂で安く食べられたのに、今や煮付けが5,000円だよ!なんて、築地で働く女性が驚いていました」。

また、温暖化の影響も高級魚の変化に大きく関わっていると言います。

「今、高級魚として認知されている80種類ほどは、温暖化で新たに獲れるようになった魚です」。

しかし、良いことばかりではありません。温暖化による環境の変化で、昔は大量に獲れていた魚が激減しているのです。

漁師が困る魚の不安定さ

「魚の種類は増えたけれど、獲れる全体量は減っている」。

藤原さんは、水産現場を歩く中で、その深刻な変化を感じています。

「昔は市場に並べきれないほどのワカメがあったのに、今や貴重品です。魚の住処である海藻が減ったことが、魚の減少にもつながっているのかもしれません」。

また、昔は季節によって獲れる魚がはっきりしていましたが、今はその見通しが立ちづらくなっていると言います。イワシのように年間を通じて美味しく獲れる魚もいますが、それはごく一部で、全体のバランスが崩れているのが現状です。

魚離れは「食べない」から始まる

藤原さんは、魚離れの原因を「難しく考えすぎていること」だと見ています。

「魚の食べ方をもっと簡単に考えましょう。まずは切り身を買って塩焼きにしてみる。あるいは、お惣菜でもいい。まずは魚を食べてみることから始めましょう」。

魚を「美味しい」と感じることが大切。最初は「まずい」と感じても、それをきっかけに新たな魚に挑戦すればいい。そうした意識が、日本の食文化を豊かにすると藤原さんは語ります。

忘れられない「ぼうずコンニャク」の味

これまで食べた魚の中で、最もインパクトがあったのは何かという質問に、藤原さんは迷わず「ぼうずコンニャク」と答えました。

「自分を『ぼうずコンニャク』という名前だと知っている沼津の漁師さんが、『お前だからあげる』と言ってくれたんです」。

その味は、想像以上に美味しかったと言います。自身の名前を冠する魚との、忘れられない出会いとなりました。

最後に、今後の夢について。

「もともとやりたかった『民俗学』のほうに、また軸を移していきたいですね」。

魚を通して、食文化や歴史、人々の暮らしを掘り下げてきた藤原さん。その研究はこれからも、魚と人々の間の物語を紡ぎ続けていくでしょう。

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