私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺っていく「Know The Sea」。Podcastなどを介してお届けしているこのコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
今回のゲストは、静岡県伊東市にお住まいの海洋写真家、吉野雄輔さんです。80カ国以上の海に潜って撮影してきた経験と海への深い思いを伺いました。
バックパッカーから始まった海への旅
大学卒業後、世界中の海を放浪した吉野さん。きっかけは「ダイビングを始めたのなら世界中の海で潜ってみたい」という純粋な思いから。バックパッカーとして旅に出た吉野さんは、行く先々で現地の人々に助けられて、さまざまな海に潜りました。
特に恩恵を受けたのが、有名な水中カメラマンとの出会い。紹介状をもらったことで、さらに様々な海を巡ることが出来ました。 「本当に人のお世話になりっぱなしで、旅を続けさせてもらいました」と、当時を振り返って感謝を口にします。
世界を巡って気づいた日本の海の凄さ
多くの海を潜ってきた吉野さんですが、現在はあらためて日本の海の凄さを実感しているそうです。
「始める前は、世界の海はもっとすごいだろうと思って行くわけじゃないですか。でも、帰ってきてまた日本で潜るとどうしてこんなにすごいんだろうと思います」。
「凄さ」のポイントは、日本の四季のように一つの国の中に多様な海の景色があること。
「北海道の海と沖縄の海、そして僕のいる伊豆の海は全く違う。オーストラリアのように、きれいな珊瑚礁に潜るのに何十時間もかかるような場所とは違って、日本ではちょっと移動するだけで、全く違う海に潜りに行けるんです」。
水中カメラマンとして日本に生まれたことは本当にラッキーだったと感じています。
「海に潜りたい」が原動力:カメラマンになった偶然
吉野さんは、初めからプロのカメラマンを目指していたわけではありませんでした。旅に出る際に餞別でもらった水中カメラで写真を撮っていましたが、現像してみると全くうまく撮れていなかったそうです。
「もっと上手く写真を撮りたい」という思いから、プロのアシスタントとして働き始めました。
しかし、アシスタントの給料は安く、生活のために昔撮った写真をダイビング雑誌に持ち込んだところ、腕は悪くても「誰も撮ってない場所の写真」として掲載されることに。 「写真の仕事で海に行けたら一番楽だな、と思って。そんな感じで、偶然カメラマンになりました」。「海に潜りたい」という気持ちが、吉野さんの原動力となっていたのです。
「世界で一番美しい海のいきもの図鑑」に込めた思い
数々の水中写真を撮影してきた吉野さんは、特にお勧めしたい一枚は?という質問に「世界で一番美しい海のいきもの図鑑」という一冊の本を挙げました。
この本には、数ミリの小さな生き物から巨大なクジラまで、海のあらゆる大きさと種類の生物が収められています。
「最初こそ『うわ、サメだ!』とか『クジラすげー!』って興奮してたけど、だんだん生き物は結局みんな同じものに見えちゃうんですよ」。
それぞれの生き物が持つ独自の能力や、命の尊さを表現したかったと語る吉野さん。
それを可能にしてくれたのが、山口県青海島との出会とカメラの進化でした。
青海島では、ある時期に深海の海水が上昇する現象から、他の海ではなかなか見られない深海にいる生物を撮影で着るそうです。
「深海の生き物もでかくてかっこいいリュウグウノツカイみたいなのが、しょっちゅういるんですよ」。
そして、デジタルカメラの登場と技術革新によって、かなり小さな生物も綺麗に撮影できるようになりました。「小さなものから大きなものまで全部並べて、全部一つの命として扱える」と取りかかったのが「世界で一番美しい海のいきもの図鑑」でした。
「海は大きい」:言葉と写真では伝えきれない体験
吉野さんが感じる海の魅力は、その“大きさ”。
「海の中は空気のない世界だから、自分の弱さを感じる。アシカの赤ちゃんは生まれたらすぐに泳いでいるけど、人間は必死に泳いでいるだけ。自然の一部なんだと実感できる」。
また、海は野生生物に最も簡単に近づける場所だといいます。
「クジラはとんでもなく大きな生き物。陸上にいたら怖くて近づけない。でも、海の中ではみんな泳いで近づいていこうとします。自分の体重の1000倍あるような生物が目の前にいる。それを直に感じる写真は絶対に撮れないし、言葉で語ることも本当は出来ない」。
言葉や写真では伝えきれないほどの圧倒的な存在感を、海の中では感じることができる。その「大きなもの」を生かしている海の大きさに、吉野さんはいつも感動を覚えているのです。
そんな吉野雄輔さんは、これからどんな海の写真を私たちに見せてくれるのでしょうか。

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