フィッシャーマン・ジャパン事務局長

長谷川琢也

2024年6月からスタートした音声コンテンツ「Know The Sea」。私たちの宝である海を未来へつなぐため、さまざまなゲストをお招きして、海の魅力、海の可能性、海の問題についてお話を伺い、interfm番組内やPodcastなどを介してお届けしていきます。このコンテンツは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。

今回のゲストは、フィッシャーマン・ジャパンの長谷川琢也(はせがわ たくや)さん。6月23日(日)に放送されたInterfmの番組「Lazy Sunday」内で、活動と海の変化などについてお話を伺いました。

未来の世代が憧れる「新3K」で漁業・水産業を変革!

長谷川さんはLINEヤフー株式会社の社員でありながら、東日本大震災をきっかけに宮城県石巻市に移住。2014年にフィッシャーマン・ジャパンを立ち上げました。このフィッシャーマン・ジャパンは、漁業のイメージとして少なからずあった「3K=きつい、汚い、危険」という課題を、未来の世代が憧れる新たな「3K=カッコいい、稼げる、革新的」にし、水産業を変えようと活動されてらっしゃる漁業集団です。その具体的な活動について伺うと、2つあるとおっしゃっています。

「色々な活動をしていますが、最初に漁師たちが立ち上がったのが、自分たちのつくったものをおいしく届けたいということ。いわゆる販路開拓とか販路拡大・共有などです」

もう1つは団体名にまつわることだそうで

「未来の担い手を育てたいということ。その時に、言葉として、未来の漁師をつくりたいではなく、漁師さんたちは『フィッシャーマンを育てたい』と。消費地にいるとわからないのですが、その地域で漁師さんと魚屋さんと水産加工屋さんは、駆け引きがあったりとか、場合によっては喧嘩しながら、『高く買って欲しい』、『安く売ってもらわないと儲からない』といった話をしています。けれども、そんなことを言ってたら、震災からの復興、さらには未来に新しいものをつくるのはできないということで、縦割りの壁を壊して、全員を“フィッシャーマン”にしようと。また、地域だけだと課題が大きくて色々と右肩下がりになっていたので、都会の人でもIT会社で働いている人でも、海を何とかしたいと思ってくれて動いてくれる人を“フィッシャーマン”と呼ぼうと。そうして『未来のフィッシャーマンをどんどん増やす、育てる』という活動をしていて、そのフィッシャーマンが中心となって販路をつくったり、輸出したり、漁村のPRをしたりしています」

この10年で大きな成果!多種多様な人たちがフィッシャーマンに

今年で立ち上げから10年が経つフィッシャーマン・ジャパン。活動の結果、その成果がしっかりと出てきているとおっしゃっています。

「完全に新3Kになったとは言い切れない部分はあります。けれども、『新3Kなフィッシャーマンを増やそう』と言い続けていたところ、思った以上に仲間が増え、良い結果として表れていると思います。海のインターン事業を実施しているのですが、10年前には想像もつかないような優秀な学生さんが全国から来てくださり、石巻の海を体験してくださっています。しかも、その何人かが、そのままその石巻の水産加工屋さんに就職してくれたりして本当に嬉しいです!フィッシャーマン・ジャパンにも、この数年で英語ペラペラの若者が来てくれたりしています。また、マーケティングとかプロモーションとかデザインみたいなクリエイティブ活動をする若者とかも活躍してくれていますし、地球環境がピンチだということで、その環境や生き物に興味がある人も来てくれています。本当に多様な若者が、世代を越えて近づいてきてくれて、一緒に活動をしてくれるようになり、本当に海の広さ・深さという可能性をものすごく感じています」

そんな長谷川さんは若者に「海って関われること、能力はすごくたくさんある」と伝えているそうです。

石巻で伊勢エビが!変わりつつある海に危機感

一方で、「2023年の三陸の海は世界の海水温上昇の中でも群を抜いて上昇した」とおっしゃる気候変動による影響など、この10年で課題も出てきていると教えて下さいました。

「だんだん魚が北上しているようで、例えば、北海道ではブリの漁獲量が日本一になっています。石巻でいうと、昔は西の方でたくさんとられて食べられていた太刀魚がすごく増えてしまったり、最近だと伊勢エビがとれたりしています。また、石巻には“金華サバ”というブランドサバがありますが、それがどんどん小さくなって、量も減ってしまっています。大きさや脂の量などの規格から金華サバと認めるルールがあるのですが、去年は一部で、規格に合う金華サバがゼロになってしまい、すごくおいしい缶詰商品もゼロになるいうことが起きています。こういった問題について、ようやく漁師さんとか水産加屋さんとかでも、みんなで何とかしなきゃいけない共通の課題と認識され始めています」

漁業・水産業の関係者に見せた「変わっていいという背中」

さまざまな活動を行い、成果も出しているフィッシャーマン・ジャパン。そこで、日本の水産業にどういった変化をもたらしたと思いますかと伺ってみると

「弊団体の代表でワカメ漁師の阿部勝太が答えていたのが、『漁業とか水産業の関係者に、自分は変わってもいいんだという背中を見せられたのが一番でかい』というものです。古くなってしまったり、新しいことにチャレンジしにくかったりした水産業に、新しい姿を見せられた。自分たちが全て変えたとは言わないですが、『変わってもいいんだよという姿、背中を見せられた』というのが一番大きい言っていまして、実際に真似してくれる人が増えたりとか、興味を持ってくれて海に関係ない若者が来てくれたりというのが、それを物語っていると思います」

10周年でより精力的に活動!

最後に、今年で10周年を迎えるにあたり、フィッシャーマン・ジャパンとしてのメッセージを頂きました。

「この1年ぐらいずっと10周年ですと言い続けていて、色々なイベントをやったり、商品を出したりしようと思っています。ひょっとしたら、皆さんのお近くに行かせていただくこともあるかもしれませんので、何か関わるチャンスがありましたら、ぜひ会いに来てください」

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